2016年10月02日

百科全書

 本年はドニ・ディドロの生誕303年です。彼は本文17巻、図版11巻の『百科全書』を編さんしました、18世紀フランスの哲学者です。この仕事に着手したとき、彼は34歳。意気盛んな青年でした。
 王侯、貴族、聖職者の特権階級が依然、民衆を支配していた当時のフランス。”人類の知の遺産”を体系化し、万人に開く百科全書は、保守勢力から徹底的に弾圧されました。ディドロは100日以上、幽閉され、当局は発刊を禁止、そして、誹謗・中傷の嵐……。仲間も一人また一人と去っていったのです。
 だが、彼は屈しなかった。最大の支援者は民衆だった。予約購読数は当初の4倍に膨れあがり、政府も抑え切れなくなった。構想から26年後、ついに百科全書は完結。ディドロは記す。”人を偉大な事業に向かわせるのは、情熱、それも偉大な情熱だけだ”と。
 情熱だけなら、利己主義の人間にもあります。小さな自己を超えた、大いなる価値に人生をささげようという無私の”偉大な情熱”だけが、迫害の連続にあっても、人を支え続けるのです。

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