2017年09月27日

電話

 作家の赤川次郎氏は、時代設定をしないで書くことを常としていました。そんな氏の筆を泣かせたのが、時代とともに移り変わる「電話」だったそうです。
 10円硬貨でかけるダイヤル式の公衆電話は、ほとんど姿を消し、電話はとうに持ち歩く時代。氏は言う。「携帯電話っていうのは、本当に小説を変えてしまいました。携帯電話があれば、『すれ違い』なんてないですから」(阿刀田高編『作家の決断』文春新書)
 電話ボックスも、めっきり存在感がなくなりました。だが、震災被災地の岩手県大槌町を訪れると、小高い丘の上にある、白いそれが目に留まることでしょう。中には、線のつながっていないダイヤル式の黒電話が。「もう会えないけれど、今も心の中にいる大切な人に、あなたの気持ちを伝えてください」との思いで、同町に住む男性が設置したものでした。
 どんな気持ちで、訪れた人は受話器を手にしたのでしょう。電話の横に、訪問者が書き残したノートがあります。「ケンカしたまま別れた父と話しました。やっぱり、ありがとうしか言えないものですね」。実に多くの人が「ありがとう」と記しています。
 人の心に残した感謝は、良き人生を生きた証しであり、感謝は、生死を超えて人の心を温かく結ぶ。時代は変われど、この道理が変わることはないのです。  

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2017年09月26日

あなたは何色ですか?

 「平和」と聞いて何色をイメージしますか? ある人は「黄色」と言いました。「明るいイメージだから」。ある人は「空色。戦争が終わって飛行機が飛ばなくなったというか、空襲警報が鳴らなくなった。その時の青空」と。
 「グリーン」と答えた人もいました。「世界で初めて広島に原爆が投下されて、何もなくなってしまったところから、草木もなかったのに、緑が生えてきて、今、このように素晴らしい広島に復興して、たくさんの町にも緑があるので……」と。あなたは何色ですか?  

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2017年09月25日

かけがえのない空間

 病気、要介護、障がいなど、人生の困難の渦中にある人は、人に支えられるだけの存在でも、ましてや、人より劣った存在でもない。その人生経験、挑戦する姿そのもので、人に希望を与えられる尊い存在です。
 看護、介護の現場こそ「人間の尊厳」を、頭ではなく、心に刻み付ける、かけがえのない空間なのであると、私は思います。  

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2017年09月24日

仕事は忙しい人に頼め

 「仕事は忙しい人に頼め」とは、ビジネスの鉄則の一つです。多忙なのは、周囲の評価が高い証拠だし、時間の活用にたけているので、暇な人よりかえって反応が早く、的確だからなのです。「最もいそがしい人こそ最も暇が多い」という英語のことわざもあるほどです。同じ1日24時間でも、無為に過ごすこともあれば、3日、1年、果ては一生分の価値を生み出すことも可能です。
 秋分を越えると、年末へ向けて、時が駆け足で進んでいきます。だからこそ、祈り、智慧を出して、朗らかに「時間革命」に取り組みたいものです。  

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2017年09月23日

一本の線

 「文は人なり」といいますが、芸術の世界にも「絵は人なり」という考え方があります。中でも日本画は「絵の品格」が重んじられます。絵に品があるかどうかは、一本の線を見れば分かるのだといわれています。
 日本画家で、女性として初の文化勲章を受章した上村松園も「一本の線」にこだわった一人です。「線一つでその絵が生きも死にも致します」。描き出される人や物の内面を、線で表現することに重きを置き、若い画家に線を描く鍛錬を促しました(『青帛の仙女 上村松園』村田真知著、同朋舎出版)  

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2017年09月22日

進むべき道

 夏目漱石にこんな言葉があります。「ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事が出来るのでしょう」(『私の個人主義』講談社学術文庫)
 凪ばかりの人生はありません。必ず嵐の時があります。苦難の中で自身を鍛え、宿命を使命に変えゆく中に、成長と充実があることを肝に銘じたいものです。  

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2017年09月21日

有言実行

 「もう年だから」というより「まだ何歳だ」というほうが、同じ年齢でも、気力、活力が違ってくるそうです。
 日ごろ口にする言葉は、他者だけでなく自分にも影響を与え、行動にも表れてくる。脳科学の見地からも明らかだという指摘もあります。
 「有言実行」という熟語があります。「不言実行」から派生した言葉ですが、“本家”よりも用いられるようになりました。黙々とやるよりも“宣言して実行する”ほうが価値的という実感があるからでしょう。言葉は行動の第一歩であります。  

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2017年09月20日

岸壁の母

 「岸壁の母」「浪花節だよ人生は」など、昭和を代表する演歌を次々に生み出した作詞家の藤田まさと氏。心に染みる名曲の数々は、どんな思いでつづられたのでしょうか。
 氏が、作詞の心構えについて述べています。「詩はね、美辞麗句を格調高く並べ、百万人のために作ろうとしてもダメなんだ」「たったひとりの悩み、悲しみ、訴えを書き得てはじめて百万人が耳を傾けてくれるし、泣いてくれるんだ」(星野哲郎著『歌、いとしきものよ』岩波現代文庫)と。  

