2016年11月30日

小津安二郎

 戦前から戦後にかけてメガホンを取った映画監督の小津安二郎。彼は人々の心が荒んだ戦後の混乱期にあって「長屋紳士録」「晩春」など、戦前と変わらず、一貫して庶民の美しい心を撮り続けました。
 時に懐古趣味との批評を浴びた監督は、“確かに今の世相が汚いのは現実”とした上で、「それと共につつましく、美しく、そして潔らかに咲いている生命もあるんです、これだって現実だ」と主張。「泥中の蓮を描きたい」と、最後まで人間の美徳を描く姿勢を貫いた(『僕はトウフ屋だからトウフしか作らない』日本図書センター)
 泥と無縁の花々にも幽玄、華麗を味わうことはできる。だが監督は、強くたくましく生きる「泥中の蓮」に美しさを見いだしたのでしょう。

この記事へのトラックバックURL

http://asunimukatuye.mediacat-blog.jp/t119779