2017年09月28日

一歩前に踏み出す力になるのです

 童謡詩人の金子みすゞの代表作「こだまでしょうか」を抜粋した書が、山形美術館で見ることができるそうです。「『遊ぼう』っていうと/『遊ぼう』っていう/『ごめんね』っていうと/『ごめんね』っていう/こだまでしょうか/いいえ 誰でも」と書かれた作品は、ダウン症の書家・金澤翔子さんの字だった(『金子みすゞ・金澤翔子――ひびきあう詩と書』JULA出版局)
 みすゞの生涯は波乱の連続でした。親に決められた結婚相手との不仲。その夫から不条理にも創作活動を制限され、後に離婚。26歳で世を去ったのです。だが作品は、時代を超えて人々に愛されています。
 一方の金澤さんは、生後間もなくダウン症と診断されました。当時の社会は、まだ病気への理解が乏しく、世間の風は冷たかった。わが子を愛し、育てた母が金澤さんに読み聞かせたのが、みすゞの詩だったそうです。
 冒頭の詩は、響き合う人間の心を詠んだとも解釈できます。こだまのように、同じ言葉を返すのは、“あなたの言葉を、拒まず、ねじ曲げず、ありのままに受け止めました”という証しでしょうか。
 気の利いた言葉が言えなくても構わない。苦しんでいる人がいたら、会いに行き、相手の言葉を、自分の心に響かせる思いで、精いっぱい聞く。それが、相手が一歩前に踏み出す力になるのです。

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