2015年07月02日

よみがえってきた

 岩手県にある認知症高齢者のためのグループホームでの話です。施設は高台にあったため、津波の被害は免れました。だが、すぐ下の町は壊滅。10人ほどの入所者が静かに暮らす施設に、着の身着のままの百数十人の避難者が駆け込んできました。その中には、はだしのままの人も赤ん坊もいたそうです。
 停電、余震。そのなかで、入所者が心のバランスを崩し、叫んだり、外に出ていこうとしたそうです。騒然としたなかで迎えた翌朝――。ガスが使えず、古いかまどに火を付けようとするが、うまくいかない。その時、一人の認知症高齢者が上手に火を起こし、ご飯が炊けました。他の高齢者や職員も手伝い、避難してきた人にご飯を配る。温かいご飯を口にした子どもたちが初めて笑った。皆に生きる希望がよみがえってきたのです。
 どんな人にも、人を支える力がある。子らの笑顔は大人の希望となり、老いの経験は、若い人を助ける。支え、支えられて、人は生きている。震災時の経験を生かそうと、先の施設のある地域には、高齢者と子どもが触れ合う交流施設もできたそうです。  

Posted by mc1460 at 10:02Comments(0)TrackBack(0)つぶやき