2013年01月18日

富士

 古来、富士に感化されたというエピソードはたくさんあります。約100年前、日本最初の公害とされる足尾鉱毒事件に抗議し、正義のペンをふるった明治の女性記者・松本英子さんも、その一人です。
 彼女は幼少の頃、教育者の父に手を引かれ、故郷の千葉・木更津の小高い場所から富士を見せられました。帰宅後、父は、きょう見た富士を絵に描きなさいと筆を執らせたそうです。それが何回も続いたそうです。後年、彼女は、今思えば、父は「此の富士の高き気風に感化されよ」との心であったのだろうと述べています(府馬清著『松本英子の生涯』昭和図書出版)
 彼女は公害と戦った後、渡米し第1次世界大戦に反対を唱え、最後までペンによる非戦のための闘争を続けました。その心にきっと、父と見た富士の雄姿があったことでしょう。

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