2012年05月14日

ダンテの叫び

 本物は苦闘の中から生まれます。世界文学の金字塔といわれているダンテの『神曲』もそうでした。愛する人の突然の死と、祖国からの追放という苦悩に襲われた、13世紀イタリアの詩人ダンテ。「他人のパンがいかに辛く/他人の家の階段の上り下りがいかに辛い道であるか」(平川祐弘訳)。流浪の中で綴られた詩人の一言一句が胸に染みります。
 地獄・煉獄・天国の3界をダンテ自身が旅する『神曲』の物語は、彼が文学上の師匠とした古代ローマの詩人ウェルギリウスが導き手となって進んでいきます。試練の旅 を勝ち越えたとき、師は弟子をこう讃えます。〝君は、君自身の主なのだ〟と。
 人間とは、運命に流されるだけの存在ではありません。自分が自身の主となって、困難にも立ち向かい、乗り越えていけるのだ。この詩人ダンテの叫びは、わが一念の変革が、人生も社会も変えゆく力になることを教えています。


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