2017年04月02日

十年一剣を磨く

 「十年一剣を磨く」という言葉は、武田信玄と上杉謙信の「川中島の戦い」を詠んだ頼山陽の詩の中にあり、そこから広く知られるようになりました。長く鍛錬を積み、忍耐強く、力を発揮する機会を待つ生き方をいうのだそうです。
 『天才!』(マルコム・グラッドウェル著、講談社)に、「世界レベルの技術に達するにはどんな分野でも、一万時間の練習が必要」とあります。1万時間は、1日に3時間以上を練習に充てると、およそ10年となる計算となります。頼山陽の言葉も、あながち当て推量ではないと思えませんか。  

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2017年04月01日

元患者

 「ここには、ハンセン病の患者は一人もいません」。と、岡山県のハンセン病の国立療養所の担当者が説明します。
 この療養所には、270人余の入所者が暮らしています。だから、初めて訪問する人の中には、漠然と、“この療養所には、多くの患者がいる”と思い込んでいる場合が少なくないようです。1940年代にはプロミンなど同病の特効薬が開発され、入所者は、後遺症があっても、すでに“元患者”なのです。  

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2017年03月31日

難しさです

 歴史作家・火坂雅志氏の遺作となった『左近』(PHP研究所)。豪胆で名をはせた武将・島左近の真っすぐな生き方に魅了されます。
 信ずるに足る主君を求めて流浪し、最後に石田三成に仕えた左近。その運命やいかに――小説を貫くテーマは、誠をささげることのできる師と巡り合うことの難しさです。  

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2017年03月30日

職人歴23年

 職人は、材料の中に命を見るそうです。山梨・山中湖畔で評判の手打ちそば店を営む、職人歴23年の言葉です。
 味の9割は、そば粉で決まるという。「同じ粉でも、その日の気温や湿度によって別物になるんです」。色、香り、手触りを確かめ、「調子はどうだ?」と声を掛ける。状態を見極め、粉に加える水の加減や、そば生地をのばす厚さを微妙に変える。「どれだけ良質な粉でも、〝いつもと同じ〟と油断したら、本来の味は引き出せません」と。  

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2017年03月29日

青函トンネル

 一年前、北海道新幹線の一番列車が青函トンネルに入った際、車掌が粋なアナウンスを始めました。「(トンネルの)開通までには多くの苦労がありました。しかし、海面下という特殊な環境の中でも世界に誇る技術を生み出しつつ、困難に打ち勝ってきた……」云々と。
 世界最長の海底鉄道トンネル。その工事は、異常出水事故など問題の連続でした。34人が殉職。工事の指揮者も「一〇〇のことをやったとすれば、成功したのは本当にせいぜい一〇ぐらい」と述懐しています。
 だが、彼らは「失敗」の一つ一つに意義を見いだしました。「その一〇で、人間が育ったんじゃなくて、残りの九〇で若い技術者が育っていった」「試行錯誤のないものには進歩はあり得ない」(持田豊「青函トンネルを掘って」)。24年に及ぶ難工事は、若い世代へ技術をつなぐことなくして、できなかったのです。  

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2017年03月28日

徹底的に観察・分析

 働く世代の人口が減っていく日本では、経済規模を維持するために、官民挙げて労働生産性の向上が叫ばれています。では、その方法とは――
 米「ニューヨーク・タイムズ」が書き、日本のウェブサイト「現代ビジネス」でも紹介された、米グーグル社の取り組みに関心がもたれています。同社では、専門家を結集し、社内のさまざまな作業グループを徹底的に観察・分析し、成績の良いグループに共通するパターンを探りました。
 そして浮かび上がったのは、能力の高い人が多いか、働き方のルールが厳格か緩やかか、などは関係なく、「心理的安全性」、つまり“ありのままの自分”“本来の自分”を安心してさらけ出せるチームは、生産性が高い事実でした。
  

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2017年03月27日

三義塚

 大阪・豊中市立中央公民館。ここには「三義塚」と刻まれた墓石があります。三義は、植物・生物学者の西村が付けたハトの名前です。
 1932年、第1次上海事変の直後、西村は医療団を率いて上海に渡りました。三義里という街で一羽のハトを見つけ、日本に持ち帰って育てた。〝子バトが生まれたら、平和の使者として中国へ送ろう〟と楽しみにしていたが、三義は落命してしまいました。
 その後、弔う塚が建てられ、西村は自筆の「三義」の絵と共に一首を詠んで、魯迅に送りました。「西東国こそ異へ小鳩等は親善あへり 一つ巣箱に」。感激した魯迅は、漢詩「三義塔に題す」を西村に返した。「荒波を渡れば兄弟がいる。会って笑えば恩讐は消える」と。  

