2016年05月31日

大事なのは

 人に何かを教える時、言葉の選び方で、相手の理解は全く違ってきます。元陸上選手の為末大さんは、子どもたちにハードルの跳び方を教える時、「ハードルの上にふすまがあるから破ってごらん」と言うそうです。坂東玉三郎さんは舞を教える時、腕をどの角度でどうすると言うより、「空から舞ってくる雪を両手ですくうように」とか「扇子で受けるように」と教えるそうです。すると、すぐに分かってもらえるという(『伊東豊雄 子ども建築塾』LIXIL出版)
 何かを人に伝えたい時、自分の頭の中だけで、どんなに隙のない、正確な言葉を考え、話しても、理解されなければ意味がありません。大事なのは、相手の立場に立ち、相手がどう感じているかにアンテナを張る思いやりでしょう。  

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2016年05月30日

苦闘の時こそ

 夏目漱石の晩年は、病との闘いだったそうです。43歳で持病の胃潰瘍が悪化し、入院・療養を余儀なくされました。そんな彼のもとに、遠方から友が駆け付けました。その中には、結婚を延期してまで、見舞いに来た友もいたそうです。
 漱石の感激は大きかった。「住みにくいとのみ観じた世界に忽ち暖かな風が吹いた」「願わくは善良な人間になりたいと考えた」と当時を振り返っています(『思い出す事など』岩波文庫)。
 苦闘の時こそ、真実の友情を知る事ができます。その時に受けた励ましは、生涯の支えとなり、生き方さえ変えていく事でしょう。  

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2016年05月29日

“勝つ”ために、何度もシミュレーションを行う

 6000人以上の心臓疾患者の命を救ってきた、外科医の天野篤氏。氏が形見として大切に持つのは、父親の心臓に付いていた小さな人工弁です。
 氏の父親は心臓の疾患で亡くなったのです。2度目の手術には、助手として最善を尽くし、3度目にも立ち会いました。だが、父を救うことはできなかったのです。「父のような患者さんの姿は見たくない」。この悔しさが、最高の心臓外科医に、と誓うきっかけとなったのです。
 “神の手”などのマスコミの評に、氏自身は違和感を持つという。“手術に偶然の要素があってはならない。偶然性を排除し、必然性をつくっていく。それが手術を成功させるプロセスだ”と(『この道を生きる、心臓外科ひとすじ』NHK出版)。一回一回の手術に“勝つ”ために、何度もシミュレーションを行う。命を守ることに徹するのです。  

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2016年05月28日

自然体と笑顔

 放映41年目のテレビ番組「徹子の部屋」の第1回ゲストは森繁久彌さんでした。森繁さんは、黒柳徹子さんの笑顔を褒めながら言ったそうです。しかめっ面や仏頂面ばかりしていると、しわが戻らず、刻まれてしまう。「だから、笑顔でいてください」と。
 この言葉に、番組をどうしていくか、悩んでいた黒柳さんの心が晴れたという。“気張らず、背伸びをせず、自分らしく”と。長く番組が愛される要因の一つは、この黒柳さんの自然体と笑顔にあるのでしょう。  

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2016年05月27日

日本の土に根付き

 農家の野菜畑。トウモロコシに、雄花の穂が伸びていました。トマトの畝(うね)には支柱が立てられ、ジャガイモの白い花も咲いています。これら植えられた作物の多くが、南北アメリカ原産なのです。トウモロコシはメキシコからグアテマラなどにかけて。トマトやジャガイモは、アンデス山脈の高地が原産との説もあります。
 『新大陸が生んだ食物』(中公新書)に、写真家の高野潤氏が書いています。「栽培植物の植えてから実るまでの彩りや成長ぶりを伝える風景は、どこの国の人々にとっても希望や力を与えてくれる泉のようなものかもしれない」。数百年の歳月、あまたの人々の努力を経て、作物が海を渡り、日本の土に根付き、食卓を潤すことに感謝が湧いてきますね。
  

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2016年05月26日

土地言葉を活字に残す難しさ

 贈り物に添えられた「わざと」の3文字を見て、一瞬、戸惑った。これは、「心ばかりの」を意味する埼玉・秩父地方の方言で、年配の方は今もよく口にするという。地方で育まれた言葉は、実に豊潤ですね。
 世界的な口承文芸学者の小澤俊夫氏は、「方言」ではなく、「土地言葉」という言い方を大事にし、その地域の言葉で語られる昔話の再構築に尽力しています。とともに、発音や抑揚など、土地言葉を活字に残す難しさを痛感しているそうです。  

