2013年07月06日

手書き

 作家・向田邦子さんの字は、個性がありすぎることで有名でした。「後から読めないので日記はつけない」と、本人が言うほどの字は、業界人泣かせだったそうです。その為、原稿が業者を介して台本になると、例えば、「手紙」が「牛乳」に変わっていた事もあったそうです。
 向田さんの直筆原稿を見ると、一気に綴ったと思われる筆致。一度ならず、何度となく書き直した箇所もあります。肉筆には作品に込めた深い思いがにじみ出ているようで、創作の苦労まで味わうことができます。
 現在は、手書きの文字に接する機会がめっきり減り、それどころか昨今はIT化が進んで、紙媒体そのものの危機さえ指摘されています。電子媒体は便利で大いに活用したいですが、脳科学の分野では「電子媒体」と「紙媒体」の違いについて、こんな見方もあります。 
 紙に書かれた文字に接すると、読者に“筆者はどれだけの思いを込め、何を伝えたいのか”との想像力が働きます。それが、自身の考えを、より効果的にまとめることを促します。さらには、こうした思考の訓練は、他人を思いやる感情を豊かにすることにも通じるという。手書きの文字なら、効果はなおさらに違いありません。

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