2016年04月06日
まず机に座ること
勉強は「強いて勉める」と書くように、進んでやる人はあまりいません。これも、はかどらせるコツは、まず机に座ること。歴史学者のトインビー博士が、毎朝9時ごろには必ず机に向かうことを日課にしていた話は有名です。何事も、やってみる、動いてみることで、開けること、身につくことがあります。
2016年04月05日
本心からの言葉
〝プレゼン術〟なる説得の技法が世に花盛りですが、技巧を凝らしても空疎な話もあれば、難しい表現は何もないのに、心を打つ話もあります。
たとえば、テレビの映画番組で長く解説者を務めた水野晴郎さん。名作「シェーン」に感動して、思わず口にした「いやあ、映画って本当にいいもんですね」。思いをそのまま表したこの言葉が視聴者を引きつけ、水野さんの決めゼリフになりました。
台本をもとに演じる役者にも、似たことがいえます。名優・笠智衆さんの、淡々としながら、人の心に染み入る演技について、同じ俳優の小林薫さんが言っていました。「言葉になる以前のところは、無理にドラマチックに演じようと考えなくても、そこに自分が身を置けば自ずと出てくるんですよね」と。
人の心を動かすために、最も大事なのは言葉の巧みさではない。混じり気のない、本心からの言葉であるかどうか。評論家の加藤周一さんの言にこうありました。「ほんとうに信じていることと、信じていると信じようとしていることとは、違う」と(『羊の歌』岩波新書)
たとえば、テレビの映画番組で長く解説者を務めた水野晴郎さん。名作「シェーン」に感動して、思わず口にした「いやあ、映画って本当にいいもんですね」。思いをそのまま表したこの言葉が視聴者を引きつけ、水野さんの決めゼリフになりました。
台本をもとに演じる役者にも、似たことがいえます。名優・笠智衆さんの、淡々としながら、人の心に染み入る演技について、同じ俳優の小林薫さんが言っていました。「言葉になる以前のところは、無理にドラマチックに演じようと考えなくても、そこに自分が身を置けば自ずと出てくるんですよね」と。
人の心を動かすために、最も大事なのは言葉の巧みさではない。混じり気のない、本心からの言葉であるかどうか。評論家の加藤周一さんの言にこうありました。「ほんとうに信じていることと、信じていると信じようとしていることとは、違う」と(『羊の歌』岩波新書)
2016年04月04日
現在の「鶴橋」
「猪甘津(いかいつ)に橋をわたした。そこで、そこを名づけて小橋といった」(『日本書紀Ⅱ』井上光貞監訳、中央公論新社)。「猪甘津」は、現在の大阪市内にあった港のことです。ここに架けられた橋が、文献に登場する“日本最古の橋”といわれています。
江戸時代、「八百八橋」と称されるほど、大阪には多くの橋がありました。京橋、淀屋橋、心斎橋――今でも「橋」のつく地名が多く残っています。特徴的なのは、橋の多くが、町人たちが自ら費用を捻出してできたということです。
「日本一明るい経済新聞」編集長の竹原信夫氏は、大阪の特色について、“自分たちで何とかしようやないか”という発想と行動だと指摘しています。庶民がエネルギッシュで、誰に何を言われても諦めない力に溢れている――それが大阪だと。
冒頭の「猪甘津」の橋は、後に「つるのはし」と呼ばれ、現在の「鶴橋」となっています。
江戸時代、「八百八橋」と称されるほど、大阪には多くの橋がありました。京橋、淀屋橋、心斎橋――今でも「橋」のつく地名が多く残っています。特徴的なのは、橋の多くが、町人たちが自ら費用を捻出してできたということです。
「日本一明るい経済新聞」編集長の竹原信夫氏は、大阪の特色について、“自分たちで何とかしようやないか”という発想と行動だと指摘しています。庶民がエネルギッシュで、誰に何を言われても諦めない力に溢れている――それが大阪だと。
冒頭の「猪甘津」の橋は、後に「つるのはし」と呼ばれ、現在の「鶴橋」となっています。
2016年04月03日
