2017年02月21日

伝わる思いの深さは

 落語の基本は「おい、八つぁん」「何だい、熊さん」という“対話”にあります。その上で――落語芸術協会会長の桂歌丸師匠が語っています。落語家の腕の良しあしは、せりふの間に余韻を残す「間」が上手に作れるかどうかで決まる、と。
 文にも「行間を読む」味わい方がありますが、対話の「間」によって伝わる思いの深さは、文を超えるでしょう。  

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2017年02月20日

記憶とはそういうものでしょう

 つらかったことは消え去り、甘美な思い出だけが残る――記憶とはそういうものでしょう。ところが、物心ついたころから現在までの人生を、映像を巻き戻すように、全て思い出せる人が、世界にはまれにいるそうです。
 その記憶力を人はうらやむかもしれないが、当人にとっては、何十年も前の思い出したくない出来事まで突然、克明に再現され、苦しみにさいなまれるという。「忘れる」ことは、人間の自己防衛の本能なのです。  

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2017年02月19日

軍事政権時代の初等教育

 ブラジルでは、1964年から21年間にわたって軍事政権が続き、言論・思想の統制などが行われました。教育に関しても“質の低下を招いた”と総括されています。
 軍事政権時代の初等教育は、「机も椅子もボロボロ。照明器具も壊れていた。教員も、教育を愛しているから、辛うじて教壇に立っているという感じだった。権力は、教育の質を下げ、人々を支配しようとしたのです」と。
 教育が「国家のための手段」におとしめられるのは、珍しいことではありません。日本も、70年前まで、それ一色でした。創価教育の父・牧口初代会長と戸田第2代会長は軍国主義に抗し、投獄されました。牧口会長は獄死。しかし、創価教育の種は戸田先生から池田先生に受け継がれ、日本、ブラジルをはじめ、世界7カ国で花開き、学舎が開かれています。  

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2017年02月18日

シートーヤー

 農家が丹精込めて育てたサトウキビを圧搾して、そのしぼり汁を煮詰めて作る「黒糖」。10キロのサトウキビからできる黒糖は1キロ程度。ひとかけらの黒糖に、多くの人々の労苦が凝縮しています。
 「沖縄・宮古島伝統の黒糖を作ろう」。と、宮古伝統文化保存委員会が、昔ながらのシートーヤー(製糖小屋)を再現しました。この再現の模様を記録して出版した、教育者の宮国猛さんは「戦後の宮古伝統の黒糖作りの原点」と高く評価しています。事実、再現後、島の各地でシートーヤーによる黒糖作りが盛んに行われたそうです。  

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2017年02月17日

あえて

 俳優の仲代達矢さんが、まだ無名のころ、黒澤明監督の映画「七人の侍」に出演しました。せりふがなく、数秒だけ登場する浪人役でした。だが、監督から何度もげきが飛ぶ。歩くだけの撮影に6時間も要し、その間、他の役者らを待たせた。屈辱を感じ、〝うまくなってやる〟と誓ったそうです。
 7年後、「用心棒」の出演依頼が届いた。黒澤監督は、仲代さんに役者として光るものを感じていたのです。だから「七人の侍」のとき、あえて演技の厳しさをたたき込んだのだ(高橋豊著『幻を追って』毎日新聞社)  

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2017年02月16日

勝負師

 将棋界に名を残す棋士・升田幸三氏が、著書(『勝負』中央公論新社)に幼少時の思い出を書いています。力自慢の父親がまき割りをしていると、年配の「じいさん」がやってきた。「じいさん」の動きはゆっくりなのに、父親よりも多く割る。どんな木にもペースが落ちない。よく見ると父親は、割りにくい節を避け、ペースを乱していた。「じいさん」は常に節の上に斧を打ち下ろしていました、と。
 伸びる人は、いつも自分を向上させるような暗示を自分にかけている”というのも勝負師・升田氏の言です。「必ず勝つ」と自分を信じることから、勝負は始まるのです。  

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2017年02月15日

人生という舞台

 親孝行とはプレイ(演技)である」。親子だからこそ「誰よりも気を遣い、誰よりもサービス精神を持ち、誰よりも接待感覚を忘れてはならない」と、みうらじゅん氏は語っています。行動してこそ心は育つ。氏は、そう考えるのだ(『親孝行プレイ』角川文庫)
 これを偽善というなかれ。哲学者のハンナ・アレントも“演じること”の大切さを指摘しています。人はそれぞれ多様な社会的役割を担っています。人生という舞台の上で、その“配役”をしっかり演じ抜くことは、「人間」として欠かせないのです。  

