2017年12月31日

ユーモラス

 吉田松陰は、大情熱で維新の英傑たちを薫育したことで知られていますが、ユーモラスな一面もあったようです。
 例えば、松下村塾の増築工事を行った時のこと。塾生の品川弥二郎が、はしごの上から誤って壁土を落としてしまいました。それが松陰の顔に当たったのです。恐縮する弥二郎に対し、一言。「弥二よ、師の顔にあまり泥を塗るものではない」。時に議論が白熱する松下村塾にあって、しゃれや冗談をひねる松陰の人柄が、雰囲気を和ませました。(一坂太郎著『時代を拓いた師弟』)
 この一年ありがとうございました。明年もよろしく。  

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2017年12月30日

名画のようです

 ある人が、これまで招かれた結婚式の中でも、特に印象に残るものが二つあると語っています。一つは、友人が新郎の来し方を紹介する企画。冒頭、赤ちゃんの元気な泣き声が会場に流された。これは、実際に新郎が誕生した時に録音された産声で、今日まで母親が大切に保管してきたという。
 もう一つは別の式でのこと。両親への花束贈呈の際、新婦は花束に代えて、小さなぬいぐるみを実父に贈りました。司会から、「この特注のぬいぐるみは、新婦が生まれた時の体重と同じ重さで作られています」と。
 それぞれの式典で目にした感動のシーンに、共通したことがありました。それは共に、母親は深い慈しみにあふれた笑みをたたえ、父親は握り拳に歯を食いしばりながらも、ついに我慢できず、美しい涙を流していたことです。
 わが子の誕生を心から喜び、時に笑い、時に泣きながらも一緒に歩んできた日々――涙に濡れながらほほ笑み合う、それぞれの親子の姿は名画のようです。  

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2017年12月29日

冬から春へ助走を開始

 年の初めが寒い時期であることをよしとしたのは、希代のコラムニストといわれた深代惇郎でした。それは、寒さが空気を引き締め、人の身も心も凜とさせる季節こそ、新しい決意で新しい年を迎えるのに、ふさわしいと思ったからです。
 真冬に送る年賀状でも、「新春」「迎春」と書きます。これは旧暦の季節感の名残ですが、そこから人は、喜びあふれる一年に、との思いを受け取る事ができます。厳冬の中、決意を抱き、鍛錬に励む人の心の中に、希望の春は鼓動を始めるのでしょう。
 昼が最も短い「冬至」を過ぎました。立冬と立春の中間にあたり、これからは、日ごとに昼が長くなっていきます。すでに天の運行は、冬から春へ助走を開始しているのです。  

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2017年12月28日

笑顔には・・・

 誰かの顔を思い出そうとすると、笑顔や真剣な顔など、日頃から見慣れた表情が思い浮かぶものですね。ゆえに顔は「自分と社会をつなぐ接点」と、中央大学・心理学研究室の山口真美教授は指摘しています(『自分の顔が好きですか?』岩波ジュニア新書)
 とりわけ「笑顔」が大事だそうです。例えば、人は笑顔を向けられると、脳の眼窩前頭皮質と海馬が活性化され、褒められたような喜びを感じて、強く記憶に残るそうです。円滑な人間関係を築くうえで、笑顔は脳科学的にも欠かせないらしいですね。
 そう、笑顔には、安心と希望の連帯を生み出す力があるのです。  

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2017年12月27日

毎年が1年生

 日本酒造りに携わる壮年。彼は、コンピューター修理の仕事から一転、苦労を重ねて杜氏となりました。今、全国新酒鑑評会で、何度も金賞に輝く実証を示しています。
 背筋を伸ばし、自らに言い聞かせるように語った言葉は、「酒造りは毎年が1年生です」。日本酒は、米の出来ひとつ、水のおいしさひとつ、酵母の状態ひとつで味が変わる。「毎年が1年生」というひと言に、現状に甘んじることを許されない酒造りの厳しさが、にじみます。  

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2017年12月26日

懐かしい風景

 鳥取・島根は雨が多いそうです。年間日照時間を全国1位と比較すると7割程度。昔から「弁当忘れても傘忘れるな」と言われ、とかく“暗い印象”が付きまといます。
 「春の小川」「もみじ」「おぼろ月夜」……。日本人が愛する唱歌を多数作曲した岡野貞一氏。特に「兎追ひし」で始まる「故郷」は、幼少期を過ごした鳥取県の風景を表現したものです。同県では「童謡・唱歌百景」が選定されるほど、今も懐かしい風景が広がるのです。  

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2017年12月25日

挑戦の人生

 今年も残りわずかになりました。振り返りますと、さまざまな成果を感じる一方、“あれをやっていれば”“こうしておけば”等の思いがよぎる人もいるのではないでしょうか。
 後悔には「やらない後悔」と「やった後悔」の2通りがあり、人は前者の方をより強く感じる傾向があるそうです。行動すればたとえ失敗したとしても、その経験から何かを学ぶことができるからです(ダニエル・ギルバート著『明日の幸せを科学する』熊谷淳子訳、早川書房)。
 悔いのない人生とは「挑戦の人生」ともいえますね。  

