2017年08月01日

編集長

 昨年放映された、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」は戦後、100万部もの販売部数を誇った生活総合誌「暮しの手帖」の創業者たちが、モデルとして描かれていました。
 その中の一人、編集長の花森安治は、口は悪いが、読者への心配りを忘れない“職人”でした。「難解でもないことを難解にいうのはバカな学者がやることだ。難解なことをわかりやすく表現し、正確につたえる、それが編集者のしごとだ」と。
 企画案も、「上からひとを見下すような」「説教でもたれようかとする」内容が出ると、叱り飛ばして却下しました。「読者とおなじ眼線に立って、文章を書け」「きみの書いた文章が、八百屋の奥さんにそのまま読んでもらえるか、魚屋の奥さんにわかってもらえるか、それを考えて書け」と。(唐澤平吉著『花森安治の編集室』晶文社)
 活字が、戦争賛美・戦意高揚に利用された時代を知るからこそ、彼は、それを扱う責任の重さに向き合い、自らを律し続けたのでしょう。

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