2016年10月13日

一時の、一つの「顔」

 思い込みや印象が、いつしか事実のように定着してしまう例は多いものです。
 18世紀のフランス革命。断頭台の露と消えたルイ16世は決して暗愚の王ではなかったし、マリー・アントワネットも浪費専門の王妃だったわけではない。フランス文学者・安達正勝さんの新著『マリー・アントワネット』(中公新書)に、あらためて教えられます。
 ナポレオンは見ず知らずの人が自分に熱狂する姿を見て語ったという。「あの連中は余を知りもしなければ、一度だって余を見たことすらない。ただ彼等は余の噂を聞いていただけだ」「こういった不思議なことは何処の国にも、何時の時代にも、男の中でも女の中でも繰返されるのだ!」(ラス・カーズ著、難波浩訳『ナポレオン大戦回想録』改造社)
 人にはいろいろな「顔」があります。一時の、一つの「顔」だけを見て、相手を判断するのは危険です。直接、会って話さなければ、相手の本当のことは分からないのです。

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