2018年07月25日

これが最後のコンサート

 世界的な名指揮者として知られるフルトヴェングラー(1886~1954年)ですが、特に戦争中の演奏の迫力はすさまじかったそうです。思想家の丸山眞男は“人類の音楽は、フルトヴェングラーの戦時中の演奏をもってその頂点とする”とまで語っています(中野雄著『丸山眞男 音楽の対話』文春新書)
 なぜ、それほどの名演奏ができたのか。当時は、戦局が悪化するという緊迫した状況にありました。空襲で演奏会が中断されることもたびたび。いつ誰が犠牲になるか分からない。指揮者も奏者も「これが最後のコンサート」と、“命懸け”だったのでしょう。  

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2018年07月24日

あと2年

 2020年の東京五輪・パラリンピックの開幕まで、きょうで「あと2年」になりました。アスリートたちが繰り広げる熱闘が今から楽しみですね。
 大舞台に向けて産業界も熱くなっています。自動運転車の実用化やロボットの活用など、未来にどのようなレガシー(遺産)を残せるかに注目が集まっています。
 初の東京開催となった1964年大会のレガシーには、首都高速や東海道新幹線があります。競技結果の速報システムや民間警備が誕生したのもこの時。技術革新を支えたのは、従来の仕事にとらわれず、活路を開いた人々の血のにじむような努力です。それが今日の日本経済の基盤となったのです(野地秩嘉著『TOKYOオリンピック物語』小学館文庫)  

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2018年07月23日

花火

 花火のシーズンですね。一段と高く上がった花火が大きく開くと、歓声が上がります。炎が柳のように降り始めた後、「ドーン」と空が割れるのではないかと思うほどのごう音が響きます。
 大きな花火では、花が開くのが先で音は後になります。これは、光速より音速がはるかに遅いためですが、それを不思議に思った子どもは「どうして?」と聞くかもしれません。
 その時に、後回しにせず、小さな疑問に真正面から向き合って、新鮮な好奇心を満たせる親でありたいものです。  

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2018年07月22日

アメリカの思想家・ソロー

 201年前の7月に生まれたアメリカの思想家・ソロー。くしくも7月に、彼は人生の大きな出来事を刻んでいます。28歳の7月、ウォールデン湖畔で生活を始めました。そこで自身の内面を見つめ、精神を鍛え上げていったのです。
 ソローは徹底して奴隷制に反対しました。当時の政府が奴隷制を維持していることを理由に、彼は成年男子に課せられていた人頭税の支払いを拒否。その結果、投獄されます。これも29歳の7月のことでした。
 しかし、投獄はソローをひるませるどころか、さらに奮い立たせました。国家の不正に怒り、出獄を拒否したほどです。彼は「国家の力と権威はすべて個人の力に由来する」(飯田実訳)と考えた。ゆえに、社会の変革は自己変革から始まると捉えたのです。納得!!  

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2018年07月21日

ミスター

 「ミスター」と呼ばれる長嶋茂雄さんが野球を始めたのは国民学校4年、終戦の年でした。物がない時代で、母親と一緒に、サトイモの皮やビー玉に布を巻いて、ボールをこしらえたという。かつて、テレビの対談番組で語っていました。
 ミスターほどの名選手なら、知られたエピソードは数多くあります。その中でも、母とボールを手作りした思い出話は、胸の中で大切にしてきた〝宝物〟を見せてくれたような気がして、心に残っています。  

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2018年07月20日

妙技の源

 なぜ音楽は生まれたのか。バイオリンの巨匠ユーディー・メニューイン氏は、こう表現しています。「他人の心になんとかして触れたいというやむにやまれぬ欲求から生まれた」(別宮貞徳監訳)。そして、ナチスの強制収容所の生存者をはじめ、病める人、生活に困窮する人への慈善演奏に力を入れた。あふれる人間愛が、氏の妙技の源だったのです。  

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2018年07月19日

ブラジルのパウロ・フレイレ

〝対話〟を重んじた教育思想家に、ブラジルのパウロ・フレイレがいます。為政者の意のままに抑圧され、貧しい環境に甘んじていた労働者への識字運動を指導。対話を通し、主体的に社会を見つめ、行動する姿勢の大切さを訴え続けました。
 「本当の意味での革命ならば、遅かれ早かれ、一般の人たちとの勇気ある対話を始めることになる。革命の正当性は、人々との対話にあるのであり、人気取りや、うそのうちにあるのではない」と(パウロ・フレイレ著、三砂ちづる訳『新訳・被抑圧者の教育学』亜紀書房)  

