2012年04月29日

まさに人生は劇

 「演技がかっている」と言えば、一般には偽りなどを連想させ、あまり良い印象を受けません。しかし、劇作家の福田恆存氏は“人間は特定の役割を演じて生きていく演劇的な動物”と訴えています。
 そして、人間は本来“自分は意味のある存在である”との実感を求めています。この実感は、自分が置かれた環境下で、自らの役割を演じきる中で感じるものです。自分の役割を捨てて、他に自由を求めても、決して生きがいを感じることはできない(『福田恆存評論集4』)と。
 自分の今の環境を当てはめてみると、現実はいかに思い通りにならないことが多い事でしょう。しかし“今の自分は本当の自分ではない”“なぜこんな目に”と境遇を嘆くばかりでは、人生の舞台を降りるのと同じです。
 仏法では、“菩薩は衆生を救済するために、自ら宿命を背負って生まれることを願う”と説いています(これを「願兼於業・がんけんおごう」といいます)。いわば私たちは、この世に生を受けて“あえて苦労を演じている”と言えるでしょうか。ならば、自分で背負った宿業ならば乗り越えられないはずはない。まさに人生は劇です。主役は自分自身です。今いる場所が使命の舞台であり、苦難こそ最大の“山場”となる事でしょう。


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