音楽のもつ力
音楽は、ただ快楽を与えるものではない。精神を高みに導いてくれるものである。古代ギリシャ以来、多くの哲学者が、この音楽のもつ「道徳の力」「教育の力」を論じてきました。
南米ベネズエラに、35万人の青少年が参加する、「エル・システマ」という音楽教育の運動があります。子どもたちには、楽器が無償で貸与され、音楽の知識を学びます。演奏や合唱に打ち込むことで、豊かな感情表現や協調性、規律性を身に付けていく。経済格差が大きく、貧困家庭の多い同国にあって、子どもたちが犯罪や薬物に手を染めることを防ぐのに役立っているそうです。
南米ベネズエラに、35万人の青少年が参加する、「エル・システマ」という音楽教育の運動があります。子どもたちには、楽器が無償で貸与され、音楽の知識を学びます。演奏や合唱に打ち込むことで、豊かな感情表現や協調性、規律性を身に付けていく。経済格差が大きく、貧困家庭の多い同国にあって、子どもたちが犯罪や薬物に手を染めることを防ぐのに役立っているそうです。
2016年04月02日
「手」は、その人の「心」
決意を込めて、ぎゅっと拳を握る。親愛の情を込めて握手する。相手の肩をぽんとたたいて励ます。小さな孫の頭をなでる――それぞれの「手」には、それぞれの「思い」がこもっています。
この行為を思想家の柳宗悦氏の言葉を借りれば、「手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり」する、ということだろう(『手仕事の日本』岩波文庫)。「手」は、その人の「心」でもあるのです。
この行為を思想家の柳宗悦氏の言葉を借りれば、「手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり」する、ということだろう(『手仕事の日本』岩波文庫)。「手」は、その人の「心」でもあるのです。
2016年04月01日
危機を一気に打開した
初の国産旅客機「YS―11」の就航から、きょうで51周年です。日本の空を日本の翼で――国民の期待を集めた開発は、戦後復興を象徴する一大プロジェクトでした。
開発の最終盤、操縦に関する致命的な欠陥が浮上しました。国際的な権威を持つ米国の機関に不適格の判断を示され、計画は暗礁に。マスコミから批判され、受注契約も減少する。この最大の難局を打開したのは、若い一技術者でした。
彼が外国の航空雑誌を読んでいた時のこと。ある記事が目に留まった。本格的な技術論文ではなく、一般に市販される本の、操作性の改善方法について概説した、たった数行の記述でした。それは、経験豊富な先輩たちが、はなから選択肢からはずしていた方法でした。
だが、その数行に示された方法が、危機を一気に打開したのです。中心者の一人が述懐しています。「大学を出て、ほんの数年しかたっていない彼らだが、よく働いた。困り抜いているときだったから、見過ごしそうな数行にもピンと閃いたのだね」(前間孝則著『YS―11』講談社)
開発の最終盤、操縦に関する致命的な欠陥が浮上しました。国際的な権威を持つ米国の機関に不適格の判断を示され、計画は暗礁に。マスコミから批判され、受注契約も減少する。この最大の難局を打開したのは、若い一技術者でした。
彼が外国の航空雑誌を読んでいた時のこと。ある記事が目に留まった。本格的な技術論文ではなく、一般に市販される本の、操作性の改善方法について概説した、たった数行の記述でした。それは、経験豊富な先輩たちが、はなから選択肢からはずしていた方法でした。
だが、その数行に示された方法が、危機を一気に打開したのです。中心者の一人が述懐しています。「大学を出て、ほんの数年しかたっていない彼らだが、よく働いた。困り抜いているときだったから、見過ごしそうな数行にもピンと閃いたのだね」(前間孝則著『YS―11』講談社)
2016年03月31日
関西には
