2016年04月20日

演者の存在感を増す

 何十年も前の事です。当時、俳優座にいた平幹二朗さんが、舞台「ハムレット」で主人公の親友という大役をもらいました。ただ、見せ場のシーンでせりふがない。生と死を語るハムレットの後ろを歩くだけの芝居でした。
 そこで、平幹二朗さんは立ち止まったり、考え込んだりと自分なりの役作りを加えると、演出家に「ただ付いて歩けばいい」と𠮟られたそうです。あえて演出しないことで演者の存在感を増す“芝居の極意”を教わった、と平さんは述懐しています(春日太一著『役者は一日にしてならず』小学館)。表現とはそういうものなのでしょう。

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