2015年08月08日

語り合う

 顔を合わせて語り合う時、相手から受け取るメッセージは、電話やメールの何倍も大きいですね。これは、言葉以上に非言語のコミュニケーション、すなわち、声やしぐさや表情が多くを伝えるからです。「会えて、うれしい」「ずっと心配していた」「応援しているよ」――その心が心に届きます。
 高名な作家が高校生だった時のこと。とても優秀な同級生がいた。人気者の彼がある時、学校を休んだ。大会社の社長である彼の父親が、不正をして検挙されたというのだ。新聞は家庭の写真まで掲げ、非難を書き立てました。
 3週間目、彼が突然、学校にきました。休み時間に廊下の隅で一人、窓の外を眺めていました。彼は優しい言葉を求めているはずだ。彼の誇りを傷つけずに、どう近づこう――迷う間に始業ベルが鳴った。彼は学校を出て、ついに再び現れなかった。オーストリアの作家ツヴァイクの回想です(三宅正太郎著『裁判の書』角川文庫)  

Posted by mc1460 at 11:50Comments(0)TrackBack(0)つぶやき