2012年02月08日

伝統

 300余年の歴史を誇る津軽塗。堅牢優美な姿で知られる日本最北端の伝統漆器です。その作業は全部で四十数工程、2カ月以上に及ぶそうです。
 工程の半分近くを費やす下地作り。そして漆を塗っては研ぎ、研いでは塗る。こうした労作業を繰り返すことで、どんな漆器にもひけをとらない堅牢さをつくりあげていきます。
 技法そのものは、時を経て変化してきています。しかし、そのなかで変わらないものもあります。それが伝統です。津軽塗では、常に使う人の立場に立って、「より使いやすく、より丈夫に、より美しい」ことを目標にし、「喜んでもらいたい」と願う心であるという(佐藤武司著『あっぱれ! 津軽の漆塗り』)

 『論語』のなかで、弟子の子貢が師の孔子に、こう質問しました。「人生で最も大切なことを一字で表すと、何でしょうか」。師は「それ恕か」、すなわち、「思いやりだ」と。「相手のことを思う」ためには、「相手の立場に立ってみる」ことだ。津軽塗では、この「心」を、師から弟子へ連綿と伝えてきました。

  

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2012年02月07日

アンリ・デュナン

 19世紀の「偉大な業績、偉大な着想の一つ」と評される国際赤十字の創設。直接のきっかけは、一人の青年が書いた一冊の薄い本だったそうです。
 その本を書いたのは当時、31歳のアンリ・デュナン。旅先でイタリアの統一戦争に遭遇しました。目の前の惨状は、それまで銀行家かつ経営者であった青年に衝撃を与えた。彼は痛ましい戦場での体験を綴り出版しました。
 そして本を手に、戦争の悲惨さを説いて回り、後に赤十字となる国際的な救援団体の創設を訴えたました。「国から国へ、首都から首都へ」「どんな階層もどんなつながりも、またどんな交友も」利用し、協力を要請した。恵まれた境遇を捨て去り、「全人生を投入」した(H・M・エンツェンスベルガー編『武器を持たない戦士たち』小山千早訳)

アンリ・デュナン
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=1255996
  

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2012年02月06日

扁鵲(へんじゃく)

 古代中国の扁鵲(へんじゃく)とは伝説の名医です。文献によると、彼は一個人ではなく、ある学派を指すとの説もあるらしいのですが、とにかく彼は(彼らは)広い知識を持ち、特に脈診が優れていたとされています。しかし、その扁鵲よりも、優れた医師がいたという。
 昔、魏の文侯が扁鵲に問うた。「君が兄弟三人あり、誰か最も善く医をなすや」と。扁鵲が答えた。長兄は、病気の兆候がないうちに病根を取り除く。故に、その名は家の外で知られることがない。次兄は、病気の兆候が、極めてわずかなうちに病を癒やす。故に、その名は知れても一地方を出ない。私なぞは、手術を施し薬を投じて派手に治療するので、その名は諸侯に及ぶと(巌本善治編『海舟座談』岩波文庫)
 兄たちの治療は、あまりに巧みすぎて、人々はその技量の高さに気づかない。それをちゃんと見抜いて、兄たちをたたえる扁鵲も、やはり優れた人だったのでしょう。

扁鵲(へんじゃく)
http://www.earth-bank.com/harikyu/hennzyaku.html
  

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2012年02月05日

魂のために生きよ!

 アドルフ・ブルガー氏をご存知ですか。ブルガー氏は第2次大戦中、ナチスのポンド紙幣偽造作戦に従事させられた、数少ない生存者の一人です。最愛の妻はアウシュビッツで殺されました。多くの親類・友人を失いました。自身は印刷工としての技術も戦争に利用されました。
 ブルガー氏は長い沈黙を経て、23年前から、自らの壮絶な体験と、生命軽視のイデオロギーへの警告を人に伝え始めました。それが、自分の責任であり、生きる理由だと悟ったのです。今、世界中の多くの人々が、彼の証言に耳を傾けています。

 トルストイの名作『アンナ・カレーニナ』の最終章で、幸福の絶頂に見える家庭の主人レーヴィンは問う。「一体、私は何者であるか? なぜ、ここにこうしているのか?を知ることなしに生きて行けるものではない」(北御門二郎訳)生きる意味の模索……それは人間ならではの営みです。彼を救ったのは、一人の農民の言葉でした。「魂のために生きよ!」。ブルガー氏もまた、生きる意味を見いだして、自身の人生を肯定できたのです。
  

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2012年02月04日

 雪のニュースが毎日報道されています。私の住む北名古屋でも今月2日に10センチほどの積雪がありました。雪道を歩くコツは歩幅を小さくして、上体を左右に揺さぶらないことだそうです。そして、手をポケットに入れないで、振りながら歩くことだそうです。“難事に取り組むコツも同じだ”と、ある哲学者は語っています。大事なのは、焦らずとも挫けず歩き続けることです。

 画家・東山魁夷氏の代表作は「道」です。しかし、氏の歩んだ道は平坦ではありませんでした。父の借財、戦争の苦しみ、両親、兄弟との死別……ある時は、西洋の巨匠の作品を見て圧倒され、自分の素質を疑い、絶望感にさいなまれた。友人が次々と画壇の人気作家になっていくことへの焦りも。そんな遍歴をたどった氏が描いた「道」とは、どんな道だったのでしょうか。
 それは、遠くにある丘の上の明るい空に向かって、ゆるやかに上り、右上がりに画面外へと続いていく道。氏は「私の心の中に、このひとすじの道を歩こうという意志的なものが育ってきて、この作品になったのではないだろうか」と(『泉に聴く』講談社文芸文庫)。“道は必ずどこかに通じる、否、通じるまで歩こう”。そんな強さが伝わってくるようです。
  

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2012年02月03日

答えは二つ

 希代の大実業家・松下幸之助氏が講演会で質問を受けました。“経営で最も大切なことを、一つあげるとしたら?”――いつも当意即妙の受け答えをする氏が、そのまま考え込んだ。そして、「あのう、二つではいけませんか?」と。
 氏が出した答えの一つが「人間観を確立すること」。二つ目が「宇宙の哲理を把握すること」だった(中島孝志著『すごい人脈!』)。その答えは、仏法の考えと深く共鳴しています。

中島孝志インタヴュー
http://mediasabor.jp/2009/12/post_732.html  

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2012年02月01日

素直な心

 「素直な心」。“経営の神様”松下幸之助氏は、それをモットーに掲げ、偽りのないありのままの心で人間社会を見つめ続けようとしました。

 本年はオリンピックイヤーです。シンクロナイズドスイミングの元日本代表コーチの井村雅代氏。4年前の北京オリンピックでは、中国チームのヘッドコーチに就き、悲願のメダル獲得に貢献しました。氏は「努力できる能力」のことを“心の才能”と呼び、こう教えています。「人間は理屈をこねずにやればうまくなる。だから自分の才能を信じなさい」(『あなたが変わるまで、わたしはあきらめない』光文社)
 うまくいかないと、つい、できない言い訳を探しがちです。しかし、コーチや先輩のアドバイスを素直に受け入れ、実践する選手は、自身の壁を破れるものです。

 釈尊の弟子に須梨槃特がいます。彼は、自分の名前すら忘れてしまうほど物覚えが悪かったそうです。しかし、釈尊の教えに素直に歓喜し、まじめに実践することにおいては、誰にも負けなかった。後に、普明如来の記別を受けたと説かれています。「素直な心」が大切です。  

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