2016年12月26日

繰り返しの中で

 脚本家の山田太一さんは映画会社の助監督時代、木下惠介監督の脚本を口述筆記していました。寝転んだ木下監督が思考を巡らし、シナリオを語る。一度、口にしたせりふが訂正されることはなく、その才能に舌を巻いたそうです。
 ある時、考える時間が長いなと思ったら、監督のいびきが聞こえてきました。待つ間、自分なりに展開の続きを考え、後でそのアイデアを披露するが、大抵は採用されない。そんな繰り返しの中で山田さんは気付いたという。「自分のつくりたい作品が、監督にぶつかることではっきりしてくる」と。(『その時あの時の今』河出文庫)

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