2013年03月20日

におい

 道すがらの沈丁花の香りに、春を思う。同時に、記憶のかなたに誘われる。小学生のころ、通学路で同じ匂いをかいだ情景がよみがえる。詩人・谷川俊太郎氏はこう記しました。「生きることの味わいを意識して、そこに喜びと一種のさびしさを感じる時、いつも匂いが私と人生をむすぶひとつの通りみちになっていた」(『日本の名随筆「香」』作品社)。
 「におい」は、人生の味わいに欠かせません。テレビや新聞・雑誌に、“3・11から2年”をテーマにした活字や映像があふれています。そこには、被災地の厳しい現状、懸命に生きる人々の姿を伝えようとしています。しかし、メディアでは伝えきれないものがあります。その一つが「におい」です。「におい」は、共に現場に身を置かなければ分かち合えないものです。

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