2012年10月06日

心と心で結んだ友情

 8世紀前半に日本から渡った遣唐使留学生の墓誌が中国・西安市で見つかったそうです。そこには――魂はどうか故郷に帰ってほしい――異国で逝いた青年を追悼する文字が刻まれており、日中交流の新たな発見が話題になりました。
 注目したいのは、同時期に渡唐した阿倍仲麻呂にも麗しい交友の軌跡が残っている事です。仲麻呂は最難関の科挙に合格し、唐朝の諸官を歴任しました。そして唐代の詩人・王維や李白と親交を持ちました。753年、仲麻呂が帰国を許された時、王維は「秘書晁監(仲麻呂の中国名)の日本国に還るを送る」と詩で別離を惜しみました。
 日本への帰郷の途次、船が難破しました。仲麻呂が落命したと思い、李白は「明月不歸沈碧海」(明月が沈めば帰らぬように青海に沈み)と友を悼む七言絶句を詠みました。いかに仲麻呂が異国で友好を深めたか。心と心で結んだ友情は千数百年の時を超えても色褪せることはありません。  

Posted by mc1460 at 11:25Comments(0)TrackBack(0)つぶやき