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2016年05月25日

写真の日

 一週間後の6月1日は「写真の日」です。 1951年に制定されました。写真が生まれて約200年、日本に渡って150年程になります。科学技術の進歩とともに、写真は幼児が撮影できるほど身近な文化に育っています。
  全く同じ写真は、この世に2枚とありません。同じ機材、同じ場所から撮っても、人によって違いが出てきます。写真は撮られた風景と撮った人の心、その両方を映すも のだからなのでしょう。  

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2016年05月24日

 花粉症のピークも過ぎマスクも終わりと思いきや、近年、「だてマスク」が流行しているようです。これは、表情を隠し、対人関係を避けたい心理からといわれています。この現象に、人間関係を築く力の低下を指摘する声もあります。
 ある講演で講師が、女の子が車にひかれ、その横を何人も通り過ぎる映像を流しました。〝私なら必ず助けると思う人は?〟と呼び掛けると、聴講者の大半が挙手しました。次に、アフリカでは疫病で多くの子が命を落としているのに、なぜ無関心でいられるのかと問い掛けました。聴講者の挙手はほとんどありませんでした『闘うための哲学書』(小川仁志・萱野稔人著、講談社現代新書)
 二つのケースで起こる感情の違いを考える鍵は、「顔」にあると論じています。もしアフリカの子どもの「顔」を見れば、助けたいという感情が起こるのでは、と。  

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2016年05月23日

もし、こうなったら

 明治の革命を担った薩摩には、「詮議(せんぎ)」という特徴的な教育法がありました。「もし、こうなったら」と、子どもにさまざまな仮定の問いを投げ掛けるのです。
 「道を歩いていて脇の塀の上から唾を吐きかけられたら、どうするか」など、考えさせる訓練を繰り返したという。江戸時代になり、武士の教育は四書五経の暗記のような形式的なものが広がったが、薩摩では知識よりも知恵を重んじました。僻遠の地で育まれた判断力が、新しい時代の波をつくった(磯田道史著『歴史の愉しみ方』中公新書)。納得  

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2016年05月22日

ぬるぬる

 新緑の季節ですね。今、北海道の各地で田植えが行われています。小学生や幼稚園児などが、農作業を手伝う姿も見られます。土に触れる体験は、子どもたちにとって新鮮な発見の連続でしょう。
 例えば、田には石ころがない。初めて素足で田に入る子らの多くは〝気持ちいい〟と話すそうです。足裏の感じは「ごつごつ」ではなく「ぬるぬる」。石にあたることは、まずありません。
 体験を通し「こんな土にすることが、田をつくるということなんだ」と大人は教えるのです。「何百年も前から、お百姓は石をのけ、石を拾い、土を耕し、ワラや落ち葉や堆肥を入れてきたんだ」(宇根豊著『「田んぼの学校」入学編』農山漁村文化協会)と。  

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2016年05月21日

第3の場

 米国の社会学者レイ・オルデンバーグは、自宅と職場での役割から解放される「サードプレイス(第3の場)」があってこそ、人間として心豊かな生活ができると訴えました。
 その”場”の条件に①地位や身分、年齢に関係なく誰でも受け入れる②主たる活動は楽しい会話③そこには常連がいて、新来者と常連の交流が場に活力を与えている――等を挙げた(『サードプレイス』忠平美幸訳、みすず書房)  

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2016年05月20日

1匹のさそり

 小さな虫を食べて生きてきた1匹のさそり。ある日、いたちに襲われ、井戸に飛び込みました。溺れゆく中で、さそりは思ったそうです。“自分は今までいくつの命をとったのか。なのに、いたちに潔く身をささげられず、むなしく命を捨てるとは”。そして祈った。“この身を皆の幸せのために使いたい”。さそりは真っ赤な火と燃え、闇を照らす星となった。これは、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』にある話です。
 全ての命は、他の命とのつながりの中で生きています。誰かの役に立ちたいと願い、それを喜びとする心は、この命の在り方、歴史と深く結び付いているのでしょう。  

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2016年05月19日

本当に生きている

 著名な精神科医・神谷美恵子氏が書いています。〝本当に生きている〟という実感を得るには、「生の流れはあまりになめらかであるよりはそこに多少の抵抗感が必要」と。また、「生きるのが苦しい時間のほうがかえって生存充実感を強める」とも(『生きがいについて』みすず書房)
 氏は、結核と闘い、夫や病弱なわが子を支え、ハンセン病患者の治療に生涯をささげました。苦難に屈せず、気高き信念を貫いた人の言葉だけに、含蓄深いですね。  

