2011年12月11日

同じ生きるのなら、善をなせ、正義に生きよ

 早いもので今年も、あと3週間となりました。一年を振り返って、私は「今年はこれを成し遂げた」と胸を張れる人は幸せです。多忙な中にも、大いなる理想と目的に生き抜く人生には生命の充実感があります。

 世界文学の最高峰と評されるダンテの『神曲』。その中にハッとさせられる一節がありました。ダンテが師ウェルギリウスと地獄の門をくぐると、そこには嘆きの声を上げる亡者の群れがいました。この人たちは誰か?――ダンテの問いに師は答える。「これこそ、恥もなく、誉もなく、凡凡と世に生きた者たちの、なさけない魂のみじめな姿」(寿岳文章訳)と。
 悪はなさないが善もなさなかった傍観者をダンテは糾弾した。中途半端に生きた人間は結局、中途半端にしか死ねない。同じ生きるのなら、善をなせ、正義に生きよ!――不屈の詩人の叫びは、時代や宗教の違いを超えて輝きを放っています。

 私たち人間は、ともすれば困難や労苦のない安逸な世界に憧れます。しかし、建設や前進への苦闘なき自己満足の生き方は、いいように見えて真の魂の充足をもたらしません。

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