2016年11月12日

本の「音読」経験

 豊かな感受性で、民衆や子どもの幸福を目指す社会のあり方を説いた思想家ルソー。彼の想像力や共感力を磨いたのは、幼いころの、本の「音読」経験だったといわれています。
 物心ついた時から、亡き母が残した古今の小説や、プルターク英雄伝などの名著を父に読んで聞かせるのが、彼の習慣でした。このおかげで、書物をすらすら読めるようになっただけでなく、“人間の情熱”について大きな理解力を身に付けたといわれています。  

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2016年11月11日

節目が巡り来るたびに

 もし体験できれば風の強い日、竹林を歩きましょう。吹き付ける風に揺るがない巨木の雄姿も良いが、優雅に風を受け流す竹のしなやかさもまた美しいものです。
 激しい風にも竹が折れないのは、土の中に広く地下茎を張っているから。それに、多くの「節」があるためです。また竹は、繰り返し節目を刻むことで真っすぐ伸びていきます。
 人生も、節目が巡り来るたびに成長を誓い、心新たに進んでいきましょう。
  

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2016年11月10日

不遇の下積み時代

 映画「幸福の黄色いハンカチ」が初出演作だった武田鉄矢さんは、撮影中、よく叱られました。「俺ばっかりいじめるんですよ」とこぼす武田さんを、主演の高倉健さんが励ました。「伸びないやつは、しごかないんだよ」と。
 高倉さんも、大学卒業後に入った俳優養成所では落ちこぼれだったそうです。「他の人の邪魔になるから見学していてください」と苦言されたこともありました。それでも母からの「辛抱ばい」との言葉を支えに、映画界で不動の地位を築いたのです。
 不思議にも、同じ11月10日に世を去った高倉さん(2014年)、森光子さん(12年)、森繁久彌さん(09年)といった名優には皆、不遇の下積み時代がありました。先の高倉さんの言葉の重みは、大スターゆえではないだろうか。辛酸と苦闘の青春時代を、貴重な芸の肥やしに転じながら、演技の新境地を開いた人生の重みです。  

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2016年11月09日

名は体を表す

 「冨嶽三十六景」などで知られる、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎。
 彼は19歳の時、勝川春章の弟子となり、「勝川春朗」と名乗りました。以来、「宗理」「辰政」「画狂老人」をはじめ、90年の生涯で使った画号は「30」を超えます。
 画号とは、作品に記す本名以外の名前のことです。画号を変えた理由はさまざまあろうが、北斎は多彩な画風を持ちました。画号の変更は、新しい画風に挑む心意気のあらわれとみたいですね。「名は体を表す」からです。  

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2016年11月08日

脇役の本望

 美術展などの照明技師として働く人の話です。芸術作品を心地よく鑑賞してもらえるように光を当てたいが、一方で、作品の劣化を防ぐには光を抑えなくてはならず、とても神経を使う仕事だそうです。
 次に切り出した言葉が、興味深かった。「鑑賞した人から『今回の照明、とても良いね』と言われるのは、僕らには褒め言葉ではない」。主役を引き立たせるのが脇役の本望。陰の仕事が目立つのは失敗、ということらしい。  

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2016年11月07日

最先端の潮流

 アメリカのニューヨーク。文化や経済など、しばしば最先端の潮流が起きるこの巨大都市で今、注目すべき動きが見えています。
 本や雑貨は、インターネットで購入、音楽はダウンロードするという動きが10年ほど前から始まっています。そのため街の書店、レコード店(CDショップ)が次々と閉店を余儀なくされています。しかし、今、ニューヨークでは、その逆の動きが著しいそうです。
 小さなレコード店、書店が、次々と開店しだしました。その多くに共通した特徴があるそうです。売り場のなかに、近隣の人たちが本を読んだり、音楽を聴いたりしながら、コーヒーを飲んで、自由に語り合うスペースが設けられている事です。ネットではできないコミュニケーション、地域の人とのつながりの「拠点」として、店を利用してもらおうというのです。  

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2016年11月06日

二軍の監督

 プロ野球の日本シリーズは、北海道日本ハムファイターズの優勝で幕を閉じました。
 栄光を目指して戦うのは、二軍の監督も同じです。日本一へ、戦力となる選手を一軍に送ろうと必死なのです。二軍監督が心を砕くのは、技術面だけではありません。例えば、ある球団の監督は就任直後、選手にこう訓示したそうです。「毎日、ヒゲを剃ってグラウンドに出ろ」。観客に対する身だしなみを強調したのです。社会人としての自覚を徹底させることが、緻密なプレーの意識付けにもつながるとの狙いです。
 二軍で猛練習に挑み、首位打者のタイトルを獲得した選手が、自信を持って語っています。「ここ(二軍)は、人間修行の場なんですよ」(『プロ野球 二軍監督』赤坂英一著、講談社)。野球界のトップの世界に入る選手たちの、能力差はわずかなものです。成功するかどうかに、礼儀や感謝という人間力が関わるという視点は新鮮でした。心を磨くことで、技術も生かされるのです。  

