2018年09月02日

妻と二人三脚で

 全国紙の記者を48歳で辞め、以来28年を、妻と二人三脚で日中交流にささげた大森和夫さんの手記があります。(『夫婦の「手作り・日中交流」28年』日本僑報社)
 夫妻は日本の歴史や四季等を紹介する日本語教材を自主制作し、210を超える中国の大学に寄贈。日本語作文コンクールも中国で16回開いてきました。その中で、中国の学生には、日本の国と人々を理解したいという熱意があり、互いを知ることが友好の基盤だと痛感したそうです。  

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2018年09月01日

心や思いは

 「確かに〈こころ〉はだれにも見えない/けれど〈こころづかい〉は見えるのだ」「同じように胸の中の〈思い〉は見えない/けれど〈思いやり〉はだれにでも見える」。これは詩人・宮澤章二さんの詩の一節です(『行為の意味』ごま書房新社)「こころ」を「つかう」。「思い」を「やる」――つまり、心や思いは、具体的な行為に表してこそ、相手に伝わるものでしょう。
 近代看護の礎を築いたナイチンゲール。教え子が、不規則で激務の仕事に就いていることを熟知する彼女は、手紙を送る際、いつもこう書き添えたという。“私が何かの役に立てるなら、遠慮せずに言ってください”。その心遣いに、弟子たちは困難に立ち向かう勇気をもらったに違いありません。  

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2018年08月31日

隠された特別な法などない

 作家のヴァン・ダインは、推理小説が守るべき「20の法則」を残しました。その一つ目は“全ての手掛かりは少しも隠すことなく読者に示されなければならない”。丹念に小説を読めば、自分にも犯人を発見できたのに――。なるほど、そのような読後感こそ推理小説の醍醐味といえましょう。
 釈尊の晩年のこと。弟子の阿難は、釈尊がまだ明かしていない法を説くことを期待していました。すると、釈尊は「わたくしは内外の隔てなしに(ことごとく)理法を説いた」と(中村元訳『ブッダ最後の旅』)
 これは、推理とは次元を異にしていますが、三世の幸福という根源的問いへの答えを、隠された特別な法などなく、全て明かし切ったことを釈尊は示したのです。  

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2018年08月30日

小さなサプライズ

 病院で闘病中の子どもたちに道化師(クラウン)が笑いを届ける「ホスピタル・クラウン」という活動があります。これに長年携わってきた大棟耕介氏は“B級サービス”を勧めています。
 例えば、正月に病院を訪問したら、道化師が子どもたちにお年玉を渡す。ただ中身は日本のお金ではなく外国の小額の紙幣。手にした子どもが“空想の世界旅”を楽しめるようにとの工夫なのだそうです。氏は身の丈を超えた1回のサプライズ、すなわち“A級サービス”より、継続可能な小さなサプライズの方が人の心を打つと強調しています(『道化師流コミュニケーションとサービス』生産性出版)  

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2018年08月29日

レジリエンス

 東日本大震災で「レジリエンス」という言葉が注目されました。災害などに対する回復力といった意味ですが、心理学の用語としても知られています。
 ストレスに対する精神的回復力、抵抗力――分かりやすくいえば「負けない心」ということです。久世浩司氏(ポジティブサイコロジースクール代表)が、このレジリエンスを鍛える技術の一つに「こころの支えとなる『サポーター』をつくる」ことを挙げています。
 「一人で孤独だと、どうしてもネガティブ思考に逆戻りしてしまいます」。だから「損得抜きで『叱咤激励』してくれる『サポーター』」が大切なのです、と。納得!!  

