2013年11月10日

微妙な情感

 共通語では言い換えのきかない微妙な情感を伝える方言がある、と言ったのは詩人の川崎洋さんです。たとえば、津軽弁の「あずましい」。これは、湯加減のほどよい風呂に、ゆったりと漬かった時などに思わず口に出る。心地よさ、ゆったり感、満足感などが結びついた形容だそうです。
 方言には、地域特有の歴史が紡ぎ出したぬくもりがあります。こうした言葉の“滋味”は、発する人が積み重ねた人生によることもあります。  

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2013年11月09日

人間とは何か

 「人間とは何か」。その探究は、あらゆる知的営みの根幹にあります。京都大学霊長類研究所の松沢哲郎所長も、チンパンジーに寄り添いながら、それを考え続けてきました。
 同研究所の実験・研究によると、チンパンジーの子どもは、人間の大人を超える記憶力を持つそうです。しかし、のっぺらぼうや、目のないチンパンジーの似顔絵を見せると、チンパンジーは顔の輪郭をなぞったりするだけですが、人間の子どもは、目などを描き加えるそうです。
 ここから、チンパンジーは〝目の前にあるそのもの〟を見ていますが、人間はそこにないものまで見ていることが分かる。と、松沢所長は結論しています。
 「チンパンジーは絶望しない」「それに対して人間は容易に絶望してしまう。でも、絶望するのと同じ能力、その未来を想像するという能力があるから、人間は希望をもてる。どんな過酷な状況のなかでも」と。(『想像するちから』岩波書店)  

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2013年11月08日

リンゲルマン効果

 「リンゲルマン効果」を知って見えますか? 判りやすく解説すると、綱引きで綱を引く人数が増えるほど、一人の出す力が減っていく……。「リンゲルマン効果」は「社会的手抜き効果」とも言います。「自分がやらなくても誰かがやるだろう」という気分に流されないことが、自分の力も、チームの力も、十全に発揮するための鍵となるのです。
 日本人として19人目となるノーベル賞受賞者・京都大学の山中伸弥教授は語っています。「一番になるつもりでやらない限り、二番にもなれません。オリンピックでも、金メダルを目指すからこそ、やっと銀メダルに手が届くこともあるでしょう。やはり金メダルを取るような準備が必要だと思います」と。最先端の科学研究をけん引する心意気が感じられます。  

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2013年11月07日

新語

 文化庁の国語世論調査によれば、「むかつく(腹が立つ)」は5割以上の人が使うそうです。「チョー(とても)きれいだ」(26・2%)、「がっつり(しっかり、たくさん)食べよう」(21・8%)のほか、「全然(とても)明るい」も2割の人が日常的に使うと答えています。そして、「全然」を「~ない」など打ち消しの語で受ける文法も、崩れつつあるそうです。
 言葉は時代とともに変化するものです。新語が次々に生まれ、用法も変わってきます。それはある程度、仕方のないことかもしれない。しかし問題は、状況や相手に応じて適切に使えるかどうかです。  

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2013年11月06日

グラミン銀行

 2006年。バングラデシュの経済学者、ムハマド・ユヌス氏と、氏が設立したグラミン銀行に、ノーベル平和賞が贈られました。
 当初、同銀行は専門家のほとんどが破綻すると断言していました。理由の一つは、貧困層の女性への融資は前代未聞だと。返済が滞るに決まっている、との声が相次いでいましだ。これらは、彼らの言う銀行の常識から逸脱していたからです。
  しかし、氏は自ら村へ足を運び、どのような仕事が始められるかを、一人一人と相談して決めていった。女性たちは、自分を信頼して融資してくれたことに涙し、喜々として働いた(猪熊弘子訳『ムハマド・ユヌス自伝』早川書房刊)。金利は決して低くはないが返済率は90%を超え、グラミンの手法は今、世界中に広がっています。
  地位や立場ではない。同じ人間として心を開き、信頼でつながっていく。その一つ一つの絆は小さいかもしれない。が、その輪が幾重にも広がる時、社会、時代を動かす大きな力となる事を証明しました。  

