2016年10月16日

の弟子

 亡くなってからずいぶん経ちますので、この名前を知る人は少ないと思いますが、俳優の笠智衆氏がサインを頼まれたそうです。快諾した氏は何の迷いもなく、「小津先生」と大きく書きました。そして、「の弟子。笠智衆」と続けたそうです。
 サインの依頼主だった作家の久世光彦さんが自著『触れもせで』(講談社)に紹介しています。笠氏は、そう書くことで自分に誇りを持ち、自戒もしました。“私はカメラの前ではなく、師と仰ぐ小津安二郎監督の前で演じるのだ”と。常に師匠と一緒だ、との思いが名優の座を築き上げたのでしょう。

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