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2018年08月28日

スポーツ精神で処理していれば、戦争など起きない

 今、アジア大会が真っ盛りですが、日本の五輪初のメダル種目がテニスであることを知っていますか。1920年、アントワープ大会で、銀行員の熊谷一弥選手が銀メダルを獲得。日本にまだラジオ放送もない時代の快挙でした。
 その活躍を振り返ってみました。フィリピン等での国際大会で活躍した同選手を、先輩たちが支援し、米国へ留学させました。めきめき頭角を現し、五輪の前年に全米3位に。メダルは第1次世界大戦終結の2年後のことでした。
 当時の帝国主義の世相にあって、先見的な彼の言葉があります。世の中のできごとの全てを「スポーツ精神で処理していれば、戦争など起きない」、「スポーツの世界では、差別は一切ない」(『ライバルと成長』学研教育出版)納得!!  

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2018年08月27日

「育む」の語源は「羽くくむ」

 庭木にヒヨドリの巣が見えます。「枝切りをしている時に見つけたんだけど」と、家主が頭をかいた。夏の日差しを遮る葉まで除いてしまったらしい。
 既に卵は産み付けられた後。熱暑の中、親鳥はじっと卵を温め続けました。無事に生まれてほっとしたのもつかの間、今度は激しい夕立が。すると親鳥は羽を大きく広げました。ひなは水にぬれると体温を奪われ、命を落とすこともあるそうです。親鳥はひなを守る“屋根”をつくったのです。先日、晴れて巣立ちの時を迎えました。
 「育む」の語源は「羽くくむ」というそうです。「くくむ」は「包む」の古語。親鳥が羽でひなを包む姿に由来しています。万葉集にも「旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 吾が子羽ぐくめ 天の鶴群」とあります。海を渡った息子が寒さで凍えぬよう、母の私に代わり、その翼で温めておくれと鶴に願った歌だそうです。なんと風流な!!  

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2018年08月26日

宿駅

 「馬偏」であることから分かるように、かつて駅は、街道の主要な場所にあって、馬を乗り換えたり宿泊したりするために設けられた「宿駅」を指しました。リレー形式の長距離走を「駅伝」といいますが、これも宿駅を中継して公文書などを送り届ける駅伝制度に由来しています。明治時代に鉄道が導入された際、この宿駅から転じて、列車が停車する場所を「駅」と呼ぶようになったといわれています。
 旅客や貨物を扱うための停車場にすぎなかった駅にも近年、イメージに変化が見られます。「人々が活発に往来し、にぎわう」こと自体に価値が見いだされ、駅構内の商業施設である「駅ナカ」や、駅で開くコンサート「駅コン」などが注目されています。
 さらに、快適なドライブを応援し、地域活性化の拠点ともなる「道の駅」も、90年代から整備が進み、全国で千カ所を超えているそうです。  

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2018年08月25日

九人の乙女の碑

 日本の終戦記念日は8月15日ですが、当時の国内で、その後、約1週間も戦闘が続いた地がありました。樺太(現在のサハリン)です。
 ソ連軍が攻め込む中、持ち場を離れず職務を貫く、若き女性電話交換手たちがいました。「皆さん、これが最後です。さようなら、さようなら」との通信文を残し、彼女らが集団自決したのは8月20日の事でした。
 この言葉は、北海道の稚内公園にある「九人の乙女の碑」に刻まれています。  

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2018年08月24日

完全に理解できたわけではなかった

 天候不順が続いた東京に、夏の空気が戻った。きょうも暑くなるらしい。この日、昭和22年の8月24日も首都の残暑は厳しく、気温35・3度を記録しました。その炎天下を青年は、中野駅から、入信の儀式の会場へと歩きました。創価学会に入信する19歳の池田先生です。
 池田先生は、誘われて座談会に行きましたが、仏法の話を完全に理解できたわけではなかった。儀式の勤行は長く、慣れない正座に足もしびれました。ただ、戦争中、投獄にまで遭いながら信念を貫いた戸田先生の人格を信じてみようと決めた――池田先生の述懐からは、今の新入会の友と変わらない、初々しい青年像が浮かび上がってきます。  