兵庫・姫路城では大改修が終わり、内部の一般公開が再開されています。「白鷺城」の別名にふさわしい優美な城は、大勢の人でにぎわっています。
千数百年にわたって天下の中心だった関西には、名城が集まっています。幕末の大政奉還の舞台となった京都・中京区の二条城、楠木正成ゆかりの大阪・岸和田城――。中でも商都・大阪の中心にある大阪城は105ヘクタールの広大な公園となり、存在感は絶大です。天守閣の展望台に上ると、北区の大阪駅や「梅田スカイビル」、阿倍野区の「あべのハルカス」、寝屋川の流れから、遠く生駒や六甲の山並みまで、四方を一望することができます。
千数百年にわたって天下の中心だった関西には、名城が集まっています。幕末の大政奉還の舞台となった京都・中京区の二条城、楠木正成ゆかりの大阪・岸和田城――。中でも商都・大阪の中心にある大阪城は105ヘクタールの広大な公園となり、存在感は絶大です。天守閣の展望台に上ると、北区の大阪駅や「梅田スカイビル」、阿倍野区の「あべのハルカス」、寝屋川の流れから、遠く生駒や六甲の山並みまで、四方を一望することができます。
2016年03月30日
ヒマワリ
東日本大震災の被災者が「疲れきった自分にエールをくれた“希望の花”」として、がれきの中から芽吹いたヒマワリ。その種は国内外に広がり、昨夏、震災の年に咲いたヒマワリから数えて5代目の「5世」が元気に開花しました。ヒマワリは一年草です。
被災者は語ります。「このヒマワリを、なぜ1世、2世、3世と数えるのか。例えば50世になり、子どもたちが『なぜ50世なの?』と尋ねた時、『これは50年前、大震災があって……』と震災の話ができる。世代をつないでいける」。震災の体験を未来への教訓にする、との強い意志を感じました。
被災者は語ります。「このヒマワリを、なぜ1世、2世、3世と数えるのか。例えば50世になり、子どもたちが『なぜ50世なの?』と尋ねた時、『これは50年前、大震災があって……』と震災の話ができる。世代をつないでいける」。震災の体験を未来への教訓にする、との強い意志を感じました。
2016年03月29日
百果の宗
各地で桜の便りが聞かれる今日この頃です。桜よりやや大きなナシの白花も、間もなく各地で咲き薫ります。中国では古来、「百果の宗」(果物の王)といわれ、ナシは食用のほか、薬用としても重宝されてきました。
日本でも炭化した種が静岡の登呂遺跡から出土し、『日本書紀』にも栽培の記録があります。現在、多くの種類が出回っていますが、明治後期から昭和初期までは、品種改良で誕生した「長十郎」が隆盛を極めました。この「長十郎」発祥の神奈川・川崎市では、今でも、北部で多様なナシの栽培が盛んだそうです。
日本でも炭化した種が静岡の登呂遺跡から出土し、『日本書紀』にも栽培の記録があります。現在、多くの種類が出回っていますが、明治後期から昭和初期までは、品種改良で誕生した「長十郎」が隆盛を極めました。この「長十郎」発祥の神奈川・川崎市では、今でも、北部で多様なナシの栽培が盛んだそうです。
2016年03月28日
心は工なる画師の如し
「心は工なる画師の如し」と仏典は説いています。
この言葉について、池田SGI会長は論じたています。「『心』は名画家のごとく、一切を自在に描き出していく。したがって、人生そのものが、『心』の描く『名画』である。『心』が創り上げる芸術である」と。
人間は、ささいなことで倒れる、アシのような弱い存在であるが、どんな嵐の中でも心の翼を自由に広げていける強さもまた、人間にはあります。鍵は、挑戦する勇気。その勇気の泉の源が、信心なのです。
この言葉について、池田SGI会長は論じたています。「『心』は名画家のごとく、一切を自在に描き出していく。したがって、人生そのものが、『心』の描く『名画』である。『心』が創り上げる芸術である」と。
人間は、ささいなことで倒れる、アシのような弱い存在であるが、どんな嵐の中でも心の翼を自由に広げていける強さもまた、人間にはあります。鍵は、挑戦する勇気。その勇気の泉の源が、信心なのです。
