2013年01月02日

雪間の草の春

 「花をのみ待つらん人に山里の 雪間の草の春を見せばや」(藤原家隆)。これは、いつ咲くかと花ばかり待つ人に、見せてあげたい。山里の雪の隙間に芽生える草の姿に、本当の春があることを――歌人・藤原家隆は冬の中に春を見ています。
 作家の白洲正子さんは、この歌は「発見の驚きと、喜びに満ちている」と表現しています。秋の実りが終わり、すべて滅びたかに見える冬。が、すでに新しい生命の胎動は始まっている、と。
 花や緑に眼を奪われず、名もなき草に生命の力強さ、美しさを発見するのは、この時です。その感動はまた、春の到来の喜びを何倍にもしてくれるはずです。


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