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2016年11月05日

明けの明星

 寒いですけど、夜明け前の空を見てください。東の空に金星と木星が並んでいるのが見えます。
 木星は地球の約11倍の直径。だが、地球とほぼ同じ大きさの金星の方が、大きく輝いて見えます。これは距離が近いから当然ですが、輝く理由はほかにもあります。金星は全体が厚い雲に覆われ、時速400㌔もの暴風が吹き荒れる過酷な環境。「明けの明星」のひときわの輝きは、厚い雲によって、太陽光の約80%を跳ね返し、反射させているからだそうです。知っていました?  

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2016年11月04日

新渡戸稲造

 今年は、新渡戸稲造の生誕154年です。彼は国際連盟事務次長を務めた、近代日本を代表する国際人です。
 新渡戸は若いころ、演説が大の苦手だったそうです。とにかく震えが止まらない。“聴衆はただの椅子”と思い込んでみるが、よく見れば、やはり人の顔。“聴衆は気心知れた友ばかり”と思ってみても、実際は面識もない人ばかり。“聴衆をのみ込んでやれ”と思うほど、自分がのまれる気がした――ユーモアも交え、赤裸々に述懐しています(『新渡戸稲造全集』第10巻、教文館)
 その彼が吹っ切れた瞬間があります。「演説を賞められたい、或は自分がよくいはれたいと色気があればこそ、恐れ戦くもの」「賞めるか、誹るかそれは他人のすることで、自分のすることは只ベストをするのみだ」。こう腹を決めた時を境に、演説の達人へと飛躍したそうです。  

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2016年11月03日

ゴッホ

 絵画の巨匠ゴッホが有名になったのは死後のことです。2200枚描いた絵も、生前は1枚しか売れなかったそうです。
 彼は自信がなく、常に葛藤していました。「『お前は画家ではない。』という内心の声が聞えてくるときには、しゃにむに描くのだ。そうすれば、ほら、その声は沈黙してしまう」「自信をもって、正しいことをしているのだという確信をもってやらなければならない」(タイムライフブックス編集部編『ファン・ゴッホ』  

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2016年11月02日

マンデラ

 「変わるべき時に私自身が変われないなら、人々に変化を求められません」。これは、映画「インビクタス/負けざる者たち」における、マンデラ大統領のせりふです。
 アパルトヘイト(人種隔離)の悲劇を越えて、新生・南アフリカ共和国を率いる氏は、人種の融和に心を砕く。「和解と赦し」を掲げ、ラグビー代表チームの白人キャプテンとも友情を紡ぎました。「なぜ?」との問いへの返答が、冒頭の言葉です。同国で開催されたワールドカップにおける感動ドラマも、そこに生まれたのです。
 「心の強さ」には二つあります。勇気と寛容です。勇気とは、己心の衝動を抑えて、方向を転ずる能力。寛容とは、人々を助け、友情の絆によって結びつこうとする努力。哲学者スピノザは主著『エチカ』で、そう語っています。マンデラ氏は、その二つを備えているといっていい人物です。  

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2016年11月01日

人の心を前へ進ませる力

 小説家の川端康成がある日、青年映画監督として活躍していた篠田正浩さんを、鎌倉の自宅に招いたそうです。川端康成は日本映画の新たな動きについて聞きたかったらしい。30も年下の青年の話を聞く間、大文豪はずっと正座を崩さなかった。辞去しようとすると、「いや、まだまだ話してください」と請うたという。この話はのちに篠田さんが、ラジオのインタビューで語った思い出です。
 老境に入っても貪欲な求道心が、若い篠田さんには鮮烈だったのであろう。幾つになっても成長への意欲を失わない人には、人の心を前へ進ませる力があることを実感します。  

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2016年10月31日

ハニカム構造

 ハチの巣の断面を見ると、六角形が奇麗に並んでいます。六角形である理由は、隙間なく、かつ少ない材料で巣を作るのに、最も適した形だからです。
 「ハチの巣」は英語で「ハニカム」。六角形を隙間なく並べた構造を「ハニカム構造」といい、トンボの複眼などにも見られます。
 「ハニカム構造」は軽くて頑丈。ニホンミツバチの巣では、一つ一つの壁は厚さ0・1ミリほどしかないが、4000ほどの穴をつくり、2キロもの蜜をためることができるそうです。この自然界の知恵は、軽くて頑丈であることが必要な飛行機の翼、新幹線の床など、人工物にも活用されています。  