2016年03月27日
認知症ケア
フランスで考案された「ユマニチュード」と呼ばれる認知症ケアが関心を集めています。これは「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」を要素とするケアの技法です。
例えば、「見つめる」といっても、さまざまな見つめ方があります。車いすに乗る相手に対して「上から見つめる」ことは、「支配されている」感情を引き起こします。正面から、同じ高さで見つめることが何より肝要だそうです。
「ユマニチュード」の考案者であるイヴ・ジネスト氏は、この手法には、人と人との間に生まれた「絆」を根幹にする哲学がある、と強調しています。「その人がそこにいる、人間として存在しているということに、もう一度、立ち返る必要がある」(『ユマニチュード』角川oneテーマ21)と。
例えば、「見つめる」といっても、さまざまな見つめ方があります。車いすに乗る相手に対して「上から見つめる」ことは、「支配されている」感情を引き起こします。正面から、同じ高さで見つめることが何より肝要だそうです。
「ユマニチュード」の考案者であるイヴ・ジネスト氏は、この手法には、人と人との間に生まれた「絆」を根幹にする哲学がある、と強調しています。「その人がそこにいる、人間として存在しているということに、もう一度、立ち返る必要がある」(『ユマニチュード』角川oneテーマ21)と。
2016年03月26日
是非一読を
明治生まれの実業家・出光佐三氏をモデルとした歴史小説『海賊とよばれた男』(百田尚樹著、講談社)には学ぶべきことが多くあります。約100年前、小さな商店から出発し、一代で世界有数の企業に発展させた氏。その経営の根幹には「人間尊重」の哲学があります。
例えば、第2次世界大戦の敗戦で全てを失い、借金だけになった時、約千人の社員を一人も解雇せずに守りました。しかも社には出勤簿も定年制度もなかったというから驚きます。
社員のみならず、消費者を大事にし、会社の創業を支えた恩人を生涯、宣揚した。出光氏自ら、人間として立派に生きることを志し、利権を貪るような権威・権力とは断じて妥協しませんでした。読めば読むほど心がスカッとします。是非一読を!!
例えば、第2次世界大戦の敗戦で全てを失い、借金だけになった時、約千人の社員を一人も解雇せずに守りました。しかも社には出勤簿も定年制度もなかったというから驚きます。
社員のみならず、消費者を大事にし、会社の創業を支えた恩人を生涯、宣揚した。出光氏自ら、人間として立派に生きることを志し、利権を貪るような権威・権力とは断じて妥協しませんでした。読めば読むほど心がスカッとします。是非一読を!!
2016年03月25日
日常の中に真実を見る
画家のユトリロが描いた「パリ郊外」と佐伯祐三の描いた「パリ街景」。2枚の絵は、同じパリを描きながら、タッチが全く違います。
そこには、「見る」ことに生涯をかけた2人が、それぞれたどり着いた“はるかな境地”があると、詩人の内田良介さんが書いています。日常の中に真実を見るには――「眼前の事象に、常に自分の知っている以上の価値を見ようとする強い信念から始まる」と。
そこには、「見る」ことに生涯をかけた2人が、それぞれたどり着いた“はるかな境地”があると、詩人の内田良介さんが書いています。日常の中に真実を見るには――「眼前の事象に、常に自分の知っている以上の価値を見ようとする強い信念から始まる」と。
2016年03月24日
長所と短所
「あなたの長所と短所は?」。面接等で聞かれがちな質問ですが、準備なしで即答できるだろうか。
上越教育大学の森島慧名誉教授は、学生が「短所を挙げるのは得意でも長所は挙げられない」点を心配し、「大学は自分の長所を伸ばすためにある。なのに長所を知らずに何を学ぶのか」と問い掛けます。