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2013年11月05日

電気自動車

 21世紀の乗り物として注目される電気自動車。その歴史は、実は古いのです。既に20世紀初頭、エジソンの発明で米国では電気自動車が町を走っていました。
 1300以上の特許を得た発明王エジソン。しかし彼は、少年時代は劣等生だったそうです。その彼の可能性を見いだし、才能を伸ばしたのが母だったことは有名な史実です。ある時、エジソンが教師に馬鹿にされ、落胆して帰宅。その姿を見た母は、すぐ学校に行き、わが子は落ちこぼれではない、と憤然と反論しました。
 「母はわたしが経験した人の中では最も熱心な人であった」とエジソンは回想しています。「自分が母にとって価値ある人物になり、その信頼が間違いでないことを示そうと決心した」(『エジソンの生涯』小林三二訳、東京図書)  

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2013年11月04日

生誕151年

 今年は、新渡戸稲造の生誕151年にあたります。新渡戸稲造は国際連盟事務次長を務めた、近代日本を代表する国際人です。
 新渡戸は若いころ、演説が大の苦手だったそうです。とにかく震えが止まらない。“聴衆はただの椅子”と思い込んでみるが、よく見れば、やはり人の顔。“聴衆は気心知れた友ばかり”と思ってみても、実際は面識もない人ばかり。“聴衆をのみ込んでやれ”と思うほど、自分がのまれる気がした――ユーモアも交え、赤裸々に述懐している(『新渡戸稲造全集』第10巻、教文館)  その彼が吹っ切れた瞬間がある。「演説を賞められたい、或は自分がよくいはれたいと色気があればこそ、恐れ戦くもの」「賞めるか、誹るかそれは他人のすることで、自分のすることは只ベストをするのみだ」。こう腹を決めた時を境に、演説の達人へと飛躍しました。
 「世間の毀誉褒貶(=さまざまな評判)は顧みない」と小説の登場人物に語らせたのは、同じく生誕151年の森鴎外。書斎にこもることを是とせず、幅広い交際を広げた鴎外ならではの一言です。  

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2013年11月03日

菊作り 咲き揃う日は 蔭の人

 菊薫る11月。作家の吉川英治氏の句に「菊作り 咲き揃う日は 蔭の人」があります。これは、咲き誇る大輪の一本一本に、丹精込めて育て上げた人の思いと、努力がこもっています。
 人間も、人に支えられていることを知れば、自分の命、人生は「自分のため」だけのものではなくなります。自分が“勝つ”ことが、誰かの喜びにもなると知った人は、より強く生きることができます。  

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2013年11月02日

友情

 「人間が一人でいるというのは、よくないことだ」「むしろ何事かをなしとげようと思ったら、他人の協力と刺戟が必要だ」(山下肇訳)。これは文豪ゲーテが晩年、青年に語り残した言葉です。
 彼は、戦乱や対立が渦巻く時代にあって、果敢に友情を広げたことで知られています。劇作家のシラー、歴史家のカーライル、詩人のプーシキンら、その交友は多彩でしだ。こうした人間交流の触発から、数々の名作が生み出されていったのです。
 ワイマール・ゲーテ協会のマンフレット・オステン顧問が述べています。「ゲーテにとって友情とは、生きる上で中心となるもの」だったと。  

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2013年11月01日

選り好み

 あいさつするにも人を選ぶという昨今です。人間関係の選り好みが目立ちます。幼児教育家の正司昌子さんは、こうした風潮の中、親が子にあいさつを教えるには「親自身が、自分の気に入った人にはあいさつするけど、気に入らない人にはあいさつをしない、といった姿を子どもに見せないこと」が大切と指摘しています。
 たしかに、気に入った相手だと気疲れもせず、確かに自分が楽でいられます。だが、気心の知れた人間関係に安住していたのでは、交友の幅が狭くなり、新たな出会いの機会も減りがちとなります。人間として磨き合う場も限られてしまいます。  

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