2014年12月15日

苦痛をはるかに見おろし進む

 「幸福の画家」とも称されるルノワール。しかし、彼はは晩年、重度のリウマチに苦しんだそうです。隣部屋には痛みに耐える声が夜通し響いた。朝が来ると、変形した指に絵筆を縛り、車いすでキャンバスに向かったそうです。
 しかし、彼の作品に苦悶の形跡は何一つありません。どの絵も生きる喜びが光彩となって脈打っています。父は“病気を治すことなど問題ではなかった。大切なのは描くことだった”と息子ジャンは述懐しています(粟津則雄訳『わが父ルノワール』みすず書房)。苦痛をはるかに見おろし進む、巨匠の背中が浮かぶようです。  

Posted by mc1460 at 11:23Comments(0)TrackBack(0)つぶやき