2016年06月25日

何を学び、導き出すか

 梅雨ですから仕方がありませんが、うっとうしい雨が続きますね。しかし、大地を潤し、実りをもたらす雨は喜びの源でもあります。甘雨、慈雨、瑞雨……辞書には「喜雨」という言葉もあるように。
 レオナルド・ダビンチはこんな寓話を書いています。――水は海にいるうち、ふと大気へ昇りたくなった。火に誘われ水蒸気となって空高く昇り、薄く冷たい空気の間に到着する。だが、そこで火に見捨てられる。縮み上がって一塊になり、天から墜落する。乾燥した土に飲まれ、高慢にも天に昇りたいと思った己の罪を悔いた(『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』杉浦民平訳、岩波文庫)
 科学者であり哲学者であった天才ダビンチにかかると、雨は分析の対象にも、物語の題材にもなります。同じ現象や風景も、人によって見え方は異なり、何を学び、導き出すかは違ってくるのですね。  

Posted by mc1460 at 11:35Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月24日

さらなる高みを目指した

 富士山をテーマにした詩歌や絵画はたくさんあります。中でも葛飾北斎の『富嶽百景』はおなじみですね。なんと、完成は70歳代の時でした。奥付に北斎は「八十才にしては益々進み九十才にして猶其奥意を極め」とつづっています。北斎がさらなる高みを目指したのも、富士と格闘した日々あったればこそでしょうか。  

Posted by mc1460 at 11:34Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月23日

沖縄慰霊の日

 今日、6月23日「慰霊の日」は沖縄県民にとって忘れることのできない特別な一日です。沖縄県民を対象にした地元紙などの共同調査では、86%の人が、沖縄戦の記憶を次世代に伝えたいと意欲を示しています。だが、県民の4人に1人の命が奪われた凄惨な沖縄戦は、体験者にとって、血が逆流するような、思い出したくない記憶です。語るのを拒む人、悲しみを心にしまったまま亡くなった人も多いのです。
 戦争は命を奪い、生き残った命にも、一生消えない傷を残します。その痛みに耐えながら、勇気を振り絞って語り残してくれた人々に応えて、平和を誓う「沖縄慰霊の日」としたいものです。  

Posted by mc1460 at 13:20Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月22日

「実り多き人生」へのヒント

 たくさんの実を結んだ植物の姿に、人は豊かな人生でありたいとの願いを重ねてきました。そうした思いを込めて、「実り多き人生を」と、祝いの席などでよく耳にするフレーズです。 
 植物の多くは、自分の花のめしべに同種の他の花の花粉が付くことで、実(種子)をつくります。そこで、同じ季節の、同じ月日に、一斉に花を咲かせるのです。時刻まで、開花を合わせる花もあるそうです。例えば月下美人は、夏の夜の午後8時ごろから10時ごろにかけて、次々と幻想的な白い花を咲かせます。植物たちの「仲間とのつながり」を大切にする生き方には、「実り多き人生」へのヒントが詰まっていますね(田中修著『植物のあっぱれな生き方』幻冬舎新書)  

Posted by mc1460 at 11:46Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月21日

最高の親孝行

 第35代横綱の双葉山が幕下時代、地方巡業で九州へ行き、実家に1泊しました。夜中に目が覚めると、父親が自分の体をさすっている。10歳で母を亡くし、家業も失敗。何かと苦労をさせたわが子がこんな立派になって、と感慨深かったのだろう。
 ここで起きると、父もばつが悪かろうと、双葉山はずっと寝たふりをしたという。親と子が互いを思いやり、無言にして心通い合う、美しい情景が目に浮かび、胸が熱くなります。
 双葉山は引退後、「時津風」を襲名し、部屋を持ちました。後年、最もうれしかった出来事は、わが子のように育てた弟子が優勝し、横綱になったことだと話しています。
 親にとって、子の成長こそ喜び。人として大きくなった姿を見せることが、最高の親孝行となるのです。  

Posted by mc1460 at 11:37Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月20日

手にした塩

 娘は塩子といいます。命名の由来をサラリーマンの父が語っています。「娘にも塩のように地味でいい、地道に、人間としてまっすぐな道を……そういう父親の願いを……」。これは、向田邦子さんの『蛇蠍のごとく』にある一シーンです。
 サラリーとは、昔、働いた分、手にした塩を意味しました。華やかではない。しかし、信念の道を自分らしく、堂々と進んでほしい。偉くなるよりも、幸せになってほしい。そんな心情が迫ってきます。  

Posted by mc1460 at 11:06Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月19日