短所ばかりという人はいません。どんな人にも長所はあります。限りある人生、短所ばかりに目を向けるより、長所を生かす挑戦を心掛けるほうが価値的でしょう。
また、短所と長所は往々にして裏表ともいえます。短所は、長所と捉え直すこともできるのです。「引っ込み思案」は「思慮深い」というように。
ただ、長所は自分で気付きにくいのも確かです。周囲の指摘が、長所に気付くきっかけになる場合も多いのでは。
上越教育大学の森島慧名誉教授は、学生が「短所を挙げるのは得意でも長所は挙げられない」点を心配し、「大学は自分の長所を伸ばすためにある。なのに長所を知らずに何を学ぶのか」と問い掛けます。
短所ばかりという人はいません。どんな人にも長所はあります。限りある人生、短所ばかりに目を向けるより、長所を生かす挑戦を心掛けるほうが価値的でしょう。
また、短所と長所は往々にして裏表ともいえます。短所は、長所と捉え直すこともできるのです。「引っ込み思案」は「思慮深い」というように。
ただ、長所は自分で気付きにくいのも確かです。周囲の指摘が、長所に気付くきっかけになる場合も多いのでは。
2016年03月23日
線路はつながった
岩手県を走る三陸鉄道の社員の手記、『線路はつながった』があります。これは、大震災の2日後、社長らが被災現場の確認に行った時の出来事です。津波で線路や駅舎は流され、立ち尽くしていると、いつ動くのかと、一人の市民が話し掛けてきたそうです。
聞けば、子どもが三陸鉄道で高校に通うのだという。鉄道の再開を待ち望む人がいると痛感した社長は、できる所から、一刻も早く走らせると誓った。部分開通を重ね、1年前の4月6日、全線復旧したのです。
聞けば、子どもが三陸鉄道で高校に通うのだという。鉄道の再開を待ち望む人がいると痛感した社長は、できる所から、一刻も早く走らせると誓った。部分開通を重ね、1年前の4月6日、全線復旧したのです。
2016年03月22日
大坂魂
NHKの朝ドラ「あさが来た」の原作本は「土佐堀川」ですが、今年は、大阪市の中心部を東西に流れる道頓堀川の開削から401年になります。私財をなげうって工事に尽力した町人・安井(成安)道頓を顕彰し命名したのは、当時の大坂城主で、徳川家康の外孫・松平忠明です。
織田信長が「天下一の境地」と呼び、豊臣秀吉が首府に定めた大坂ですが、戦火で灰燼と化してしまいました。その再興に、忠明は若くして手腕を発揮。庶民との触れ合いに努め、城の修復よりも区画の整理や水路の整備を優先しました。
近刊の『大坂誕生』(片山洋一著、朝日新聞出版)には、そうしたリーダーの姿勢とともに、「自分たちの街は自分たちで造り、そして守る」との信念で復興に力を注いだ、市井の人々の活躍も描かれている。著者はそれを「大坂魂」とたたえています。
織田信長が「天下一の境地」と呼び、豊臣秀吉が首府に定めた大坂ですが、戦火で灰燼と化してしまいました。その再興に、忠明は若くして手腕を発揮。庶民との触れ合いに努め、城の修復よりも区画の整理や水路の整備を優先しました。
近刊の『大坂誕生』(片山洋一著、朝日新聞出版)には、そうしたリーダーの姿勢とともに、「自分たちの街は自分たちで造り、そして守る」との信念で復興に力を注いだ、市井の人々の活躍も描かれている。著者はそれを「大坂魂」とたたえています。
2016年03月21日
ありがとう
卒業シーズンには「ありがとう」をよく耳にします。ある小学校の卒業式で、PTA会長が「多くの人に感謝を伝えよう」と、児童に次のような言葉を贈ったそうです。
まずは「ありがとう」の「あ」で、あの人、この人と思い浮かべる。「り」は隣人、地域の人に感謝する。「が」は学校の先生、職員に。「と」は友だちに。「う」は内の人(両親や祖父母、保護者)に……。そして、最初に戻って「あ」。あなたたち自身に、よく頑張ったと自ら礼を言い、褒めてあげよう――と。
