2013年04月15日

語りの森

 日本各地を丹念に調査した研究が高く評価され、2003年にサントリー学芸賞を受賞した若手民俗学者の六車由実さん。六車さんは将来を期待されていましたが、大学の仕事は事務作業に追われ、「民俗調査の現場」とかけ離れていました。
 彼女は各地の調査先で、親切にしてくれた古老たちの顔が浮かびました。少しでも恩返しをと、大学を辞め、ヘルパーの資格をとり、高齢者施設の介護の職になったのです。介護の現場で彼女は驚きました。サトウキビから製糖する工程を、専門書以上に詳しく教えてくれる人。蚕の雌雄、日本種・中国種を鑑別するため、日本国中を旅した元「鑑別嬢」。高齢者施設は、民俗学、歴史学の宝のような「語りの森」でした。  

Posted by mc1460 at 11:58Comments(0)TrackBack(0)つぶやき