2013年03月09日

素材の可能性

 栃木の有名な陶器の益子焼は、粘土の粒子が粗いため、重くて割れやすいそうです。しかし、醸し出されるその重厚さが、他に類を見ない魅力を生み出します。陶器に不向きといわれた粗い粒子の可能性を信じた先達の努力があって、益子焼が誕生したといます。
 大正時代、活動写真(映画)の弁士として名を馳せた徳川夢声がいました。夢声は他の弁士に比べ、決して多弁ではなかったそうです。だが、夢声は、凝縮された表現によって物語の魅力を最大に引き出し、「弁士業をまさに芸術の域にまで高めた」(都築政昭著『シネマがやってきた!』小学館)
 素材の可能性を見つけ、育もうとする心。対象の魅力を引き立て、花開かせる知恵。それらは芸術の世界に限った話ではありません。  

Posted by mc1460 at 11:15Comments(0)TrackBack(0)つぶやき