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2017年02月14日

大阪取引所

 大阪市中央公会堂の近くにある大阪取引所。白亜の建物の前にある像が今、人気の観光スポットになっています。大阪の経済発展に功績を残した五代友厚の像で、昨年ブレークした、NHKの朝の連続テレビ小説の影響です。
 「東の渋沢、西の五代」といわれ、日本資本主義の父・渋沢栄一と並び称される五代は、数多くの事業を起こしますが、その多くは共同事業でした。明治初期はまだ、商売や事業が「家業」として行われていた時代。さまざまな人々と手を結び事業を展開する手法は、当時としては斬新でした。
 「商社合力」。五代は、自らの事業の進め方をそう表現しました。渋沢もまた、自らの事業に対する考え方を「合本主義」と語っています。多くの人と団結して事業を進めていくことを、2人は信念としたのです(『商都大阪をつくった男 五代友厚』NHK出版)  

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2017年02月13日

人間は『斃(たお)れてのち、はじまる

 「人間は『斃(たお)れてのち、はじまる』と思っています」。これは社会学者の故・鶴見和子氏の言葉です。
 彼女は脳出血で倒れた時、医師から〝身体の左側の麻痺は治りません〟と告げられたそうです。元に戻らないなら、前へ向かって進むしかない。新しい人生を切り開く、と覚悟を決めました。リハビリに励み、精力的に仕事も続けた。自身の可能性を生命ある限り、発掘し、創造し続けていきたい――その思いを歌に詠んでいます。「我がうちの/埋蔵資源発掘し/新しき象/創りてゆかむ」(『花道』藤原書店)

 ※「斃(たお)れる」とは 「斃れる」(「殪れる」とも書き)は、<病気・事故などで(急に)患ったり、死ぬ、殺される>場合に使われます。
  

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2017年02月12日

必ずや結論するであろう

 1996年2月11日。戸田第2代会長の生誕日に、池田先生は「戸田記念国際平和研究所」を創立しました。
 戸田会長がよく語っていたという話です。もし仮に釈尊、キリスト、マホメットなどの宗教の創始者が一堂に会して話し合ったら――。戸田会長は語ったそうです。「大きい慈愛の心の語り合いは、譲り合い、尊重し合い、反省し合うであろう」「人間の真の平和と真の繁栄の目標へと、完全な一致を見いだすことに、必ずや結論するであろう」と。
 「人間のため」「平和のため」。宗教には本来、この共通の土台があるはずです。方法論は違っても、目的は同じであり、その一点で協力できるはずです。  

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2017年02月11日

緑茶も紅茶も

 大雪が降った朝、ペットボトルの熱い紅茶を買いました。見るとパッケージに「おにぎりにも合う」という趣旨の表記があります。試してみると、意外にその通り。緑茶も紅茶も、葉自体は同じなので、不思議はないのかもしれない。「米には緑茶」というイメージが、少し変わりませんか。  

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2017年02月10日

氷点下

 冷蔵庫は、物を冷やしたり、凍らせるだけのものではありません。「凍らせないため」にも使われるのです。
 氷点下が続く厳寒の北海道では、本州では想像できない生活常識や自然現象が存在します。「凍裂」もその一つです。雷に打たれたわけでもないのに、大木が突然、弾けるように裂けることがあります。木が凍結することで起こる現象だそうです。  

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2017年02月09日

あの姿に憧れました

 宮城県気仙沼市の造船所。戦前から続く老舗企業です。年配の作業員が、もくもくと仕事をしていました。手元を見て驚いた。「鐃鉄」という作業でした。手にするのは、水が出るパイプとアセチレンガスの火が出るパイプだけ。一切、力を加えず、加熱と冷却だけで、何センチもの厚さの鋼板を少しずつ、船首や船尾、胴など、複雑な形へと曲げていくのです。
 高度な職人技。恐る恐る「写真を撮ったらいけませんよね」と尋ねたら「いくらでも、いいよ」と。「今、写真見て分かっても、一人前になるまでに30年はかかるからなぁ」。屈託のない笑顔が返ってきました。
 自らも先輩の仕事を長く見続け、会得した技です。案内してくれた若い従業員が言いました。「入社した最初の日に、あの姿に憧れました。今でも、時間があれば、見てますよ」。このようにして、伝統は受け継がれていくのです。  

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2017年02月08日

ウルトラマン

 「ウルトラマン」をご存知ですか。光の国からやってきて地球を守る正義の味方は、瞬く間に子どもたちの心をつかみ、その後の兄弟シリーズも人気を博しました。「最も多く派生シリーズが誕生したテレビ番組」として、ギネス世界記録にも認定されています。
 ウルトラマンの生みの親・円谷英二監督は若いころ、ミスをきっかけに、予算も設備も調わない“格下”の映像制作に回されました。だが、そこで、少ない光量で撮影したネガを特殊現像で補正したり、粗末なセットを立派に見せるなど、数々の技術を編み出し、後の成功の基礎を築きました。
 “特撮はお金が掛かるのでは?”と問われた円谷監督はこう答えたそうです。「冗談いっちゃ困るね」「大体トリックというのは貧乏の生んだ知恵なんだ」(昭和41年9月「キネマ旬報」)と。恵まれた環境がなければ、よい成果が出せないとは限らない。与えられた条件の中で、知恵を絞り、創意工夫を重ねる中で、誰にもまねできないほどの作品さえ生み出せる。苦難の中で、不屈の自己は磨かれる――これは人生の真理です。
 ウルトラマンは、地球では3分しか戦えませんでした。その厳しい条件を課されながら、怪獣を倒しました。ここにも、名作となった理由があるのかもしれません。  

