2018年04月12日

体温”にまで迫ったからこそ

 記録文学や歴史小説などの分野で多くの作品を残した吉村昭氏。氏の生まれ故郷、東京・荒川区に「吉村昭記念文学館」があります。
 館内の一角には、書斎が再現されています。部屋の三方を天井まで伸びた本棚が囲み、歴史書、郷土史などに加え、自作のスクラップブックも並んでいます。その量に圧倒される事でしょう。窓際には幅2メートル60センチもある特注品の机。執筆時に多くの資料を載せるため、この長さが必要だったそうです。
氏の信念は「史実そのものにドラマがある」。戦史小説では関係者の証言を重視し、一つの作品のために192人を取材したこともあったそうです。「証言者と会い、その眼の光、言葉のひびきを見聞きした」(『私の引出し』文春文庫)。それぞれの証言の“体温”にまで迫ったからこそ、事実や数字の羅列ではなく、血の通った人間ドラマを描けたのでしょう。  

Posted by mc1460 at 13:18Comments(108)TrackBack(0)つぶやき