2014年08月14日

ひたむきな歩み

 「吾、十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず……」。これは有名な孔子の人生訓です。しかし、これを裏から読むと面白い光景が見えてくる、と中国古典研究者の守屋淳さんは語っています。
 つまり、孔子でさえ十四歳までは学問に志さなかった。二十九歳までは自立できなかった。三十九歳までは惑いっぱなしだった……。孔子の偉大さは「常に、自分の弱点を自覚し、それを克服しようと努力し続けた」この点にあるのでは、と守屋さんは考える(『「論語」に帰ろう』平凡社新書)
 人間はいくつになっても“未完成”なのです。孔子も、そうでした。六十歳近くまでは他人の忠告を素直に聴けず、七十歳近くまでは欲望のままに振る舞うと周りに迷惑をかけてしまったというのだから。
 とはいえ、彼の生涯を一貫して彩るものは、学問に発憤しては食事も忘れ、道を楽しんでは心配事も忘れ、「老いの将に至らんとするを知らざるのみ(やがて老いがやってくることにも気づかずにいる)」(金谷治訳注『論語』岩波文庫)というほどの、ひたむきな歩みでした。  

Posted by mc1460 at 11:41Comments(0)TrackBack(0)