2013年11月04日

生誕151年

 今年は、新渡戸稲造の生誕151年にあたります。新渡戸稲造は国際連盟事務次長を務めた、近代日本を代表する国際人です。
 新渡戸は若いころ、演説が大の苦手だったそうです。とにかく震えが止まらない。“聴衆はただの椅子”と思い込んでみるが、よく見れば、やはり人の顔。“聴衆は気心知れた友ばかり”と思ってみても、実際は面識もない人ばかり。“聴衆をのみ込んでやれ”と思うほど、自分がのまれる気がした――ユーモアも交え、赤裸々に述懐している(『新渡戸稲造全集』第10巻、教文館)  その彼が吹っ切れた瞬間がある。「演説を賞められたい、或は自分がよくいはれたいと色気があればこそ、恐れ戦くもの」「賞めるか、誹るかそれは他人のすることで、自分のすることは只ベストをするのみだ」。こう腹を決めた時を境に、演説の達人へと飛躍しました。
 「世間の毀誉褒貶(=さまざまな評判)は顧みない」と小説の登場人物に語らせたのは、同じく生誕151年の森鴎外。書斎にこもることを是とせず、幅広い交際を広げた鴎外ならではの一言です。

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