2016年10月25日

雁風呂

 越冬の渡り鳥を見かける季節になると、津軽地域に残るといわれる民話「雁風呂」を思い出すします。
 月夜に雁が渡ってくる。疲れると、口にくわえた小枝を海面に浮かべ、その上で羽を休める。津軽まで来れば、もう大丈夫と、小枝を落とし、目的地に向かう。早春、今度は北へ帰る途中に津軽に戻った雁は、自分の小枝を拾って旅立っていく。残った枝は冬を越せなかった雁のものだ。薪にさえ事欠いた津軽の人は、力尽きた雁を偲びつつ、その枝で風呂を焚いたという。
 これは実話ではありません。だが、厳しい自然、苦しい暮らしを生きる人々は、一本の小枝にも深い思いを託していた。その美しい心が民話となり、今も、聞く人の心に温もりを届けるのです。  

Posted by mc1460 at 11:48Comments(1)TrackBack(0)つぶやき