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2016年10月30日

自分がどうあるべきか

 超一流の選手は、参考にしたい逸話に事欠かない。米大リーグのイチロー選手は、新たなシーズンに臨む際、「首位打者になる」といった目標は立てないそうです。首位になるかどうかは、相手のあること。打率よりも安打数にこだわり、1試合、1打席を積み重ねる野球人生を歩んでいます。
 野球だけではなく、人生でも“相手がどうか”に気をもむよりも“自分がどうあるべきか”に行動の規範、目標を据えた時、進むべき方向が明確となります。  

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2016年10月29日

日常に戻すこと

 復興支援を目的にしたイベントについて、ある小学校の先生が語っていました。「皆さんの善意には心から感謝します。でも今、私たちが目指しているのは『日常に戻すこと』。そこに寄り添ってくれる人たちの真心が、何よりもありがたいのです」と。
 特別なことばかりが必要ではない。過酷な非日常を経験した人にとっては、何げない〝日常〟の中にこそ、安らぎと幸福があるのでしょう。
 日常、平常を意味する言葉に「ふだん」があります。辞書を引くと、「普段」と書くのは当て字が定着したもので、もとは「不断」と書いたという。絶え間ない、日常の温かな励ましの中に、生きる希望が、勇気が生まれてくるのです。  

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2016年10月28日

関吉の疎水溝

 世界遺産に登録された鹿児島市の「関吉の疎水溝」。これは薩摩藩による日本初の本格的洋式工場「集成館」の動力を担う水車に、水を送り込むためのものです。
 ここに訪れた人の感想です。「石造りの水路に沿って歩いた。水面を流れる一葉を見つけたが、水の流れがゆっくりで、すぐに葉っぱを追い越してしまいました。」疎水の長さ約7㌔に対し、始点と終点の高低差は、わずか約8㍍といわれます。
 しかし、人の足より遅い水も、流れ続けることで、工場をも動かす力になった。その事実と、それを可能にした往時の人々の仕事に、深く思いを致したそうです。
  

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2016年10月27日

アナタ

 半世紀以上も前の話になりますが、日本から南極観測隊が初めて派遣された当時、唯一の通信手段はモールス信号の電報でした。
 正月、日本にいる家族から年賀電報が届きました。ある隊員の妻が送った電文は、わずか3文字でした。「アナタ」。
 妻は、夫の重要な任務を理解し、気丈に留守を預かっていたことでしょう。それでも、離れて暮らす寂しさ、過酷な環境下で働く夫の身を案じる気持ちが、あふれてきたに違いありません。この3文字には、何万語を尽くそうと伝えきれない思いが、凝縮されているのです。  

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2016年10月26日

どんな文章を読んできたか

 劇作家で歌人の寺山修司さんが晩年、病身を押して、大学時代の親友で、脚本家の山田太一さん宅を訪れました。”おまえの本棚を見せろ”と言う寺山さんを案内し、2人は懐かしい本を前に、来し方を語らったそうです。
 これは寺山さんの葬儀で、山田さんが弔辞に紹介したエピソードです。どんな本を持ち、どんな文章を読んできたか。それが人格をつくり、人生の背骨となっていく。言葉に生きた2人に、深く学ぶ思いです。  

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2016年10月25日

雁風呂

 越冬の渡り鳥を見かける季節になると、津軽地域に残るといわれる民話「雁風呂」を思い出すします。
 月夜に雁が渡ってくる。疲れると、口にくわえた小枝を海面に浮かべ、その上で羽を休める。津軽まで来れば、もう大丈夫と、小枝を落とし、目的地に向かう。早春、今度は北へ帰る途中に津軽に戻った雁は、自分の小枝を拾って旅立っていく。残った枝は冬を越せなかった雁のものだ。薪にさえ事欠いた津軽の人は、力尽きた雁を偲びつつ、その枝で風呂を焚いたという。
 これは実話ではありません。だが、厳しい自然、苦しい暮らしを生きる人々は、一本の小枝にも深い思いを託していた。その美しい心が民話となり、今も、聞く人の心に温もりを届けるのです。  

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2016年10月24日

華岡青洲の妻

 256年前の10月23日、偉業を成し遂げた人物が誕生しました。世界で初めて全身麻酔による手術に成功した医師・華岡青洲です。
 しかし彼の成功よりも、彼を支えた女性たちのほうが有名でしょう。“病に苦しむ人々を何としても救いたい”と、一心不乱に麻酔薬の研究に打ち込む青洲を、わが身を捨てて支えた妻や実母らの存在なくして、近代医学の飛躍はなかった。その陰の功労は、有吉佐和子さんの小説『華岡青洲の妻』で広く知られるようになりました。
 青洲の故郷・和歌山には「婦夫波」という名所があります。沖合の小島で二つに裂けた波が、再び寄り添うようにぶつかる光景を、そう名付けました。女性に敬意を込め、あえて「夫婦」の字を逆にしたそうです。  

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