2014年10月17日

対話の欠如

 自分が思ったことを、他者も同じように受け取るとは限りません。小さな意識の差が、やがて、いさかいに発展する場合もあります。史書『吾妻鏡』は、こんな出来事を伝えています。
 鎌倉・鶴岡若宮の社殿が棟上げし、源頼朝が大工の棟梁へ馬を贈りました。そして、馬を引く役を弟の源義経に命じました。だが源義経は「折悪しく下手を引く者がいない」と、自分と共に役を務めるのに適した者がいないと言ったそうです。(五味文彦・本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡』吉川弘文館)。頼朝は義経が「役目が卑しいものだと思い、あれこれと言って渋っているのだろう」と激怒しました。
 〝自分は一般の御家人とは違う〟と、特別扱いを期待する義経。一方、頼朝には、同じ源氏でも主は自分であり、主従のけじめをつけるべきではないかとの思いがありました。2人のすれ違いは対立へ発展します。事を大きくした原因の一つは、対話の欠如にあります。  

Posted by mc1460 at 11:37Comments(0)TrackBack(0)つぶやき