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2017年09月19日

全国学力テスト

 大阪大学大学院教授の志水宏吉氏(教育学博士)が、昭和と平成に実施された全国学力テストの結果を分析しています。
 学力の差は、かつては「都鄙格差」に由来しました。端的に言えば、都会の子の学力は田舎の子よりも高く、都市の経済・文化的水準の高さが密接に関連していたのです。
 一方、平成のテスト結果からは“子どもと家庭や近隣社会、学校とのつながりが豊かな地域では、概して学力が高い”との仮説が浮かび上がったそうです。格差克服の手だてとして、氏は、地域あげての「つながりの再構築」を提唱しています(『「つながり格差」が学力格差を生む』亜紀書房)  

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2017年09月18日

庶民の知恵

 道頓堀にあるグリコの看板は、大阪の定番の観光スポットです。この看板が設置されたのは1935年(昭和10年)のこと。現在は6代目で、14万個のLED照明が、夜の街を明るく照らしています。
 この看板のネオンが、実は51年前のきょう、阪神甲子園球場で行われた創価学会の“雨の関西文化祭”に一役買いました。この文化祭の演目の一つに、2万2000人の「動く人文字」がありました。だが当初、秒単位での変化がうまくいかず、担当者らは悩んだそうです。
 ある日、責任者の一人が、道頓堀川を流れる一本の竹ぼうきを見ました。その動きに合わせるかのように、川面に映るグリコのネオンの動きも変わりました。“これや!”。棒を持った役員が走り、目の前を通過するタイミングで各自が板をめくることで、動く人文字が可能となったのです。
 「一本の棒」という素朴な方法で難題を解決したところが、“庶民の都”らしいですね。文化祭が「常勝関西の金字塔」となったのは、どんな苦難をも勝ち越える不屈の魂に加えて、自在に発揮された庶民の知恵があったからです。  

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2017年09月17日

使っても減ることがない

 アメリカ・ボストン近郊のケンブリッジにある同大学の人気スポットは、ジョン・ハーバード像です。理由は“銅像のつま先に触れれば幸運が訪れるから”。学問や将来の成功を思い描いて、手を置く人が絶えないそうです。
 「頭の良くなる薬はありませんか」。創価学会の池田SGI会長がユーモアを交えて、ノーベル化学・平和賞受賞者のポーリング博士に聞きました。博士は「自分で努力するしかないでしょう」。人生は挑戦の連続。楽して得をするより、努力できる自分を築くことが財産になる。しかもその財産は、使っても減ることがない。「苦労して鍛えられた頭脳や人格は光り輝く」と池田SGI会長は語っています。  

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2017年09月16日

渋沢栄一

 「日本の資本主義の父」といわれた渋沢栄一が残した言葉の一つに「何もせずに暮らすは一つの罪悪である」とあります。玄孫に当たる渋澤健氏は「事なかれ主義の生活で満足することは自分中心で、実は自分たちの生活が、いかに経済社会の活動で支えられているか、という視点が欠けています」と解釈しています(『渋沢栄一 100の金言』日経ビジネス人文庫)。
 渋沢栄一は自ら行動を起こそうとしない態度は、社会への忘恩に通じると手厳しい。人間は一人では生きられない。社会的生き物であり、周囲との良好な関係の中に、幸福を見いだす存在である。そのことを考えれば、恩を感じ、恩に報いることは、単なる道徳でなく、人間の実存、生の本質と深く関わっていることが分かります。  

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2017年09月15日

秋の季語

 雨が降り、夏の空気を洗うごとに、秋の気配が深まっています。稲刈りは、早生の収穫が終わり、季節と歩みを合わせて、中稲、晩稲の刈り取りへと続いていっています。
 刈り終わった稲株に目をやると、いつのまにか新たな稲が生えています。これを「ひつじ(穭・稲孫)」と言い、古今集にも歌われ、秋の季語でもあるそうです。枯れた田になお、「ひつじ」の緑を生み出す自然の力を思います。  

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2017年09月14日

守ることの難しさに

 中国の古典『貞観政要』に「創業は易く守成は難し」とあるように、古今東西、事業を継ぎ、守ることの難しさに変わりはありません。
 大和ハウス工業の樋口武男会長の話。有利子負債1400億円を超すグループ会社の再建を命じられるなど、創業者・石橋信夫氏から何度も試練を与えられ、鍛えられた。そうした薫陶への感謝を、氏は繰り返しました。
 石橋氏の人材育成の哲学は「大きい大根を間引きする」ことだったと、樋口会長は綴っています。大きい大根を抜けば、か細い大根に栄養が回り、育ち始める。大きい大根は、あえて開墾していない、やせた土地に植え替える。それでも、再び力強く育っていくという考えです。(日本経済新聞の連載「私の履歴書」)  

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2017年09月13日

人は“いざ”という時

 人は“いざ”という時、心一つに試練に立ち向かいつつ、他者のためにも尽くせる、“善なる力”を備えています。阪神・淡路大震災では、ボランティアの存在が注目され、東日本大震災では、どんな災害にもくじけず、立ち上がる、人間と社会の「レジリエンス」(回復力、抵抗力)の大切さが注目されました。

