2017年07月22日

本物は本物を知る

 能楽の家元が道を歩いていると、謡が聞こえてきました。しばし耳を傾け、お供に言った。「とめてみせようか」。家元が朗々と歌い始めると、向こうの謡がピタッとやんだそうです。
 後日、別の道で、また謡が。“先日のようにとめてみては”と勧める供の者に、家元は「あれは、とまらぬ」と。つまり、前者の謡の主は、家元の声を聞き、そのうまさを見定められる実力があるが、後者にはない。本物は本物を知るという逸話です(宇野信夫著『味のある言葉』講談社)

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