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2018年07月18日

7月17日

 1957年(昭和32年)7月17日、母に連れられ、婦人は中之島の大阪市中央公会堂へ向かった。「高校生やったけど、あの師子吼は、はっきりと心に残った」と。
 「あの師子吼」とは、創価学会が開催した「大阪大会」での若き池田先生の“最後は信心しきったものが、正しい仏法が必ず勝つ”との叫びです。不当逮捕・勾留という「権力の魔性」との闘争宣言は、婦人の心に「生涯の指針」として刻まれたのです。  

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2018年07月17日

たった一言

 いじめに遭い、生きる希望を失っていた中学生。“夜回り先生”こと水谷修さんに、たった一言、メールを送ったそうです。「死にたい」と。
 水谷さんの返信も一言だった。「あなたは誰かのために何かをしたことがありますか?」――中学生は驚き、自問を重ねる。そして、人のために何もしたことがないと気が付き、思い直した。時がたった今、介護職に就き、誰かのために生きる喜びをかみ締めている(水谷修著『優しさと勇気の育てかた』日本評論社)  

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2018年07月16日

古典はいつ“古典”になるのか

 児童文学として有名な『ガリバー旅行記』。だが作者のスウィフトは、子ども向けに書いたわけではなかったそうです。
 18世紀のイギリスの政界には、不正や堕落が横行していました。これに腹を立てたスウィフトは、巧みに風刺する同書を書き、絶大な人気を博したのです。時代とともに社会状況が変わっても、同書は児童向けの読み物として再評価され、世界的な名作となりました。
 古典はいつ“古典”になるのか。お茶の水女子大学名誉教授の外山滋比古氏は「古典は作者ひとりで生まれるのではなく、後世の受容によって創り上げられる」と指摘しています。作品がそのまま歴史に残るのではなく、「後人の目に見えない力が加わって古典になったり、逆に消えたりする」と(『乱読のセレンディピティ』扶桑社文庫) へー、そうなんだ  

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2018年07月15日

ぜひ描きたいと思った

 幼少の頃に戦争体験を持つ壮年の話です。
 ある日、学童疎開先に東京の母親から荷物が届いたそうです。中身の粗末な衣類には、かわいい動物が刺繍されていました。家族と離れ、さびしがるわが子を直接、抱きしめることはできない。その代わり、一針一針に込めた愛情で包み込んであげたい。そんな母の思いが伝わる縫い目に勇気がわいた、と語っています。
 焦土と失意の戦後に、子どもたちに勇気と希望を届けたのは少年少女雑誌でした。創価学会の池田先生も若き日、恩師が経営する日本正学館で、「冒険少年」(後に「少年日本」と改題)の編集長を務めました。「子どもたちに偉大なる夢を贈りたい」。池田先生の情熱に共感した一流の作家陣が筆を執り、挿絵も錚々たる顔ぶれが腕を振るいました。
 その雑誌の名は、手塚治虫氏が生前、「ぜひ描きたいと思った」と語り、関係者の間で“幻の雑誌”と深く記憶に残る「冒険少年」です。  

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2018年07月14日

一番の拍手が起きた瞬間

 梅雨がない北海道では学校の運動会は5月から6月に開催されることが多いそうです。札幌創価幼稚園の運動会も先月、元気よく開かれました。
 昨年の出来事です。かけっこで転び、泣きだして動けなくなった園児がいたそうです。その時、真っ先に駆け付けたのは、担任の教員でした。まず、園児をぎゅっと抱き締めた。そして声を掛けた。「もう一度頑張ろう。先生も一緒に走るから」と。
 この日のために一生懸命、練習してきたことを誰よりも知るからこそ、あえて強く言い切った。「負けない心の『太陽の子』なんだから、必ずできるよ」と。教員に手を引かれて走りだす園児を、クラスメートも声の大応援で後押し。ちょっとした出来事だが、この日一番の拍手が起きた瞬間でした。
 教育関係者が語っています。「抱き締めるように、まず相手の思いをありのままに受け入れる。そして、一緒に行動する。さらに、励ましの言葉を掛けるのをためらわない。全て、若い命を育む上で大事なことです」と。  

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2018年07月13日

土壌の話

 農学の大家が、ある村で1時間ほど講演しました。題名は「土壌の話」。終了後、一人の聴講者が、けげんそうに質問しました。「どじょう、どじょう、とおっしゃいましたが、赤どじょうのことですか、ごまどじょうのことですか」と。
 農学の大家が「土」で分かるところを「土壌」と言ったために、淡水魚の泥鰌と混同され、講演が分かりにくくなってしまった――。言語学者の金田一京助氏は、このエピソードを通して、言葉を発する際に大切なのは「よく分かること」と指摘しています。相手が理解できるように話す、日常的な話し言葉が「ほんとうの生きたことば」であると(『金田一京助全集 第14巻』三省堂)  

