2012年01月27日

過去と向かい合うこと

 イギリスの9~15歳を対象に、20世紀の二つの大戦について聞いた調査の結果です。「ヒトラーとは誰か?」 子どもたちが答えました。「重力の発見者」13・5%、「ドイツのサッカー代表監督」7%――(AFP、多項選択式)。77%は「ナチスの党首」と正解しましたが、風化が進んでいるのは明白です。
 では、「初めて核兵器を使用した国は?」との問いに、なんと「日本」と回答したのが31%もありました。常識といえる史実でさえ、このありさまです。まして、語られない事実は永久に忘れられかねません。

 『ヒトラーの特攻隊』(三浦耕喜著、作品社)には、ドイツにも、日本のカミカゼ特攻隊に酷似した攻撃があったと明かされています。「こんなばかげたことを!」と叫びながら出撃し、奇跡的に生き残った元隊員。体の傷、心の傷も癒え、娘に自身の体験を語れたのは、ようやくベルリンの壁崩壊(1989年)のころだったそうです。

 統一ドイツのヴァイツゼッカー初代大統領は訴えました。「過去と向かい合うことがどんなに困難か、だがぜひとも必要であり、結局は未来のために役立つ」(永井清彦訳)と。語り継ぐ勇気と、受け継ぐ決意。老いも若きも、命に刻印すべきは、戦争の悲惨さ、残酷さです。世界大戦や核爆弾を前世紀の遺物とするためにも。


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