まずは「ありがとう」の「あ」で、あの人、この人と思い浮かべる。「り」は隣人、地域の人に感謝する。「が」は学校の先生、職員に。「と」は友だちに。「う」は内の人(両親や祖父母、保護者)に……。そして、最初に戻って「あ」。あなたたち自身に、よく頑張ったと自ら礼を言い、褒めてあげよう――と。
2016年03月20日
アフリカーンス語
南アフリカ元大統領のマンデラ氏を長年取材したジョン・カーリン氏の著作『二人のマンデラ』(潮出版社、新田享子訳)。これは牢獄からの釈放後、民族の和解に尽くしたマンデラ氏の功績に光を当てています。
印象的なのは、旧体制に固執し、武力闘争も辞さない構えでいる白人の将軍らの心を、話し合いによって変えていくシーンです。マンデラ氏は自分の民族の言葉でも英語でもなく、いわゆる白人の言葉であるアフリカーンス語でしゃべりました。母語で話し掛けられた将軍は、次第に心の武装を解き、氏の人格に引かれていったのです。
氏がその言葉を学んだ場所は獄中でした。白人看守と話をするためだけではない。いつの日か釈放され、白人と共に新しい国づくりを進める時が来ると信じていたのです。その日のために学んだのです。白人の歴史や文学も、ひもときました。この他者のことを想像する姿勢こそが、融和の道を開いたのです。
印象的なのは、旧体制に固執し、武力闘争も辞さない構えでいる白人の将軍らの心を、話し合いによって変えていくシーンです。マンデラ氏は自分の民族の言葉でも英語でもなく、いわゆる白人の言葉であるアフリカーンス語でしゃべりました。母語で話し掛けられた将軍は、次第に心の武装を解き、氏の人格に引かれていったのです。
氏がその言葉を学んだ場所は獄中でした。白人看守と話をするためだけではない。いつの日か釈放され、白人と共に新しい国づくりを進める時が来ると信じていたのです。その日のために学んだのです。白人の歴史や文学も、ひもときました。この他者のことを想像する姿勢こそが、融和の道を開いたのです。
2016年03月19日
ぞうさん
童謡「ぞうさん」で有名な詩人、まど・みちお氏が亡くなって2年が過ぎました。氏にはゾウを歌った別の詩があります。1994年、85歳の時に故郷の山口県徳山市(現・周南市)を訪問。動物園のゾウを見て即興で作りました。「とくやまの/まるみみぞうさん/まあるい おみみで/まあるい ちきゅうのうた/きいているよ……」と。
やや小ぶりなマルミミゾウはアフリカゾウの亜種とされていましたが、近年の研究で、別種に分類すべきと指摘されています。皮肉なことに、徳山のマルミミゾウは、DNA鑑定の結果、まど氏の来訪15年後にアフリカゾウと判明したそうです。
森林ゾウともいわれるマルミミゾウは、環境破壊や密猟で激減し、現在、絶滅危惧種に指定されています。種の分類はどうあれ、自然との共生、命の掛け替えのなさを教えてくれる詩の心は変わりません。
やや小ぶりなマルミミゾウはアフリカゾウの亜種とされていましたが、近年の研究で、別種に分類すべきと指摘されています。皮肉なことに、徳山のマルミミゾウは、DNA鑑定の結果、まど氏の来訪15年後にアフリカゾウと判明したそうです。
森林ゾウともいわれるマルミミゾウは、環境破壊や密猟で激減し、現在、絶滅危惧種に指定されています。種の分類はどうあれ、自然との共生、命の掛け替えのなさを教えてくれる詩の心は変わりません。
2016年03月18日
特技
池田SGI会長が「最後の事業」と強調する教育。それは教職関係者だけの“特技”ではありません。「教育のための社会」を実現するには、学校、家庭、地域、行政などが一体となり、総合的に人材育成していくことが必須でしょう。
子どもの意欲や魅力、才能を引き出し、未来をデッサンするのが教育です。周囲からエールを送る大人は、陽光を注ぎ、潤いを与えて、若芽の成長を見守っていきたいものです。
子どもの意欲や魅力、才能を引き出し、未来をデッサンするのが教育です。周囲からエールを送る大人は、陽光を注ぎ、潤いを与えて、若芽の成長を見守っていきたいものです。