2018年04月16日

「大人」の要件

 江戸時代の蘭医学者・緒方洪庵が著した『扶氏医戒之略』に次の一節があります。「病者に対しては唯病者を視るべし。貴賤貧富を顧ることなかれ」と。
 診察に限らず、洪庵は普段から誰にでも分け隔てなく接しました。弟子の福沢諭吉は「客に接するにも門生を率いるにも諄々として応対倦まず、誠に類い稀れなる高徳の君子」と師を敬慕していました(中田雅博著『緒方洪庵――幕末の医と教え』思文閣出版)。
 相手によって態度を変えない。これが「大人」の要件の一つでしょう。  

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2018年04月15日

30通の手紙

 「生きているうちに息子に伝えなければ」――カナダの実業家キングスレイ・ウォードは、2度の心臓手術の後、会社を継ぐ息子に手紙を書いたそうです。後に『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』として出版され、新社会人の必読書としてベストセラーになっています。
 その内容は「礼儀正しさに勝る攻撃力はない」「服装は君に代わって物を言う」……。仕事で遭遇する局面での対応を説く同書。親子の立場を超えた「同じ道を志す友」への愛情が伝わってきます。最後に「君の父親であったおかげで、素晴らしい人生だった」と締めくくっています。(城山三郎訳)  

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2018年04月14日

本当は近くにある

 近年、身近なレジャーとして登山を楽しむ人が増えています。若い女性は〝山ガール〟と呼ばれ、服装も華やかに。しかし、山は急激な気候の変化や思わぬ落石など、常に危険と隣り合わせです。
 創価学会の池田先生の創作物語『あの山に登ろうよ』(金の星社刊)には、3人の子どもが「にじの山」の頂上を目指す冒険ストーリーが展開されています。立ちはだかる「まほうつかいの雲」「だましの岩」に打ち勝つことはできるのか――
 森の妖精が語り掛けます。「ちょうじょうはね、なかなかつかないように見えるけど、本当は近くにあるのよ」「百歩登ればちょうじょうなのに、九十九歩で引きかえしてしまう人もいる」。物事の成否や勝敗が決まる前には、必ず苦難という〝剣が峰〟が待っているものです。その時、登り続けた人だけが頂上に立てるのです。  

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2018年04月13日

〝生きる力〟を得ようと

 福島県・三春町にある国の天然記念物で、日本三大桜の「三春滝桜」。四方に垂れた幅20㍍もの枝に咲く桜が滝のように見えることから、その名が付いたそうです。
 樹齢1000年を越して今なお、〝冬は必ず春となる〟と、わが身で示す一本の桜。その姿を見るために例年、数十万人が訪れるという。らんまんの春を告げる滝桜から〝生きる力〟を得ようと、人々は足を運ぶのかもしれないですね。  

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2018年04月12日

体温”にまで迫ったからこそ

 記録文学や歴史小説などの分野で多くの作品を残した吉村昭氏。氏の生まれ故郷、東京・荒川区に「吉村昭記念文学館」があります。
 館内の一角には、書斎が再現されています。部屋の三方を天井まで伸びた本棚が囲み、歴史書、郷土史などに加え、自作のスクラップブックも並んでいます。その量に圧倒される事でしょう。窓際には幅2メートル60センチもある特注品の机。執筆時に多くの資料を載せるため、この長さが必要だったそうです。
氏の信念は「史実そのものにドラマがある」。戦史小説では関係者の証言を重視し、一つの作品のために192人を取材したこともあったそうです。「証言者と会い、その眼の光、言葉のひびきを見聞きした」(『私の引出し』文春文庫)。それぞれの証言の“体温”にまで迫ったからこそ、事実や数字の羅列ではなく、血の通った人間ドラマを描けたのでしょう。  

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2018年04月11日

一日一日の積み重ね

 最少の時間で最大の成果を挙げるには?――そんなテーマを扱い、全米ベストセラーになった本に『エッセンシャル思考』(かんき出版)があります。
 そこには、目標設定の仕方として、着実に達成できる小さな目標が大切と記されています。派手な目標を立てると、途中でくじけてしまう場合があるからです。社会で実証を示すといっても、一日一日の積み重ねですね。  

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2018年04月10日

決断できた心意気

 帝国ホテルの総料理長も務めた村上信夫さんが、まだ30代のある日、同ホテルの社長に呼ばれたそうです。社長の「フランスに留学しないか」との打診に、村上さんは「行かせていただきます」と即答しました。「奥さんに話さなくていいのか?」と驚く社長に、「説得します」と宣言し、留学が決まったのです。
 実は、その前に8人の先輩が打診されたが、皆、「家族と相談します」とためらったらしい。信頼する人に助言を求めたり、環境に応じた賢明な判断は大事だが、人生を左右する一大事に“まず行く!”と決断できた心意気が、村上さんの未来を大きく開いたことは間違いないですね。  

