2014年03月02日

まことの花

 真っ先に咲く梅に続いて杏や桃、李が花開き、桜が暖かい春を彩る――また楽しみな季節がやってきました。公園や庭園など各地の名所に、今年も大勢の人が足を運ぶことでしょう。
「桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す」とは、中国の言葉です。桃や李は何も言いませんが、その花の美しさや果実に引かれて人が集まり、自然と木の下に道ができます。
同じように、徳ある人のもとには自然と人々が寄って来ます。魅力のある人をよく「花のある人」と言います。世阿弥は著書『風姿花伝』で、能楽者の「花」について「時分の花」と「まことの花」に分けています。前者は若さによる華やかさ、後者は修行によって身についた美しさです。苦労で自分を磨き、内面からにじみ出た輝きこそ、「まことの花」なのでしょう。

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