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2017年12月24日

いい年したおっさんが夢見て何が悪い

 「いい年したおっさんが夢見て何が悪い。町工場が夢見て何が悪いんだ!」――職人の腕とプライドをかけ、巨大企業もなし得ないプロジェクトに挑む町工場の社長が熱かった。直木賞受賞作『下町ロケット』です。
 最先端技術の粋を集めたロケットも、小さな企業が手作業で作った一つの部品がなければ、飛ばすことはできない。資本金や従業員数などでは測れない、世界に誇る技術力や職人魂が、日本の中小企業には宿っているのです。  

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2017年12月23日

ピグマリオン効果

 日本で最初にプラネタリウムが設置されたのは80年ほど前だそうです。当時、投影できた星は地上から肉眼で見える6等星まで。数にして約9000個だったという。現在は、10億を超える星を映し出す装置もできました。
 プラネタリウム開発をリードしてきた一人が大平貴之氏です。開発者を志したきっかけが著書『プラネタリウム男』(講談社現代新書)につづられています。それは科学館に勤めるプラネタリウム解説員との出会いでした。
 当時、小学生だった氏。だが解説員は、少年を決して“子ども扱い”しなかったそうです。投影機の仕組みや機能を一つ一つ丁寧に説明。そして折あるごとに「大平君が真に世界に誇れる最先端のプラネタリウムを作り、科学館に納めてほしい」等と言葉を掛け続けたのです。
 教師が優秀だと信じた生徒は、期待されなかった生徒に比べ、明らかな成績の向上が見られたという実験があります。これは教育心理学で「ピグマリオン効果」と呼ばれるものです。成績にとどまらず、大人からの期待が、どれほど子どもの自信や生きる力になるか、計り知れないのですね。  

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2017年12月22日

負けじ魂

 東北新幹線で福島県を移動すると、川の堤防に「ありがとう ふくしまへ」と書かれた巨大なメッセージボードが車窓から見えます。これは、復興支援への感謝を伝えようと、JR福島駅と福島河川国道事務所が設置したものだという。福島県民の復興への力強い決意と負けじ魂を見る思いですね。  

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2017年12月21日

凱風快晴

 「すみだ北斎美術館」が昨年11月、東京・墨田区にオープンしました。ここには日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎に関する作品が展示され、多くの来場者でにぎわっています。
 北斎の代表作といえば“赤富士”の通称で知られる「凱風快晴」ですね。「凱風」とは南風を指します。晴れた朝、南風が吹く中で赤みを帯びて輝く富士。その一瞬を捉えた作品とされています。
 中国の古典『詩経』に「凱風南自りし、彼の棘心を吹く」とあります。「棘心」は育てにくい茨の木の芯。「凱風」はそんな茨にも隔てなく吹き、成長への滋養を与えます。自分を育ててくれた母親へ感謝を込めたとされる一節です。
 北斎が描いた、快晴に映える富士も、雲を吹き払う凱風という存在があってこそ。そう思うといっそう趣が増してきますね。  

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2017年12月20日

身近な生活の場で

 18府県、33の祭りで構成される「山・鉾・屋台行事」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。これは能楽や和食などに続くもので、日本では計21件となります。
 「文化」と聞けば、音楽や絵画などの「芸術」を思い浮かべますが、本来はもっと広い概念で、人類が自らの手で築き上げた有形・無形の成果の総称です。身近な生活の場で生まれ、育まれるものなのです。  

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2017年12月19日

人形師

 伝統芸能の「能」を題材にした博多人形を作り続けて51年――。「現代の名工」と称される人形師がいます。「人形には、作家の心が出る」が信条。「だから、うんと苦労して、心を練り、心を鍛え、心を磨き続けることが大切」と語ります。
 月々日々に人形師は、自分をいじめ抜くかのように鍛錬を重ね、多くの秀作を生み出してきました。そして昨年、3度目となる最高賞の内閣総理大臣賞を受賞したのです。
 人を感動させる魅力を「花」に例えるなら、「時分の花」と「誠の花」がある――これは「能」の第一人者として知られる世阿弥の言葉(『風姿花伝』岩波文庫)。若さゆえに美しくても、時とともに散ってしまうのが「時分の花」。それに対し、たゆまず己を磨いた人は、時とともに美しさを増す。それが「誠の花」なのでしょう。  

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2017年12月18日

人の思いがあったのです

 整然と木立が並ぶ「並木道」を行くと、心が和みますね。歩みつつ、人間と自然との調和を思いませんか。
 長野県南部・飯田市の中心街に、りんご並木があります。ここは旧・建設省の「日本の道百選」や、環境省の「かおり風景百選」に選ばれた歴史もあり、四季を通して、道行く人を楽しませています。
 1947年に発生した「飯田大火」で、同市の市街は大半が焼失しました。リンゴの木々は、町の復興を願った地元中学生によって植林されたものだそうです。大火の教訓を風化させないシンボルであり、今では防火帯の役割も果たしています。
 同県の東部にある軽井沢の別荘街。カラマツの美しい並木道が印象に残ります。しかし、明治初期までは、浅間山の降灰で荒れ果てた土地でした。自生のカラマツはなく、「ここに私たちの理想郷を」と夢を抱いた人々の手で、一本一本、植えられました。洗練された町並みの原点にも、人の思いがあったのです。  