人生いつも「今」が本舞台

 オーストリアの文部次官も務めた声楽家のサイフェルトさんが、池田SGI会長との対談集『生命の光 母の歌』(本社刊)でユニークな話を紹介しています。
 人生の「始まり」はいつなのか。オギャーと生まれた時なのか。いやそれよりも前か、後なのか。2人の新米の聖職者が議論したが分からない。そこで近くのベンチにいた老婦人に聞いた。人生は一体、いつ始まるのでしょうか。婦人いわく。「そりゃあ、子どもが成長して巣立っていって、夫と飼い犬が亡くなった時さ」と。
 子が育ち、連れ添った夫や愛犬がいなくなって、まさに、ここからが私の本当の人生と破顔一笑した婦人。人生いつも「今」が本舞台ということなのでしょう。  

Posted by mc1460 at 09:49Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月18日

チャップリン

 チャップリンが名画「独裁者」でヒトラーと闘ったのは、ナチスの全盛期だった。その点、日本チャップリン協会の大野裕之会長は、数ある反戦映画の中でも「類を見ない作品」と評価しています(『チャップリン再入門』)
   

Posted by mc1460 at 11:34Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月17日

一字の中に思いを凝縮する

 直木賞作家の田中小実昌さんの作品には、平仮名が、ふんだんに使われています。だが、単に多用しているのではなく、例えば、意味の違いで、「前」と「まえ」に表記を使い分け、編集者にも、原稿の平仮名を漢字に直さないよう注文を付けていました。
 たった一字でさえ、それを記すのに苦慮を重ね、たった一字の中に思いを凝縮する。それが「表現する」ということだろう。納得!!  

Posted by mc1460 at 11:36Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月16日

気位が高い人間

 「貧乏、ということは、気位が高い人間のことだと思いこんでいた」。と、作家の石牟礼道子さんが、『父』(藤原書店)の中で書いています。石牟礼さんのお父さんは石工で、学校には小学校4年までしか行かなかったという。
 「親の背を見て子は育つ」とも、「子は親を映す鏡」とも言います。石牟礼道子さんは「わたしは極貧の中で育ったが、いじけるということは無かった。人間的プライドを、無学な父から教わったように思う」。と語っています。  

Posted by mc1460 at 13:28Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月15日

アフリカの子どもの日

 歴史には常に転換点があります。南アフリカ共和国では1976年6月16日、アパルトヘイト(人種隔離)に対する国内外の怒りが爆発しました。
 それは、黒人学生らのデモ行進(ソウェト蜂起)がきっかけでした。一方的な当局の教育方針に抗議した際、13歳の男子生徒をはじめ子どもたちが、警官隊の発砲の犠牲となったのです。
 この事件以降、正義の行動が加速し、あしき政策は91年に完全撤廃されました。この日は現在、南アの祝日「青年の日」となり、アフリカ統一機構(現・アフリカ連合)によって「アフリカの子どもの日」と定められています。  

Posted by mc1460 at 11:42Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月14日

皇帝を裏切った人間たち

 ナポレオン最後の決戦「ワーテルローの戦い」から18日で201年になります。ユゴーはこの古戦場を訪れ、『レ・ミゼラブル』の一編を費やして、戦の結末を描きました。皇帝の敗北を歴史の必然としながらも、文豪は、英国のウェリントン将軍でもプロイセンのブリュッヘル元帥でもなく、負けた皇帝の一近衛兵カンブローヌこそ勝者と書いたのです。ユゴーならではの民衆史観である。
 戦いの大勢が決した時、勇戦の近衛兵に敬意を表し、連合軍が降服を呼び掛けます。するとカンブローヌはただ一言、こう答えるのだ。「くそっ!」と。皇帝と共に落日の運命を引き受け、その積年の恩顧に報い、殉じようとする無名の兵・カンブローヌ。そこにユゴーは極限の勇気、精神の高貴さ、すなわち「人間としての勝利」を見たのです。ユゴーは、それを描くことによって、すばやく時流におもねり、皇帝を裏切った人間たちを見下ろしたのでしょう。  

Posted by mc1460 at 11:43Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月13日

このストーリーの素材

 演劇の中心地ブロードウェーには幾多の名作がありますが、6000回以上にわたって公演された名作中の名作に「コーラスライン」があります。
 舞台はブロードウェーの出演ダンサーを決めるオーディション会場。“自分が何者なのかを話してくれ。履歴書にないことを”との型破りな質問に答えて、無名のダンサー一人一人が、誰にも話したことのなかった来歴や悩みなどを赤裸々に語り始める……
 このストーリーの素材となったのが、アメリカSGIのメンバーが開いた集いだ。悩みや夢などを語り合う集いに感動した脚本家が、その体験をそのまま生かして書き上げたという。  

Posted by mc1460 at 11:37Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月12日

今月21日は夏至

 暑さに弱い植物は夏を、寒さに弱い植物は冬を、種子の形で乗り切り、温暖な秋や春に花を咲かせるそうです。
 それには本格的な夏や冬が、いつなのかを事前に知る必要があります。その役割を果たすのは葉だそうです。さらに、毎晩、夜の長さを測る役割を担っているそうです。
 今月21日は夏至で、夜の時間が最短となります。この日から夜が長くなるのを察知することで、植物は本格的な夏の到来を知るのです。反対に、冬至から、だんだんと短くなる夜を感じ、寒い冬に備えます。
 こうした植物の特性から、学べることがあります。苦難のない人生などない以上、それを受け止め、乗り越えるための知恵を磨くことです。  

