2012年12月30日

ソクラテスの指摘

 ソクラテスは語っています。――文字に頼ると、人は忘れっぽくなる。「自分の力によって内から思い出すことをしないようになるからである」(プラトン著『パイドロス』藤沢令夫訳)
 人は、大事なことを「メモ」します。しかし、それで安心し、読み返すことをしないのが常です。だから、肝心なとき、役に立ちません。「メモ」に頼らず自らの「心」に刻む――その努力は、やはりいつの時代にも欠かせません。
 とはいえ、昨今のインターネット社会は、知りたい情報がすぐ手に入ります。私自身もそうなのですが、ややもすると“もの知りになった”と錯覚しがちです。しかし、ソクラテスは指摘しています。「知者となる代りに知者であるといううぬぼれだけが発達するため、つき合いにくい人間となるだろう」(同)
 ソクラテスはコンピューターなど知っていません。が、知識と人間をめぐる洞察は、数千年を経てもみずみずしく私たちに呼びかけています。この事実こそ、ネット社会の利便性より、よほど感動的ではないでしょうかか。



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