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2018年08月23日

人生を決める大きな一歩

 「いつかは目標に通じる歩みを一歩々々と運んでいくのでは足りない。その一歩々々が目標なのだし、一歩そのものが価値あるものでなければならない」(山下肇訳)。これはドイツの文豪ゲーテの言葉です。
 ゲーテにとって、師・ヘルダーとの出会いは、人生を決める大きな一歩だったに違いありません。師の「該博な知識」「深い見識」に魅了されたゲーテは、文学理論等を学び、視野を大きく広げました。
 ヘルダーの教え方は厳しかったようです。ゲーテの意見に見えや虚飾を感じると、容赦なく辛辣な言葉を投げつけました。だがゲーテは、自己満足や虚栄、高慢など心中に巣くっていたものが厳しい訓練の中で抑えられた、と後に感謝しています。(『ゲーテ全集9』潮出版社)  

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2018年08月22日

新鮮だった

 都会に住む少年が、山村にある親戚宅で夏休みを過ごしました。その思い出をつづった絵日記にこう綴ってあります。
 「耳元に蚊が飛ぶ『プーン』という音をはっきり聞きました」。とかく現代社会は騒々しい。外に出れば、雑踏する街。家にいても家電製品や携帯電話の多様な電子音。そんな日常から離れた大自然の中で耳にした、虫の羽音や小川の瀬音が少年には新鮮だったのです。
 心静かに耳を澄まして、じっと待つ。そうすることで、ようやく聞こえるものがあります。  

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2018年08月21日

新聞の存在に驚きました

 万博に日本が初出展したのは、150年前の1867年(慶応3年)の事です。開催地パリに渡った代表団の中に、実業家の渋沢栄一がいました。
 彼は他国の文明の中でも、特に新聞の存在に驚きました。「三世ナポレオンが試みた演説の如きも翌朝の新聞に報道され(中略)直に内容を知る事が出来ました」「新聞紙と云ふものは小にしては世間万般の出来事より、大にしては国家緊要の重要問題に至る迄、一々之れを報道して世間一般に広く知らしめると云ふ誠に面白いもの」と(山本七平著『渋沢栄一 近代の創造』祥伝社)納得!!  

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2018年08月20日

朝顔

 朝顔は英語で「モーニング・グローリー(朝の栄光)」という名です。名前からして、「朝になると咲く花」と思いがちですが、実は、「夜明け前」に花を開かせることが多いそうです。
 開花時刻を決めるのは「前日の日没時刻」。品種によって異なるものの、日が暮れてから8~10時間後に開花する性質を持つそうです。朝の光や気温の高さによってではありません。夜の闇や気温の低下こそが、開花を促す要因ともいえるそうです。
  

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2018年08月19日

楽をしたい

 脳神経外科医の築山節氏によれば、脳の司令塔である前頭葉の働きが低下すると、“楽をしたい”という脳の原始的な欲求を抑えられなくなると発言しています。
 その根拠として、前頭葉の働きを高める方法の一つとして、氏は特に「家事」の有効性を強調しています。例えば料理や片付けは「選択・判断・系列化」の連続であり、それを自主的に行うことで前頭葉の働きが活発になり、主体的な行動につながるそうだ(『脳が冴える15の習慣』NHK出版)へー、そうなんだ。  

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2018年08月18日

逆境を好機へ変える知恵

 少子高齢化、人口減少が急速に進む日本社会です。時代の変化をどう読み、先手を打つか――さまざまな団体や企業が、生き残りを懸けて必死の努力を重ねています。
 今、多くの自治体が直面する課題が公民館など公共施設の維持です。かつて盛んに造られた「ハコモノ」は維持費等がかかり、財政を圧迫します。しかし、神奈川県の秦野市は逆転の発想で、この「お荷物」を「宝の山」へと変えました。
 例えば市役所の敷地内にコンビニを開設。賃料が入るとともに、市役所の利用者の利便性向上にもつながりました。また、保健福祉センターの空き会議室を民間に貸与。市民のための「パソコン教室」などが開設され、その使用料は施設の維持管理費に充てられています。こうした改革で、財政状況を大きく改善できたそうです。
 資源や財源は有限ですが、人間の知恵は無限です。どんな悪条件でも、必ず活路は開けます。大事なのは「時代の先を見る目」と「逆境を好機へ変える知恵」なのです。  

