2017年04月12日

老後の初心

 真新しい制服やスーツに身を包んだ若者が、街を行き交う季節です。
 「初心忘るべからず」という言葉が心に浮かびます。能の大成者・世阿弥がこの言葉を書き残したのは、還暦を過ぎてからだったそうです。世阿弥は室町幕府の3代将軍・足利義満に寵愛されたが、6代・義教の代になると数々の弾圧を受け、能の秘伝書を若い甥に譲るよう強要されました。それでも世阿弥は、枯れゆくことを拒み、ひたすらに己の道の完成を目指すのです。
 初心」というと、現代では専ら、“芸能や学問を始めたころの気持ち”という意味ですが、世阿弥は『花鏡』で、初心には、ほかに二つあると述べています。一つは、修行のそれぞれの段階の初心、もう一つが「老後の初心」であると。

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