Posted by mc1460 at 11:42Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月11日

喜びを戻してあげたい

 第2次世界大戦終結71年の今年は、ユダヤ人の少女アンネ・フランクの没後71年でもあります。アンネ・フランクはナチスに追われ、死と隣り合わせの日々でも、希望に生きたアンネ。その日記は、今も人々の胸を打ち続けます。
 この日記を守ったのは、食料や外の情報などを届け、彼女たちの隠れ家生活を支えた一婦人でした。アンネが秘密警察に連行された後、ナチスの手に落ちる前に隠れ家から日記を持ち帰り、少女の帰りを待ったのです。
 婦人は語っています。「アンネが帰ってきた時、またこの書くという喜びを戻してあげたい、そう思っただけです」(小川洋子著『アンネ・フランクの記憶』角川文庫)。婦人の希望はかなわなかったが、この小さな、しかし毅然たる行動があってこそ、『アンネの日記』を世界が知ることになったのです。  

Posted by mc1460 at 11:36Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月10日

切磋琢磨

 硬度の高いダイヤモンドは、原石同士で磨かれて人々を魅了する美しい輝きを放ちます。人間も、人間同士のかかわりを通して磨かれていくのです。
 『詩経』に切磋琢磨の故事があります。「切磋」は角や象牙を刀で切り、やすりで研ぐこと。「琢磨」は玉や石を槌で打ち、砂や石で磨きをかけることです。すなわち、学問をし、徳を修めるため、努力に努力を重ねることの意と捉えることができます。
また、友人同士で励まし合い、競い合って向上する意味にも使われます。
 又、『論語』(金谷治訳注)には「我れ三人行なえば必らず我が師を得」とあります。三人で行動したら、そこに自分の師を見つける。常に向上していこうとする心を持てば、皆が我が師であり、学び合うことができるのです。  

Posted by mc1460 at 11:35Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月09日

永久欠番

 米大リーグのニューヨーク・ヤンキースで、かのベーブ・ルースが3番打者の時代に、4番を張った強打者ルー・ゲーリッグ。彼の打撃成績以上に光を放つのは、2130試合連続出場という大記録です。
 ルー・ゲーリッグは勝っておごらず、負けてくじけずの精神力で、一試合一試合を積み重ねた偉業のさなか、彼は病を理由に引退しました。チームメートの“それでも、心はいつも共にある”との強い意思から、彼の背番号4は、世界最初の永久欠番となったのです。  

Posted by mc1460 at 13:29Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月08日

顔見知りになること

 地域の課題は何か、自分は何をすべきなのか――一人一人が「わが町」という当事者意識を持ち、行動する。その取り組みが、防災、教育など、さまざまな分野で花開くと思います。
 町づくりのもう一つのポイントは、「顔見知りになること」。どの町でも、全戸アンケートを行うときは、町内会の役員や住民が、一軒一軒、訪ねて回るのではないでしょうか。これは、アンケートの回収率を上げるためでもあのますが、最大のメリットは、そうすることで「顔見知り」となり、家族や健康などの話題を気軽に語り合えるようになることでもあるのです。  

Posted by mc1460 at 11:38Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月07日

アンケート

 東日本大震災で大きな被害を受けた漁業の町。復興した5年、10年後に中核となるのは、今の小・中学生の世代です。子どもたちを対象に「どんな町にしたいですか?」と、町がアンケートを行ったそうです。
 回答には、「ショッピングモールが欲しい」「ゲームセンターが欲しい」……正直な意見かもしれない。しかし、漁村として長い歴史のある町には、そぐわない印象もありました。
 この回答に大人たちは頭を抱えました。「テレビで見る大都市に親しみを覚え、地元にあまり触れる機会がないのかも」「自分たちの仕事(漁業)のこと、あまり話してこなかったな」と。現実の課題ですね。  

Posted by mc1460 at 11:36Comments(0)TrackBack(0)つぶやき

2016年06月06日

出会った人々を感化し続けた

 日本の主だった思想著作を収めた『日本思想大系』(岩波書店)は、全67巻におよびます。
 その第54巻が『吉田松陰』です。ひもとくと、他の思想家とは、その内容が一線を画していることに気付きます。大半は、松下村塾の塾生らに送った手紙(書簡)や日記などで、いわゆる論文の類いはごくわずかしかありません。
 その理由を、思想史家の藤田省三氏が巻末につづっています。「松陰には主著はなく、彼の短い生涯そのものが彼の唯一つの主著なのであった」。常に“実行第一”で、弟子を、出会った人々を感化し続けた、松陰の人生を物語っています。  

Posted by mc1460 at 11:21Comments(0)TrackBack(0)つぶやき