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2016年05月18日

聴くこと

 対話において「聴くこと」がいかに大切か。心をケアする専門職「精神対話士」も、聴くことを重視しています。
 「相手の立場に立って、相手の気持ちを想像し、一緒につらさや楽しさを共有することが重要」で、「共感」こそ対話には不可欠という。反対に「早急な助言」は反感を招くことも。仮に助言が的を射ていたとしても、相手の心は満たされないことがある(メンタルケア協会編著『人の話を「聴く」技術』宝島社新書)
 ある精神対話士は、会って励ますことを「身の差し入れ」と表現しています。飲食物を差し入れるように、悩みを聴くために自分の身を差し入れる。電話やメールで相談された時でも、直接会って話を聴くべきという(前掲書)。納得です。  

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2016年05月17日

距離を置くようになっていきます

 非常識な苦情を振りかざす人を「クレーマー」と言います。一字違いだが、物事が思い通りにならないことを人のせいにする人は「ブレーマー」と呼ぶらしい。「非難、責め」を意味する英語「blame」に由来しています。
 怒りや苦痛を周囲にぶつけるため、問題は解決せず、人間関係は悪化の一途をたどります。しまいには誰もがその人から距離を置くようになっていきます。  

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2016年05月16日

ワンダフル

 「ワンダフル」とは、「驚き(ワンダー)」に「満ちている(フル)」という意味の形容詞です。人生は、予想通りにいかないことの連続だけれど、一つ一つ乗り越えていくことで素晴らしいものになる、と捉えたいものですね。  

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2016年05月15日

61年前

 61年前、アメリカ公民権運動の端緒を開く「バス・ボイコット運動」が起きました。
 運動に参加した人々の高潔さを物語る逸話があります。人種差別を強要するバスの乗車を拒否し、懸命に歩き続ける高齢の女性がいました。心配した自動車の運転手が乗車を促すと、彼女は手を振って断り、決然と言ったそうです。「わたしはわたし自身のために歩いているのではありません」「子供や孫のために歩いているのです」(M・L・キング著『自由への大いなる歩み』雪山慶正訳、岩波新書)。
 一人一人が勇敢で、誇り高き使命感があった。その連帯が、時代を動かしていったのです。  

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2016年05月14日

2045年問題

 人工知能が人間の知能を超える――SF映画で繰り返し取り上げられたテーマで、「ターミネーター」「マトリックス」などがそうですね。だが昨今の技術の進歩で、このテーマは架空の世界だけの話でなくなり、人工知能と人間の関係が、真剣に議論され始めています。
 米国の未来学者レイ・カーツワイル氏は、人工知能が人類の知能を超える日が2045年に到来する、と予測しました。「2045年問題」と呼ばれ、米航空宇宙局のリサーチセンターでは、この問題に対応する研究機関を設立しています。
 人工知能の技術は、医療など多くの分野で活用が可能で、熾烈な開発競争が予想されます。だからこそ、その技術を使う人間の側の倫理が問われます。核エネルギーと人間の関係と同じですね。  

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2016年05月13日

“受ける側”の姿勢

 仕事の基本は報告・連絡・相談の“ホウレンソウ”といわれます。
 報告・連絡は、スピードと正確さが生命線。悪い報告ほど早く。そして“知ったかぶり”をせず、判断に迷うことは率直に相談することです。
 だがホウレンソウは、一方的に求めるだけでは成功しません。大事なのは“受ける側”の姿勢。どんなに忙しくても、報告・相談に来た人と相対し、誠実に受け止める。“あなたの話を聞く以上に、今、重要なことはない”と態度で示す。そうすれば、何でも報告・相談する“文化”が根付いていく事でしょう。  

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2016年05月12日

リンゲルマン効果

 人数が増えるほど、1人あたりの発揮する力は小さくなる。「リンゲルマン効果」として知られるこの法則から、無縁でいられる組織はありません。「あの人がやってくれるだろう」という依存心を排し、集団の中で、おのおのが最大の力を発揮するために、何ができるのでしょうか。
 スポーツ選手らのメンタルトレーニングを行う大儀見浩介氏は言っています。「やらされる」のではなく、自ら進んで「やりたい」と思うように一人一人を促すことだ、と(『勝つ人のメンタル』日本経済新聞出版社)。自分の動機と、全体の目的が合致する――そこに強い団結の力が生まれるということでしょう。  

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