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2017年03月26日

活動のエッセンス

 詩人の大岡信氏が、京都の染色家の仕事場を訪ねた時の話です。桜色に染まった着物を見た。淡いようでありながら、燃えるような強さを内に秘めた、その美しさに目を奪われたそうです。
 「この色は何から取り出したんですか」。大岡の問い掛けに、染色家は「桜からです」と答えました。だがそれは、花びらではなく、樹皮から抽出した色だったのです。しかも染色家によれば、その桜色は一年中、取れるものではなく、桜の花が咲く直前にしか抽出できないと。
 桜は木全体で最上のピンク色になろうとしている。花びらは、樹木全体の活動のエッセンスの一端が姿を現したものである――。この桜のエピソードを通し、大岡氏は“言葉の世界も同様ではないか”と頭によぎった、という(『ことばの力』花神社)
 発せられた一語一語を花びらに例えるなら、樹木全体は、その人自身であり、生きてきた人生そのものといえるでしょう。その全てを分かることはできないとしても、誠実に相手の言葉に耳を傾け、言葉の奥にあるものに、思いをはせたいものです。  

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2017年03月25日

サーチライト

 陰の努力を探したたえる作業を、よく「サーチライトを当てるように」と形容します。サーチライトは、反射板で光を強め、特定の方向に向けることで、遠くまで照らし出します。陰の労苦を見逃すまいと一念を磨き、心の光度を高めたいものです。  

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2017年03月24日

対話上手とは聞き上手

 「聴く」という字には「耳」と「目」と「心」が入っています。民俗学者の六車由実さんの、介護の現場に入り、その体験をつづった著書『驚きの介護民俗学』(医学書院)を読んだことがありますか。
 六車さんは、認知症の人に話を聴き、その人の「思い出の記」を作成しました。ある研究会で、その取り組みを紹介すると、驚かれたという。認知症の人の言葉は、脈絡がなく、意味のないものと思われているからだろう。
 だが六車さんは、そうした先入観を捨てて、真正面から言葉を受け止めることにした。すると「散りばめられたたくさんの言葉が一本の糸に紡がれていき(中略)その人の人生や生きてきた歴史や社会を織りなす布が形づくられていく」と、六車さんは綴っています。
 “この人をどうにかしよう”という思いばかりが先行すると、その気負いが邪魔をして、相手の言葉は心に入ってこない。“この人を知ろう”と決めて、素直に相手のありのままの言葉に耳を傾けるとき、心に見えてくるものがあります。
 話すことが苦手と思っている人も、相手の話をじっくり聴くことはできるはずです。対話上手とは聞き上手。必要なのは誠実な「心」であり、巧みな話術は、必ずしも必要ないのです。  

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2017年03月23日

陰で支え続ける行為

 選抜高校野球の熱戦が続いています。テレビでは分かりづらいですが、球場で野球を見ると、打者が内野ゴロを放ったとき、捕手も追い掛けるように一塁方向に走るのが分かります。これは一塁手の捕球失敗に備えるためですが、鍛錬を積んだ野手に失策はまれです。判定が出ると、なにもなかったように捕手は自分の守備位置に走って戻っていきます。
 慶應義塾大学の塾長を務めた小泉信三氏は、この姿に感銘を受けたという(『平生の心がけ』講談社学術文庫)。公算が小さくても万一に備え、陰で支え続ける行為に、尊い信念を見たのでしょう。  

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2017年03月22日

花の姿は千差万別

 桜の季節が近づいてきました。桜といっても、花の姿は千差万別です。古くから日本人に親しまれてきた桜の種類は、300種以上あるとされています。
 桜が麗しい花をつけ、衆目を集めるのは数週間です。残りの大半は、季節の変化に対応し、懸命に、静かに生きています。暑さの中で幹を太らせ、寒さを耐え抜いた冬芽が、つぼみとなり、やがて花となるのです。  

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2017年03月21日

3L

 ケア宮城と公益財団法人プラン・ジャパンがまとめた被災者の心を支えるガイドラインの冊子によると、心の支援活動の基本は「3L」。Look(見る)、Listen(聞く)、Link(つなぐ)と示しています。
 相手の状況は刻々と変わるから、よく「見る」。次の「聞く」とは、注意をそらさない(目で聞く)、相手の話を真摯に受け止める(耳で聞く)、真心を込めて、相手を尊重する(心で聞く)の三つ。そして、自分で全てを抱えず、問題に対処できるように「つなぐ」ことである、と。
 さらに、この「3L」の際、心掛けることとして「プライバシーを尊重し、人の秘密を守る」「沈黙も受け入れる」「話を聞いていることが相手に伝わるように、たとえばうなずいたり、相づちを打ったりする」などがある、と。
 又、避けるべき行為もある。「相手の話をさえぎったり、急がせたりしてはならない」「被災者がしたこと、しなかったこと、あるいはその感情について価値判断してはならない」など。被災者に寄り添っています。  