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2017年02月07日

90%以上に改善

 選ぶことのできる選択肢が多く、自由度が高まるほど、幸福感は増す。この「幸福」と「選択」の関係を論じた好著に、米コロンビア大学・アイエンガー教授の『選択の科学』(櫻井祐子訳、文芸春秋)があります。
 同書に、高齢者介護施設での心理学実験が紹介されています。ある階では、職員が選んだ鉢植えを入居者に配り、水やりも職員が行います。施設で見る映画の予定も職員が組みました。別の階では、入居者が好きな鉢植えを選び、水やりもしました。映画を見る曜日も、入居者自身で決めました。
 驚いたことに、3週間後の調査では「選択権なし」のグループの70%以上に健康状態の悪化が見られた一方、「選択権あり」のグループの90%以上に改善が見られたそうです。  

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2017年02月06日

新聞の起源

 新聞の起源は、一説には、紀元前5世紀ころのローマで、地方在勤者へ送られた手書きのニュースとされています。人がニュースを欲するのは、自分の生活に影響を与える事態を早く知り、対応するため。その意味で、“中央発”とともに、わが地域の動きを伝える“地方発”のニュースが、新聞の役割となってきたのです。  

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2017年02月05日

2人を引き合わせたのは

 障がいの三重苦に屈せず、福祉事業に尽くしたヘレン・ケラー。その可能性を開花させたのは教師アン・サリバンといわれるが、2人を引き合わせたのは、電話を発明したグラハム・ベルだったそうです。
 ベルは聴覚障がい者の教育に携わっていました。文明史を変えた電話の発明も“耳が聞こえない人々を、孤独から救いたい”との思いで始めた研究がきっかけだった(『孤独の克服 グラハム・ベルの生涯』NTT出版)。
 後にヘレンは、ベルとの出会いを「私を闇から光へ、孤独から友情、知識、愛の世界へ導いてくれる門戸」(岩橋武夫訳)と記しています。
 “真の贅沢とは、人間関係の贅沢だ”とサン=テグジュペリは書いていますが、人生で、孤独ほどつらいものはなく、人との出会いほどの宝はありません。  

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2017年02月04日

彼方ならどうしますか

 さて、彼方ならどうしますか。A君が、B君のオモチャを取り上げ、B君が泣きだした。どう解決するか。中国の名門大学の研究者一行が、札幌創価幼稚園を視察した際、教員に質問しました。
 まずA君を抱きしめて、B君に優しいまなざしを注ぎながら、「どうしてB君のオモチャを取ったの?」と聞きます――と教員は答えたそうです。
 オモチャを取ったのには、園児なりの理由があります。抱きしめて安心させ、じっくり話を聞くことで、頭が整理され、相手を思いやる心も芽生える。これは、池田SGI会長のエッセー集『21世紀の世界ビジョン――愛する北海天地から』(潮出版社)に紹介されていた話です。
 教員の説明に、研究者は「皆が幼少期にこういう教育を受ければ、世の中の大小の問題は必ず解決していけます」と。そして続けた。「世界平和へもつながる道ですね」と。  

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2017年02月03日

学校の理念

 ずいぶん前の映画ですので、ご存じない方も多いと思います。映画「人間革命」「続・人間革命」にも出演した女優の新珠三千代さんは、13歳の時、現在の宝塚音楽学校に合格するが、芸能界を知らない父は、入学に首を縦に振りませんでした。ならば一度、この目で見てみようと、親子で学校を訪れたそうです。
 校門で掃き掃除をする男性に、校長に面会したい旨を告げると応接間に通されました。しばらくして入ってきたのは、さっきの男性だった。「私が校長です」。その姿に、一度で学校の理念を理解したのでしょう。父は入学を快諾したそうです。(川本三郎著『君美わしく』文春文庫)  

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2017年02月02日

ひな人形

 2月24日から始まる千葉・勝浦市での「ビッグひな祭り」。市内に約3万体ものひな人形が飾られそうです。
 ひな人形を飾る風習は江戸時代初期から始まりました。鳥取などの各地には、流しびなの伝承もあります。人形には、子らの健やかな成長を願う祈りが込められているのです。  

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