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2018年07月12日

ネット依存の減少

 青少年の「ネット依存」が社会問題になっています。インターネットを使ったゲームや仲間同士の交流に毎日長時間を費やし、睡眠不足など、生活に悪影響を及ぼす事例が増加しているそうです。調査では、全国で推計約52万人もの中高生がネット依存の傾向とされています。
 この問題に長年、取り組んでいる遠藤美季氏によると、ネット依存に陥らない人にはいくつかの共通項があるそうです。①自己肯定感・自己有用感が高い②自分の将来に明るい希望を抱いている③家族関係が良好、などを挙げています。と、すれば、こうした実感をもつ子どもが増えることが、ネット依存の減少にもつながるはずですね。  

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2018年07月11日

未来が開けた

 幕末から明治の大名人といわれた講釈師の神田伯山は、名奉行・大岡越前の創作噺「天一坊」で人気を集めました。「伯山は天一坊で蔵を建て」と川柳に詠まれるほどで、80人以上の弟子がいたといわれています。
 ある日、外出した伯山が、お供の末弟子に言いました。「おい、そばを食おう」。ところが店に入って注文したのは、自分のそば1杯。不審げな弟子に、伯山が一言。「食いたかったら芸を勉強しなよ」と。
 弟子は家に帰るなり、父に不満をぶつけた。すると父は、師匠の家に向かって両手をつき、感謝を。そして“今は一番下だが早く一人前になれ”という励ましなのだ、と。心を入れかえ稽古に励んだ弟子は後年、先輩たちを追い越し、2代目・神田伯山となったのです(三遊亭圓生著『浮世に言い忘れたこと』小学館文庫)
 師の言動を恨んだままでいたら、後の大成はなかったかもしれない。それが父によって師の深い思いに気付かされ、弟子の心は変わったのです。出来事そのものは変わらなくても、「捉え方」が変わったことで、未来が開けたのです。  

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2018年07月10日

理想に向かって生きよ

 山間地域の奈良・吉野郡には、万葉集にも詠まれた美しい景色が多く見られます。その風景を彩る一つに吉野杉があります。日本三大人工美林の一つにも数えられています。
 江戸時代の儒学者・新井白石と国学者・本居宣長は、「杉」の語源に言及しています。白石は『東雅』で「杉はスグなる木也とみえたり。其木の直なるをいひし也」と、真っすぐに伸びることに由来すると考察。一方で、宣長は『古事記伝』で「須岐は進木なり(中略)ただに上へすすみ上る木」と。上へ進む「進木」と述べています。
 2人の論考はいずれも、「杉」の成長力への視点で共通しています。上へ上へと、真っすぐに進んで伸びていく――その姿は、何ものにもひるまず、理想に向かって生きよと、人間の生き方を教えているかに思えますね。  

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2018年07月09日

静かなブーム

 近年、「社歌」が静かなブームだそうです。新たに制作する企業が増えており、社員が作詞をしたり、ポップス調の曲にしたりと、親しみやすいものが多いという。
 ブームのきっかけは東日本大震災といわれます。働くことの意義や会社への帰属意識の変化など、会社と社員のあり方を改めて考える動きが広がり、社内のコミュニケーションツールとして注目されたといわれています。
 これまでの「会社のための社歌」から、社員が共感し、一体感を高める「社員のための社歌」が求められるようになりました。社会の変化の中で、自社の原点や目的観が問い直されているからでしょう。  

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2018年07月08日

勇気指数

 ポジティブ心理学の第一人者ロバート・ビスワス=ディーナー博士が、勇気のコツを指南しています。
 自分のためではなく、誰かのために動く。すると利己的な考えを乗り越えられ、〝勇気指数〟が高まる、と(児島修訳『「勇気」の科学』大和書房)うーん、納得!!  

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2018年07月07日

ボイジャー1号

 今から41年前、米NASAが無人宇宙探査機ボイジャー1号を打ち上げました。目的は惑星などの天体探査。太陽系を越えた初の人工物体として、今も果てなき宇宙空間を旅しています。
 同機には別の使命もあります。それは「宇宙人と出会うこと」。55種類の言語、115枚の写真、クラシック音楽やクジラの鳴き声……。地球外知的生命体に発見されることを期待し、地球のさまざまな情報を1枚の銅板製レコードに収めた物を積んでいます。
 今頃どの辺を飛んでいるのでしょうか?  

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2018年07月06日

幸福な人とは

 何をもって幸福とするか、一概には言えませんね。だが、誰しも幸福を望んでいます。
 幸福な人とは――カナダの心理学者ゲーリー・レカー博士は、その特徴として「前向き」「活動的」「社交的」等を挙げつつ、こう言い切っています。「幸福な人のようにふるまえるなら、あなたはより幸福になれるだろう」(レオ・ボルマンス著『世界の学者が語る「幸福」』西村書店)
 周囲を見回し、一番、幸せそうに見える人の行動をまねてみるという方法が思い浮かびますね。そこに、人生を豊かにするヒントがあるかもしれません。  

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