2017年02月22日

羅針盤

 優れた外科医を、よく「神の手を持つ」と表現します。だが、全国にその名を知られる脳動脈瘤治療の第一人者、脳神経外科医の上山博康氏は「『神の手』よりも『匠の手』『職人の手』を持ちたい」と語っています。職人なら弟子に伝えられる。選ばれた人だけの「神の手」では困るんです――と。
 上山氏は29歳の時、生涯の師と仰ぐ故・伊藤善太郎医師と出会った。「患者の思いに応えるのが医者の仕事だ」。それが師の口癖でした。生き方にもそれを貫いた師であった。「神の手」よりも「職人の手」――上山氏の言葉には、根本は師匠から学んだという謙虚さ、自負がにじんでいます。
 氏は、迷った時、いつも「伊藤先生ならどうしたかな」と考えてきたという。そうして「自らを鼓舞していたんでしょうね」と(『プロフェッショナル 仕事の流儀9』NHK出版)▼師匠を持つことは、〝羅針盤〟を得るということである。

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