2012年02月20日

 桜並木の川べりを親子が仲良く散歩している。「この木は死んじゃったの?」「そう見えるね。でも、ちゃんと生きているよ。もうすぐ春になると、きれいな花を、枝いっぱいに咲かせるんだよ。
 染織家の志村ふくみさんを訪れた、詩人の大岡信氏。美しい桜色に染まった糸で織った着物を見て、尋ねたそうです。「『この色は何から取り出したんですか』。『桜からです』と志村さんは答えた。素人の気安さで、私はすぐに桜の花びらを煮詰めて色を取出したものだろうと思った。実際はこれは桜の皮から取出した色なのだった。あの黒っぽいゴツゴツした桜の皮からこの美しいピンクの色がとれるのだという」(『ことばの力』大岡信著)
 何という不思議だろう。しかも、花の咲く直前が良いのだという。厳しい寒さに耐え、枯れ果てたように見える木の中で、やがて咲き薫る花の準備が、全力でなされていたのだ。


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