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2018年04月09日

靴をそろえて脱ぐ自由

 120年ほど前の日本では、まだ女性に開かれていなかった新聞記者の道を、自らの努力で勝ち取った羽仁もと子さん。後年、教育家となり、ユニークな教育方針の一つとして「靴をそろえて脱ぐ自由」を強調しています。
 「脱いだ靴をそろえなさい」という強制ではなく、“そろえない自由”も選択肢に示し、自由の真意を考えさせたかったのでしょう。自由は自分勝手とは違います。自ら考え、選択し、その結果を引き受ける責任が伴います。それゆえ、問答無用でやらされるより、成長のチャンスは大きいのです。  

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2018年04月08日

雨について

 週末に降る雨を喜ぶ人は、そう多くはいないでしょう。イベントが多いこの時期だと、なおさらです。
 春の雨にはいくつも異称があります。その一つが「育花雨」。花の生育を促す“恵みの雨”との意味で、仏教にまつわる故事から生まれました。4月8日に釈尊が誕生した際、仏法を守護する八竜王が喜びのあまり、「甘露の雨」を降らせて祝福したという伝説です。
 「雨は花の父母」とのことわざもあります。子どもたちが、“成長”という名の花を命いっぱいに咲かせる入学シーズン。わが子の産声を聞いたその日から、励ましの陽光と慈雨を一心に注ぎ続けてきた家族の感慨は、ひとしおでしょう。  

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2018年04月07日

「KY」と「KY活動」「KY訓練」

 「KY」といえば“空気読めない”の略として、10年ほど前から若い人を中心に使われている言葉です。その場の雰囲気や状況などを察することができないという、日本社会独特の否定的な表現ですね。
 一方で、事故や災害を未然に防ぐための取り組みに「KY活動」「KY訓練」という言葉がある。この場合のKYは「危険予知」を指します。1970年代から使われ始めたというから、言葉の歴史としては、こちらの方が“先輩”です。  

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2018年04月06日

夜間中学

 第2次大戦前後の混乱や貧困、学校でのいじめや病気により、十分な学校教育を受けられず、読み書きができない人が、日本に少なからずいます。その人たちのために「夜間中学」の仕組みがあります。
 「夜間中学」はユネスコなど、世界から高い評価を受けている、この仕組みを守ろうという動きが、最近広がってきているそうです。  

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2018年04月05日

満たされ過ぎるとうまく育たない

 市販されているトマトの糖度は4~5度程度だそうです。だが、農業研究家の永田照喜治氏が栽培したトマトの糖度は、この2~3倍にもなるそうです。なんと、ブドウ並みの19度になったこともあるそうです。
 秘密は「スパルタ農法」にあるそうです。水と肥料を極力少なくし、トマトを“甘やかさない”。ぎりぎりの環境に置かれたトマトは、養分や水分を何とかして吸収しようと、茎や葉などあらゆるところに産毛をびっしりと生やす。その結果、吸収の効率が上がり、果実においしさが凝縮するのです。
 過剰な栄養が与えられると、根は十分に働かなくなるという。満たされ過ぎるとうまく育たないのは、植物も人間も同じかもしれませんね。  

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2018年04月04日

陰の人々

 昨年、トヨタ自動車の草創期をモデルにしたドラマが放映されました。このドラマは特に販売店や部品メーカーといった、陰の人々に光が当てられていました。
 同社の市販車第1号は、よく故障しました。苦情も殺到し、販売は困難を極めました。だが販売店の支配人は負けていない。「我々が自信をもってユーザーに差し上げることのできるものは、ただ誠意・誠実・まごころ、それだけだ。我々は全力をあげて、それを実践する」(若松義人著『トヨタのリーダー 現場を動かしたその言葉』PHP研究所)
 営業マン自ら、整備・点検に汗を流しました。整備士と共に故障車のもとへ、昼夜を問わず駆け付けたのです。もっといい車を作ってくれれば、苦労しないのに――こう思って当然であろう。だが彼らは人をあてにしたり、人のせいにはしなかったのです。“国産車を育てるのは自分だ”という決意と確信は、技術者にも劣らなかったのです。
   

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2018年04月03日

タンポポの英語名は「ダンデライオン」

 人通りが少ない路傍でタンポポを見つけました。誰もが見上げる華やかな桜に負けまいと、足元で懸命に“春の到来”を告げている一輪の花がいとおしい見えました。
 タンポポはアスファルトの隙間や崖など、あらゆる場所でかれんな姿を見せます。その秘密は地中深く伸ばした「根」にあるそうです。長いものでは、1メートルに達するものもあるという。花が咲いた後の綿毛は風に乗り、土さえあれば、その場所に根をおろし、再び花を咲かせていくのです。
 タンポポの英語名は「ダンデライオン」。語源はフランス語で、“ライオンの歯”という意味です。ギザギザの葉が、それに似ていることから付けられたという。仏典では百獣の王であるライオンを「師子」と名付けています。「師子」を思わせるたくましさこそ、タンポポの特徴なのかもしれません。  

