2012年08月12日

師への感謝

 福沢諭吉は生涯、師・緒方洪庵を敬愛しました。こんなエピソードが。福沢諭吉が門弟を連れ、師の墓参りに赴いた時のこと、彼は自ら師・緒方洪庵の墓掃除を始めました。「私がやりましょう」と慌てる門弟に対し、「お前がすることではない」と、最後まで触れさせなかったという(西川俊作ほか編『ふだん着の福澤諭吉』)
 翻訳は誰もが分かる文章に――若き福沢は、師・緒方洪庵から教わった心得を愚直に守りました。漢学の素養をなるべく出さず、難字難語を使わないようにしました。その甲斐あって、福沢諭吉の著作は広く読まれ、洋学者として名をあげました。彼は晩年、来し方を振り返りつつ、「無窮の師恩を拝する者なり」(全集緒言)と綴りました。
 師への感謝とは、思うに、その教えを徹して実践することに尽きます。立ち止まらず、かしこぶらず、師の言葉に全身全霊を傾ける。その時、人生の行く手を覆う暗雲は拭われ、尊い使命の道が見えてきます。

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