2016年12月11日

広瀬淡窓

 直木賞作家の葉室麟氏が小説『霖雨』で、近世日本最大の私塾「咸宜園」(大分・日田市)を巡る人間模様を描いています。
 初代塾主・広瀬淡窓の教育への信念を、「努力を粘り強く見守ることが、ひとを教えるということ」と綴っている場面が印象的です。本年、生誕234周年の広瀬淡窓は、江戸時代にあって「三奪」を唱え、塾生の年齢・学歴・身分の三つを〝奪って〟平等に遇し、個性重視の人間教育を行いました。
 明治になって、大分の隣県・熊本には、第五高等学校(現在の熊本大学)が設置されました。そのキャンパスには今、「師弟の和熱ハ育英ノ大本タリ」と刻まれた碑が立っています。これは夏目漱石が、同校の開校10周年記念式で、教員総代として述べた祝辞の一節です。
 努力を重ねる学生と、その成長を見守り、励ましに全力を注ぐ教師――両者が和して互いの情熱が燃え盛るところに、教育・育成の根本があります。  

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2016年12月10日

小さなきっかけが

 定時制の工業高校に勤務する青年教師が試験用紙を配っていると、一人の生徒の指先に油が付いていました。昼間は町工場で汗し、夜学に通う真摯な姿に胸を打たれた教師は、“自分も真剣に学び直そう”と大学院に進んだそうです。
 この、かつての青年教師が昨年、ノーベル医学生理学賞を授賞した大村智さんです。小さなきっかけが、人生を大きく変える――地道な微生物の研究を重ね、何億人もの命を救う成果を生んだ大村さんの人生も、そうだったのです。  

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2016年12月09日

魔法の笑顔

 周囲をパッと明るくする「魔法の笑顔」と評判の、快活な女性がいます。この女性は16年前、がんを発病。その時、心の支えになったのは、まだ幼かった娘が作ってくれた「日めくりカレンダー」だったそうです。
 そこには、こんな言葉が。月曜「まけるな」、火曜「がんばれ」、水曜「ゆうきを出して」、木曜「元気を出して」、金曜「おうえんしてる」、土・日曜「大大大大大好きな、おかあさん」。この女性は涙して暦をめくったそうです。  

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2016年12月08日

挑戦の心

 〝世界のホンダ〟を一代で築いた創業者の本田宗一郎氏。学校の授業が嫌いで、正規の学校教育をあまり受けなかった氏は、自分で実際に見て聞いて試して、技術を身に付けました。
 氏の左手は、右手で握ったハンマーにたたかれ、けがのない指はないほど傷だらけでした。80歳を超えてからも、熱気球やハンググライダーに乗るなど〝挑戦の心〟を燃やし続けたのです。(『わが友 本田宗一郎』井深大著、ごま書房新社)  

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2016年12月07日

水木さんの使命感

 「動物園の動物を見ると、なんとなく『大変だろうなァ』と思いながら、じーっと動物の目を見る習慣がついてしまった」。と語っていたのは漫画家の水木しげるさん。かつて初年兵として、南方の激戦地に送られた自分を重ねたのです。
 満足な食事もなく、毎日古兵に殴られ、生還しても「なぜ死ななかった」となじられる。戦争の不条理への怒りが、水木さんの創作のエネルギーになりました。〝妖怪物〟と並んで、〝戦記物〟で戦後漫画史の一時代を築いたのです。
 その集大成の一つが、自らの戦場体験を赤裸々に織り込んだ『総員玉砕せよ!』(講談社文庫)。水木さんの分身・丸山二等兵が、銃撃され死んでいくラストは圧巻です。丸山はつぶやく。「ああ、みんなこんな気持で死んで行ったんだなあ」「誰にみられることもなく、誰に語ることもできず……」戦場に散った仲間の声なき声を刻み残すことが、水木さんの使命感だったのです。  

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2016年12月06日

未来とは

 歴史家ミシュレは「未来とは、すでにつくられて待つだけのものではない。それは、みずからが創造せねばならぬところのものである」(桑原武夫訳)と述べています。輝く未来は一人一人の胸中にある。要は、それを引き出す努力をするか否かなのです。  

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2016年12月05日

流行語大賞

 「神ってる」が今年の新語・流行語大賞です。「爆買い」は、昨年の新語・流行語大賞でした。中国人観光客らによる大量購入を指す言葉です。
 来日中国人の激増は「インバウンド(訪日客)消費」の活況に直結しますが、これからの日中関係を底流で支えていく意義のほうに注目したいものです。中国の人に日本を直接見て、人々と触れ合ってもらう。この人間的交流の水かさが増せば、両国を往来する〝政治の船〟が座礁する可能性も低くなるでしょう。  

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2016年12月04日

表現する姿

 慶應義塾大学の塾長を務めた小泉信三氏は、歌舞伎が好きでした。だが関東大震災で大きな劇場は皆、焼けてしまい、“もう、東京で芝居は見られない”と諦めていると、思いがけず、小さな劇場で成駒屋5代目・中村福助の歌舞伎を観劇できました。見せ場のシーンで一斉に三味線が鳴りだす。氏は、涙を抑えられなかったそうです(『小泉信三伝』文春文庫)。
 このとき、氏の心眼が捉えたものは、狭い劇場で演じる福助ではなかったのです。形あるものは灰と化した東京の中で、人間の美と気高さを表現する姿であったに違いありません。  

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2016年12月03日

カレンダーの日

 きょうは「カレンダーの日」です。太陽暦の採用に伴い、旧暦の1872年(明治5年)12月3日を、新暦の翌73年1月1日にしたことが由来だそうです。
 「12月3日」の数字が、1、2、3……と、時を刻むように見えます。今年もあっという間に師走を迎えた感がありますが、暦を見返し、手帳を手繰ると、鮮やかによみがえる人も多い事でしょう。  

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2016年12月02日

坂本龍馬

 高知市の坂本龍馬記念館に龍馬像があります。ほぼ等身大で、差し出された右手と握手できると評判です。
 長崎には、龍馬のブーツをかたどった像があります。彼は、土佐藩の厳しい身分制度を嫌悪しました。上士は高下駄。下級武士の郷士は草履。それならば、ブーツを! この反骨精神こそ、旧弊を打破するエネルギーであったに違いありません。
 一方、北海道の函館にも「蝦夷地の坂本龍馬像」が、北海道坂本龍馬記念館の真向かいに立っています。凜々しい表情を浮かべながら、右手の人さし指が天を衝いています。たとえ一人になっても、北の大地を開拓したい――積年の“夢”への憧れがうかがえます。左手には国際法律書『万国公法』を持っています。
 さらに、高知の桂浜には、高さ13・5㍍という特大の像が太平洋を望み、はるか世界を見つめています。この像は昭和3年(1928年)の除幕。以来、潮風の試練を受け続けています。  

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2016年12月01日

だいこんの花

 作家の向田邦子さんは、とにかく筆の走りが速かったそうです。「四」の文字を書く時間さえ惜しいのか、棒線を横に4本引いたという話も。ただ、書き出すまでが長かったそうです。
 中でも“冒頭のセリフが浮かばない”と筆を執るまで深く思い悩んだ一作が、後に、その執筆をライフワークにしたい、と言った名作『だいこんの花』でした。思いを込めた作品ほど、筆者は最初の1行に全魂を傾けるのでしょう。  

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