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2017年03月20日

ハマユリ

 三陸の海辺に自生するハマユリは、夏に橙色の花を咲かせるます。どこにそんな力があるのか、か細い茎で大輪を支える。浜の強風すら楽しんでいるかのようです。
 「そんなハマユリが、この辺りの人は大好きなんです」。岩手・釜石の人が教えてくれました。懸命に咲くその花と、自らの生きる姿を重ねて見るのでしょう。  

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2017年03月19日

歩数計

 日本で年間約500万台が販売されるという「歩数計」。ある研究によると、イタリアのレオナルド・ダビンチが考案し、1712年、フランスの物理学者が最初に製作したとされています。
 もとは健康のためではなく、歩数をもとに「距離」を測るための器具でした。日本では、江戸時代に平賀源内が「量程器」として初めて作り、測量家・伊能忠敬も日本地図を作るのに、これを用いました。
 測量機器の発達により、歩数計はいったん廃れるが、近年、「健康管理機器」として復活、という経過をたどっています。
 歩数計を使う人の多くが「1日1万歩」を目安にするそうです。成人男性の平均歩幅を75センチとすると、1日に7・5キロ1年では約2700キロで、なんと列島縦断も可能な距離になる。まさに「継続は力」ですね。  

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2017年03月18日

師の分身として立った

 ギリシャの哲人ソクラテスは、自らの思想を書物に残さなかったそうです。彼の思想を著作に残したのは、プラトンをはじめとする弟子たちなのです。プラトンは、今も、この先も自身の作などない、と記しています。あるのは「若く美しくなったソクラテス」のものである、と。
 教育者の林竹二氏は“ソクラテスの思想が、プラトンという魂に種を蒔き、実を生じさせた。ゆえにその実は、師匠のものでもある”と捉えています(『若く美しくなったソクラテス』田畑書店)。
 師の分身として立ったプラトンは、ソクラテスに代わって語り、彼が創設した学園アカデメイアは900年以上にわたり人材を輩出したのです。  

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2017年03月17日

交流軸

 歴史家の宮崎市定さんは〝交流軸のある都市は栄える〟と言っています。この視点で日本列島を見た場合、古都・京都は日本海側と太平洋側を最短かつ容易に結ぶ「舟運交流の中心地」であったことが分かると、土木専門家の竹村公太郎さんは述べ、そこに京都が1000年以上も栄えた理由を見いだしている(『日本史の謎は「地形」で解ける』PHP文庫)
 豊かな地域づくりのために、この「交流軸」という視点は、社会資本だけでなく人間関係にも必要でしょう。交流軸からはずれたようにみえる、「限界集落」と呼ばれる高齢者が多い地域でも、人と人が活発に交流するところには活気があります。
 これは日本だけではありません。アフリカには「一人の老人が死ぬと、一つの図書館がなくなる」ということわざがあるそうですが、人と人がつながり、対話することは、膨大な情報を交換し、そこから新たな価値を生み出すことでもあるのです。  

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2017年03月16日

手巾

 ある大学教授のもとに学生の母親が訪れた。闘病中の学生が亡くなったという報告だった。だが、教授は意外に思った。平静な口ぶりで笑みさえ見せる母親からは、息子を失った悲哀が感じられない――。芥川龍之介の短編「手巾」(岩波文庫)です。
 話の途中、うちわを落とした教授が、拾おうとかがんだ時、膝に乗せた母親の両手が見えた。手巾を引き裂かんばかりに、手は激しく震えていた。「婦人は、顔でこそ笑っていたが、実はさっきから、全身で泣いていたのである」。
 私はこの短編をまだ読んでいません。機会があったら読みたいです。  

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2017年03月15日

がん哲学外来

 がん患者や、その家族を「対話」を通して支援する「がん哲学外来」が注目を集めています。
 この外来で処方されるのは、薬ではなく「言葉」です。(樋野興夫著『いい覚悟で生きる』小学館)大病を宣告された人の衝撃は想像を絶する。ありきたりの言葉では、不安や恐怖をぬぐえない。担当医は、全神経を集中させて相手の話を聞き、自らの存在をかける思いで“希望の言葉”を送ります。それを繰り返すうちに、多くの患者が自分にしかない使命や役割に目覚め、「他者の幸福」に関心を抱き始めてくるそうです。  

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2017年03月14日

「なる人生」とは

 人には「持つ人生」と「なる人生」があります。医師の日野原重明さんが、ドイツの心理学者エーリッヒ・フロムの言葉を紹介しながら、子どもに語っています。「持つ人生」とは、ほしいものを手に入れて満足する生き方。「なる人生」とは、「もの」でなく「自分が何になるか」を目標に、自分を磨き、なりたいものになる生き方だ、と(『明日をつくる十歳のきみへ 一〇三歳のわたしから』冨山房インターナショナル)
 日野原さんは単に、周囲の評価が高い職業を目指せと言いたいのではないのです。「なりたい」自分を決め、それに向かって努力し、挫折しても、その挫折から学び、また努力する――得られた「結果」よりも、こうした過程そのものに人生の価値があると伝えたいのだ。と私は思います。  

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