2014年02月26日

待雪草

場所はナチス占領下のオランダ。ユダヤ人の父娘は、離れ離れで息を潜めて暮らしていました。親子は抵抗組織を通じ、手紙のやりとりが続いていました。少女は父さんからの手紙を、全部覚えようとしました。
なぜか? 父からの手紙は、証拠を残さぬよう、読んだら焼き捨てる約束だったからです。だが、灰になったはずの手紙は奇跡的に保管され、一冊の本になりました(『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』母袋夏生訳、岩波書店)
少女の雪が解け出す頃の手紙。うつむいて白い花を咲かせ、春を告げる待雪草に少女は目を奪われました。感動をそのまま綴ると、父はこう返しました。「きみのいうとおりだ。とてもひかえめな花です。じっくり観賞すると、おどろくほど美しい。おくの深いところに黄金の心をもっている。待雪草のそういうところを、人間はお手本にできるね」と。

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