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2018年08月17日

ビタミンJ

 大阪教育大学教授の園田雅春氏は、野菜や果物を食べてビタミンを摂取するように、子どもの自尊感情は、周囲から掛けられる“プラスの言葉”で育つと説いています。このプラスの言葉を、氏は自尊感情の頭文字をとって「ビタミンJ」と呼んでいます。
 子どもは、初めから自分に自信を持っているわけではありません。「ビタミンJ」は、自分を認め、信じ、励まし続けてくれる他者との関わりによって、時間をかけて育まれるものなのなのです。  

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2018年08月16日

愛する家族を大切にする

 少年は、指で種子に触れると、たちどころに花を咲かせてしまうという不思議な力を持っていました。「花って、さいなんがおこるのをふせぐんだよ」と少年は言っていますが、父は兵器工場を営んでいたのです。
 そこで少年は、完成した武器に種を忍ばせ、つるを絡み付かせて使い物にならないようにしました。少年は花で戦争を止めました。その時、父は気付いたのです。“わが子を愛しつつ、孤児を生み出す大砲を作るのは矛盾している”と。父は花を育てる事業に転換し、街を潤したのです(モーリス・ドリュオン著、安東次男訳『みどりのゆび』岩波少年文庫)
 愛する家族を大切にするという気持ちと、他人の犠牲や不幸の上に自分の幸福を築かないという信念が融合するとき、平和の礎は強固となります。童話は優しい言葉遣いですが、深い哲学を訴えているのです。
  

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2018年08月15日

感謝の人に

 仏教説話を一つ。ある日、サッピという王が“変装”して城下へ。途中、靴直しの老人に質問しました。「世の中で一番楽なのは誰だろう」。老人は答えました。「王様ですよ。皆、言うことを聞くし、国民は何でも献上する。こんな楽な商売はない」と。
 王は一計を案じました。老人を酒に酔わせ、眠っている間に宮中へ運び、「この者を王とせよ」と。目覚めた老人は、立派なベッドや服に驚嘆。「役人がお待ちしています」と、言われるがまま玉座へ。無数の政務が押し寄せるが、さっぱり分からない。疲労で美食も喉を通らず、日に日に痩せ衰える。再び酒を飲まされ、城下に戻った老人。「王様になった夢を見たけど、すっかりまいった」と語りました。
 人の苦労は表面だけでは分からないにもかかわらず、恵まれた境遇の人を見ると、つい「うらやむ」感情が湧いてしまいます。だが、「うら」(心の意)が「病む」との語源通り、実はあまり健全なものではないのです。
 うらやむ心が出るのは、自身の中の「感謝」が薄れている時でもあります。感謝の人に愚痴や不満はありません。周囲への感謝を忘れず、自身の使命に生き抜いていきたいものです。
  

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2018年08月14日

生徒のための行動

 フランスの中等教育機関の教師だったジュール・ラニョーは、人生を教育にささげました。その授業は知識を与えるだけでなく、思索することを重視。生徒のための行動を惜しまなかった彼を、多くの若者が慕った。その一人が哲学者アランです。
 病弱だったラニョーは、42歳の若さで生涯を閉じます。彼の「忠実な弟子」と公言していたアランは、ラニョーの講義草稿を出版し、師を高らかに宣揚しました。作家アンドレ・モーロワは「アランはつねに偉大だが、師ラニョーについて語るとき、かれはつねにもまして偉大である」(佐貫健訳)と言っています。
  

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