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2018年04月02日

ソメイヨシノ

 ソメイヨシノ。現代では日本の桜の大半を占めています。このソメイヨシノの名が正式に定められたのは1900年の事です。
 ソメイヨシノは江戸時代に交配によって生まれ、接ぎ木によって全国に広がりました。一斉に咲き、一斉に散るのは、ソメイヨシノが、全て同じ遺伝子を持っているからだそうです。  

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2018年04月01日

紙の切符

 埼玉県の秩父鉄道。ここで行き先を駅員に告げると、窓口で手渡されるのは、昔懐かしい硬い紙の切符です。駅によってはスタンプを押しますが、今もカギ形を刻むハサミを入れている所もあるそうです。
 初めて“自分の切符”を手にした当時の思い出がよみがえってきませんか。今と比べれば、だいぶ速度の遅い列車に揺られながら、“これさえあれば目的地に行けるのか”と感激した記憶が残っている人もいる事でしょう。  

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2018年03月31日

菖蒲と尚武

 今は桜が真っ盛りですが、そのあとに来るのはこれ。紫・白・桃色など、鮮やかな色で見る人を引きつける菖蒲の花です。
 菖蒲は武道を尊ぶ志を表す“尚武”と同じ読みであることから、江戸時代、武士の間で広まり、特別な思いをもって観賞されたといいます。3日間ほどの開花のために1年間、手塩にかけて育てられるそうです。
 私は知らなかったのですが、菖蒲の特徴は一つの花茎から2度、花が咲くことです。がくの中のつぼみが育ち、一番花の開花に続いて、二番花が力強く開くそうです。  

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2018年03月30日

ヒマワリ

 東日本大震災の被災者が「疲れきった自分にエールをくれた“希望の花”」として、がれきの中から芽吹いたヒマワリの話を紹介しています。
 その種は国内外に広がり、昨夏、震災の年に咲いたヒマワリから数えて6代目の「6世」が元気に開花しました。ヒマワリは一年草です。被災者は語っています。「このヒマワリを、なぜ1世、2世、3世と数えるのか。例えば50世になり、子どもたちが『なぜ50世なの?』と尋ねた時、『これは50年前、大震災があって……』と震災の話ができる。世代をつないでいける」。震災の体験を未来への教訓にする、との強い意志を感じました。
 被災地と被災地以外では、震災に対する意識は異なります。ある被災者は「同じ県でも内陸部と沿岸部で違う。この温度差が苦しい」と訴えています。他者に思いを馳せることの難しさです。
 災害は、いつ、どこで起きるか分からない。決して人ごとではない。被災地を思い起こし、自分の内面に刻みつける、一人一人の真摯な作業が求められます。  

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2018年03月29日

取り出すもの

 落語家の林家木久扇さんが喉頭がんになった時のことです。しゃべる商売なのに声が出ない。弱気にならないように“体から出ていけ!”と毎日、がんを叱りつけた。それを聞いた医師からは「とてもいいことだ」と褒められたそうです。
 不安や臆病といった後ろ向きの気持ち。それとは逆の、確信や負けじ魂――これらは共に心の中にあります。“もはや、これまでか”という難局を乗り切る力は、外から借りるものではなく、自身の心の中から取り出すものなのです。  

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2018年03月28日

 俳句で「春の季語」を知って見えますか。梅や桜は言わずもがなとして、驚いたのは「凧」です。正月に揚げるイメージから、冬の風物詩とばかり思っていました。そもそもは江戸時代に春の行事として流行したものらしいのです。凧のほかに風車、風船、石鹼玉も春の季語に入るそうです。
 いずれも「風」と遊ぶ玩具ですね。暖かさを増した風に誘われ、子どもたちが外遊びに興じるのどかな光景に、昔の人々は春の訪れを重ねたのでしょう。
 季節の移ろう日本では、風の変化を鋭敏に読み取る感性が磨かれるのかもしれません。「風」の語が、自然現象にとどまらず、「世の動き」「形勢」等の意味で使われるのも興味深いですね。
 同じ「風」でも捉え方は人それぞれ。少々の「向かい風」に怯む人もいれば、鳥や飛行機のように飛翔の好機とする人もいます。向かい風であれ、追い風であれ、生かせるかどうかは自分次第。どうせなら風を利用して勢いづけたいものです。
 仏典に登場する伝説上の虫「求羅(ぐら)」は大風に吹かれるほど、その身が倍増するそうです。  

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