 自然の持つ巨大な破壊力の前に、「一人」では無力かもしれないが、支え合いの心を結集することで、未来を創造していける人間の強さを再発見したのです。

  

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2017年09月12日

人に前進する勇気

 近代五輪の父クーベルタンは「世界じゅうの若者たちに友好と博愛の精神に包まれた出会いの場を」(柴田元幸・菅原克也訳)と語りました。五輪の歴史は201年。2度の世界大戦による中止、東西冷戦によるボイコットの応酬などの危機を越え、平和の祭典へと発展しました。
 創価学会の池田SGI会長が各国の駐日大使と会談する際、アジア初となった前回の東京五輪も、しばしば話題になったそうです。モンゴル大使が日本に目を向けたのは、体操選手として東京五輪に参加した中学の先生が、当時、国交のなかった日本について興味深い話をしてくれたからです。
 ポーランド大使は大学で日本史や日本文学を学び、卒業したのが東京五輪の年。海外渡航など夢のまた夢で、友人と「飛行機が無理なら、自転車で日本へ行こうか」と冗談まじりに話したと振り返りました。五輪は、若い心に橋を架ける力を持っています。
 東京五輪の閉会式。その日、英領から独立したばかりのアフリカ・ザンビア共和国の旗が入場するや大拍手が。小説『新・人間革命』に描かれた友情の一こまが綴られています。
 日本には2020年という目標ができました。目標があるということ自体、人に前進する勇気を与えてくれるのです。  

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2017年09月11日

中間管理職

 上司に叱られ、部下からも責められる。中間管理職には、とかく悲哀のイメージが付きまといます。成果や責任があいまいになりがちなのも、「中間」の立場の特性といえるでしょう。
 いつの時代も、多くの中間リーダーは、自分のポストに応じて責任を取ります。この事実を踏まえ、作家の童門冬二氏は、豊臣秀吉の責任感について綴っています。秀吉は「分権というのは、トップの権限の一部を、ひとかけらとして受け止めたことなのだ。したがって、そのかけらについてはトップと同じ責任がある」と捉えていた、と(『名補佐役の条件』)
 どんな立場であっても、主君と同じ責任感をもって物事に取り組んできたからこそ、武将として戦果を挙げ、果ては天下人にまで上り詰めたのでしょう。  

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2017年09月10日

蘭学と英語

 体調を崩したので寝ようと思い、枕を探すが見当たらない。その時、もう1年近く枕で寝ていないことに、はたと気付く。若き日の福沢諭吉である。諭吉は蘭学の勉強に熱中し、床で寝ていたのです。
 福沢はある日、横浜の外国人居留地に出掛けました。街の看板を見ても分からない。聞くと、それは英語でした。諭吉は時代は今や英語だと思い知ったそうです。あれほど蘭学を猛勉強したことが役に立たない。諭吉の落胆は大きかったはずだが、学問の情熱を一層燃やし、翌日から英語の勉強を始めたことは有名な逸話です。
 「情熱」を表す英語の「パッション」には「受難」の意味もあります。先のエピソードを通して脳科学者の茂木健一郎氏は「情熱とは苦労することから生まれる」と記した(「何のために『学ぶ』のか」ちくまプリマー新書) 納得!!  

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2017年09月09日

大事を成すには

〝人が変われば、会社は変わる〟――経営コンサルタントで実業家の大久保恒夫氏は語っています。彼は、かつて業績不振に陥っていたユニクロ、無印良品等を再建させた立役者です。その経営手腕に注目が集まるのは当然です。
 企業は、利益を生み出すために存在します。業績の数字に注目するのは当然ですが、氏は数字よりも「小売業の仕事はお客さまに喜んでいただくこと」だと訴えています。
 その基本は、気持ちの良い「あいさつ」。現場を支える従業員の誠実な姿と行動で顧客に満足してもらい、喜んでもらう。それが店舗への好感となり、やがて成果もついてくると大久保氏は考える(『すべては人なんだ』商業界)
 難事業を目の前にすると、全てを変えなければ、と焦り、結局、全てが中途半端になる場合があります。大事を成すには、基本に徹し、身の回りの小事から変えていくこと――氏の実践は、それを教えています。  

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2017年09月08日

第1候補は京都に決定

 原爆をどこに落とすか。事前にアメリカで「標的委員会」が開かれたそうです。18都市から京都、広島、横浜、小倉、新潟に絞られました。第1候補は京都に決定。これ に猛反対したのがスティムソン陸軍長官でした。
 古都の文化的価値も考慮には入れたが、彼には別の思惑がありました。「京都に原爆を投下すれば全世界がアメリ カの行動をヒトラーの暴虐と同等であると非難するであろう」。近刊の『暗闘――スターリン、トルーマンと日本降伏』(中公文庫)に詳しいので関心のある人は一読を。
 著者の長谷川毅 氏はワシントン大学で博士号を取得し、米国市民権を持ちますが、「他の都市に投下することも暴虐行為であることには思い及ばなかった」と手厳しく述べています。   

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