2012年08月01日

間近に見聞

 トルストイの青春は、悪戦苦闘の連続でした。トルストイは名門貴族の家に生まれ、大学に進むも、成績は振るわず中退。若くして領地経営に取り組み、農奴の解放を志すも、あえなく挫折。モスクワの都会生活にはまり、揚げ句、借金返済にも苦しみました。
 そこで、生活を立て直そうと克明に「規則」を作成します。が、守れず、自己嫌悪に陥ります。迷走の末にたどり着いたのが「文学的創作」でした。それまで周囲も本人も、そのたぐいまれな才能に気付かなかったそうです。
 それに磨きをかけたのは、チェチェン紛争を間近に見聞したことでした。彼は、ロシア兵の勇気に目を見張り、さらにチェチェン人とも親しく付き合います。そこで得たのは「民衆の再発見」でした。――若き文豪の魂の歩みを、藤沼貴氏の著『トルストイ』(第三文明社)は丹念に描き出しています。

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