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2017年12月17日

驚いておく

 武道家にとって、「驚かされること」は最も避けるべき状況の一つだそうです。理由は、心身の能力が著しく低下してしまうからで、それに対処するには、普段から「こまめに驚くこと」だと、武道家でもある思想家の内田樹氏が述べています(『街場の憂国会議』晶文社)
 「驚かされる」に対し、「驚く」は能動的な振る舞い。普段から微小な変化に細かく反応することで、いざという時に、それほど驚かされずに済むそうです。
 要人警護のSPの心得も、これと似たところがあるようです。SPは事が起きる前に、芽を摘むことが最も大事な仕事です。警護する人の通り道を毎日歩き、「ないはずのもの」があったり、「あるはずのもの」がなかったり、人が気づかない変化に目をこらすことで、大きな危険を回避します。
 予兆はないか、気を配る。過去の事例に学び、“こんなこともあるのか”と驚いておく。これらは、日常の防災・防犯にも役立ちますね。  

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2017年12月16日

一本石垣

 先の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城。天守閣の南西に立つ「飯田丸五階櫓」も2度の激震に襲われたが、倒壊を免れました。支えたのは「奇跡の一本石垣」でした。
 櫓は、4月14日の前震で石垣の一部が崩壊。2日後の本震の後は、南東側の角に残された細い石垣だけで、重さ17トン以上の櫓全体を支えてきたのです。「一本石垣」は今も復興の象徴となっています。  

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2017年12月15日

二刀流

 今年、話題を集めたプロ野球の大谷翔平選手。彼の代名詞「二刀流」は、「両方やればいいのに」という、母の一言がきっかけで生まれたそうです。
 高校球児だった大谷選手は「(プロは)死にもの狂いでポジションを奪おうとしている世界」「どっちもやりたいなんて、やってる人に失礼だよ」と(「週刊ベースボール」)。今では大リーグも注目する二刀流も、初めは、本人すら思いもしない挑戦だったのです。  

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2017年12月14日

宇宙に学ぶ生き方

 大海原を行くいにしえの船は、夜空の星を見て、針路を知りました。宇宙に学び、人類の針路を考えることは、今の時代も変わりません。
 仏法は、「外なる大宇宙」と、「内なる小宇宙」である自分自身の連関を説いています。宇宙に学ぶ生き方は、自身の可能性を開くことにつながるのです。
 地球が絶妙なバランスを保ちながら安定しているのは、ものすごい速さで、自転と公転という大回転を続けているからです。回転が弱まれば不安定になり、止まれば倒れるコマを想像すれば、納得がいくでしょう。
 力強い律動によって、安定を得る。同じことは、人間の体、そして人生にもいえます。「無常」は宇宙を貫く法則であり、一刻も同じ状態でいられるものはありません。停滞は即、後退を意味するのです。生命力を満々とたたえ、目標に向かって進む大闘争があってこそ、人生は、充実の中に安定するのです。
 大宇宙に比べれば、一人の存在は小さいかもしれません。だが、宇宙とつながる自身を自覚し、無限の可能性を知った人間は、偉大な力を発揮することができるのです。

  

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2017年12月13日

オートファジー

 昨年、大隅良典氏に贈られたノーベル医学・生理学賞。授賞理由となった研究テーマはオートファジーでした。これは「自食作用」と訳されます。人体は毎日約200グラムのタンパク質を作りますが、食事で摂取するのは70~80グラムだけです。足りない分、体内ではオートファジーで分解されたタンパク質がリサイクルされているそうです。
 小学生時代、川や海で遊んだという氏。自然の事物に対する興味や疑問は尽きなかったそうです。やがて“ゴミ溜めの機能しかない”と考えられていた細胞の小器官・液胞を研究するようになりました。酵母の観察を続け、生物の重要な作用であるオートファジーを発見したのです。  

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2017年12月12日

今いる場所で勝つ

 今はデパートの食品売り場はお歳暮商戦の終盤戦だと思います。
 「破竹の勢いで売りまくる」という店員の話です。その婦人は現役を退いた身ながら、68歳の今も、この季節になると声が掛かるそうです。夫人は現役時代、47カ月連続で前年度の売り上げを超える驚異的な結果を出しました。表彰も数えきれないほど受けています。
 その秘訣は、客の心を一瞬で見抜く「対話力」です。贈り先は親戚か、友人か、会社のお得意さまか。相手に合った品を、ほんの「一言」から見極める。さらに「今いる場所で勝つ」心構えが婦人の持ち味です。すごいですねー!!  

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